38fd326c.jpg

ファーウェイのコーポレート・メディア事務、バイスプレジデントのスコット・サイクス氏

今年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された「CES2012」でファーウェイ(Huawei)が発表した薄型スマートフォン「Ascend P1」のグローバル出荷が始まった。

Ascned P1は、厚みがわずか7.7mm、同時に発表されたAscend P1 Sは世界最薄の6.65mmと、どちらも「スリム」を売りにしたハイスペックとデザインに優れた製品である。

今年のファーウェイは、2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012(MWC2012)」で自社開発のクアッドコアCPU搭載スマートフォン「scend Dシリーズ」を発表するなど、機能やデザインに優れた製品を続々とリリースしている。これらのモデルは海外の先進国だけではなく、日本市場への投入も期待したい製品だ。

日本でのファーウェイは、知る人ぞ知るデータ通信カードと端末、モバイルルーターで4年連続シェア1位を獲得するまでに成長しているわけで、今後の日本市場でもっとも成長が期待できる企業でもある。

そこで今回は、ファーウェイの日本での戦略について、同社のコーポレート・メディア事務のバイスプレジデント、スコット・サイクス氏に香港で話を伺った。

まずファーウェイのビジネスの現状を同氏に伺った。

■ LTEのマーケットリーダー、スマホのイノベーターを目指すファーウェイ
同社の事業は大きく3つの部門に分かれている。「事業者向けビジネス」「端末」「エンタープライズ」であり、それぞれの2011年の売り上げは約200億ドル、約70億ドル、約40億ドルと予想しているとのこと。

同社は1987年に中国国内の交換機ビジネスから事業を開始し、その後1997年に海外に進出、以来各国の通信事業者向けにインフラやソリューションを提供してきた。その背景もあって事業者向けビジネスがまだまだ主力となっているが、今後は3部門の売り上げ比率を同等にすることを目標にしている。すなわち端末部門、エンタープライズ部門をさらに強化してくということだ。

中でも端末部門は、既に2011年から事業の強化を進めている。2011年は前年より売り上げを50%伸ばし、2012年度はさらに3倍増を狙っているという。これだけの売り上げ増を図るための対策としてR&D部門への投資も増やしており、年間の売り上げの実に10%以上を開発に投じている。そして端末ではフィーチャーフォンからスマートフォンの開発にシフトを進めている。

ファーウェイのスマートフォンは、前述したAscend PシリーズやAscend Dシリーズを今年投入予定であり、タブレットも7インチに続き10インチモデルも投入する。さらには各国で始まるLTEサービスに対応した端末の投入も急ぐ予定だ。

サイクス氏によると同社はLTE市場でのマーケットリーダー、そしてスマートフォンでのイノベーターとしてのポジションを目指しているとのことである。

yy120402_003
海外展示会のファーウェイブース。マーケットリーダーとしての風格も感じられる(MWC2012)



■ 拠点を構えて日本の通信インフラを支えるファーウェイのビジネス展開
ファーウェイの国・地域別売り上げは、ヨーロッパやアフリカが35%、アジアが20%、地元中国は45%となっており、広範囲にグローバルビジネスを拡大している。このうち日本の売り上げは、2009年から2010年の間で30%も伸ばしている。

ではファーウェイにとって、日本市場とはどのような意味を持つのだろう?

サイクス氏は「日本はモバイルビジネスとデジタルエコノミーが世界でも最も普及している、最先端の国」であると語る。

同社の日本市場進出は2005年。その時点ですでにiモードなどの優れた日本の技術やサービスが幅広い消費者に普及していた。このようなモバイル先進国に同社の開発拠点の1つを置くことは、グローバル向けの端末開発にも大きなフィードバックを得ることができるのである。

現在、ファーウェイは日本に450人の従業員と3つのオフィスに加え、R&Dセンターも構えている。日本の通信事業者ともほぼ全社で取引を行っており、ソフトバンクやイーモバイルの4Gサービスも同社がネットワーク構築を請け負っている。加えて日本は高品質な部材の供給源にもなっているとのことだ。


■ 信頼性やブランドに認知度アップを計る新プロモーション展開
日本市場の今後の製品展開はどのように考えているのだろうか。

サイクス氏によると、まずファーウェイはこれまで技術力で事業を拡大してきたことから、B2Bビジネスは得意としているものの、コンシューマー向けビジネスについてはまだ不得意な部分もあり、現時点でようやくスタートラインに立った状態であるという。

つまり、いい製品を供給するだけではなく、製品の信頼性やブランドといった認知度を消費者に広めることが端末事業の拡大には必要だと考えているのだ。

例えば、同社にプロモーションの方法にも、新しい展開をみることができる。
日本ではこの春、同社として初めてとなるTVコマーシャルを放送した。加えて海外ではスポーツ大会のスポンサーや、雑誌などのオフライン広告も増やしていく予定だ。これらの活動を通してファーウェイの名前を一般消費者に認知してもらうことを今年はより強化していくそうだ。

yy120402_002
大手メーカー品と遜色の無い機能・デザインを備えるスリムモデル、Ascend Pシリーズ


ファーウェイの最新スマートフォン、Ascend Pシリーズ、Ascend Dシリーズは日本の消費者にも十分受け入れられるだけのクオリティーを持っているだろうとサイクス氏は自信を見せる。しかしまだまだ知名度の低い同社がそれらの製品を日本で販売するためには、ブランドの強化も重要かつ必須であるという。

もちろん日本市場は海外市場には無い特異性も少なからずあるだろう。しかしこれまで同社は日本の事業者や消費者の声を製品に反映し、ローカライズも着々と進めている。

「日本の市場は当社にとって非常に重要であり、今後も優れた製品を消費者の方々に提供していきたい。また日本の開発力をグローバル製品に活かし、5年以内に世界での端末シェアトップ3に入るという目的を達成したい」と、スコット氏はまとめてくれた。

記事執筆:山根康宏


■関連リンク
エスマックス(S-MAX)
エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
【山根康宏の“世界のモバイル”特集!世界のスマホ事情がすぐわかる】 - S-MAX(エスマックス) - スマートフォンとモバイルを活用するブログメディア - ライブドアブログ
山根康宏オフィシャルサイト - 香港携帯情報局