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既報通り、NTTドコモはLTEサービス「Xi(クロッシィ)」向けに新しく音声通話が他社携帯電話や固定電話宛の通話を含めて定額になる「カケホーダイ」やデータ通信量を同一家族の代表回線と子回線で分け合って利用できるオプションサービス「パケあえる」などを2014年6月1日(日)より提供することを発表した。新プランの受付は2014年5月15日(木)より開始される。

新料金プランが魅力的ではないと考えるユーザーでも既存のXi向けの料金プラン(「タイプXiにねん」など)については、2014年8月末に新規受付が停止される点は注意が必要だ。

もちろん、現行プランについては新規受付終了後も引き続き利用可能ではあるけれど、新規機種購入時の割り引きに新料金プランへの変更が必要になるなどの条件は考えられる。

そこで、本記事では新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を導入する上で、どうのようなケースがお得になるのか検証しつつ、解説していきたいと思う。

◯基本料金プランは音声通話向けの「カケホーダイプラン」が軸に
新料金プランでは、Xiユーザーが音声通話を利用する場合には「カケホーダイプラン」の契約が必須となり、現行プランで提供されている「タイプXiにねん」のような従量制の音声プランについては契約ができなくなる。

カケホーダイプランの料金はスマートフォン(スマホ)およびタブレットでの利用時が2,916円/月、iモードケータイで利用した際は2,370円/月になる。

ただし、料金区分が異なる機種を両方利用した月はどうなるのかという点は明記されていないものの、NTTドコモの従来の料金の仕組みから考えると「高い方の料金が請求される」となり、仮にiモードケータイとスマホ・タブレットの両方を1枚のSIMカードで同月内に利用した場合は、スマホ・タブレット向けの料金プランが適用されるものと思われる。

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NTTドコモの新料金プラン(基本プラン)


カケホーダイの料金は月額2,916円(2年契約時)に設定されており、既存の「タイプXiにねん」(2年契約で802円/月)をベースにして考えると、1ヶ月あたり49分以上の通話を行う場合はカケホーダイプランを契約する方が有利となる。

・新料金プラン
カケホーダイ:2,916円/月

・現料金プラン
タイプXiにねん:802円/月 (2年契約時)
通話料:43.2円/1分

ここでさらに、現料金プラン向けのオプションでNTTドコモ宛の音声通話が定額になる「Xiカケ・ホーダイ」(720円/月)とカケホーダイプランとの差額は1,394円/月になる。

・現料金プラン
タイプXiにねん:802円/月 (2年契約時)
Xiカケ・ホーダイ:720円/月
————————————————–
合計金額:1,540円/月

※カケホーダイとの差額は1,394円/月
通話料:43.2円/1分

これにより、カケホーダイとの差額である1,394円/月をタイプXiにねん契約時の通話料の43.2円/分で割ると32分となるため、ドコモ以外のユーザーに1カ月あたり32分以上音声通話する場合は、タイプXiにねん+Xiカケ・ホーダイの組み合わせよりも新料金プランのカケホーダイの方が有利になる(音声通話の通話料のみを比較した場合)。

その一方で、音声通話をほとんどしないユーザーについては、2年契約時の基本料金の最低金額がタイプXiにねんの802円/月からカケホーダイプランの2,916円へと、2,000円/月以上も値上がりするため、音声通話を頻繁に使わない場合はかなり大きな値上がりになると言える。

音声通話の定額プランは、ソフトバンクグループになったウィルコムが先行しており、ウィルコムが提供する「だれとでも定額パス」では、料金プラン「パス専用プラン」と、1回あたり10分までの音声通話が1カ月あたり500回まで定額になる「だれとでも定額」オプションが合計料金1,512円/月で提供されているため、値段だけ比較するとタイプXiにねんからカケホーダイプランへ変更するよりも安上がりになる。

ただし、ウィルコムの「だれとでも定額」オプションは1回あたり通話10分まで、1カ月あたり500回までの制限がある点、契約期間が3年間になる点は注意が必要だ。

・ウィルコム「だれとでも定額パス」契約時の通信料
パス専用プラン:504円/月
だれとでも定額オプション:1,008円/月
————————————————
合計金額:1,512円/月

新料金プランのカケホーダイについては、“完全無制限の通話料定額”は魅力的ではあるものの、月額料金がスマホなどで利用時に2,916円と高めになっている点はネックで、個人的にはそれほど魅力を感じてはいないというのが正直なところではある。

ただし、業務用の通話などのメイン機種としてNTTドコモの音声回線を使っているという場合は、音声通話の通話料金が10,000円/月を超えるようなケースも珍しくはないと想うので、そういった場合は新料金プランでカケホーダイプランを契約した方が安上がりにはなるのを補足しておく。


◯データ通信プランはモバイルWi-Fiルーター利用が割安に
データ通信については、スマホ・タブレットで利用する場合と、モバイルWi-Fiルーターで利用する場合で異なる料金が適用される。

・新料金プラン「データプラン」の料金
スマートフォン・タブレットで利用時:1,836円/月
モバイルWi-Fiルーターで利用時:1,296円/月

新料金プラン「データプラン」ではスマホ・タブレットで利用した際の基本料金がモバイルWi-Fiルーターと比べて月額540円高く設定されており、従来の「プラスXi割」でタブレット利用時の割引が大きく設定されていたのと異なる料金設定になっている。

データ通信サービスは、後述する「パケットパック」と組み合わせて利用することが基本となる。
なお、パケットパック未加入の場合、Xiでは0.6円/KB、FOMAでは0.08円/パケットの通信料が従量課金される。


◯家族向けのパケットパックは10GBで10,260円〜/1グループ、一人向けは2GBで3,780円
パケットパックは1人向けが2種類、家族向けが4種類の合計6種類のほか、らくらくスマートフォン向けに1種類のプランが提供される。

パケットパックの料金は、一人向けの「データSパック」が2GBで3,780円/月、家族向けのシェアパック10が10GBで10,260円/月などで、概要は以下のようになる。

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NTTドコモ新料金プラン パケットパックの概要。データ量の超過後は、通信速度が最大128kbpsに制限される


1人向けの場合は、現行の「プラスXi割」の適用条件と同様に料金プランの種別および契約名義に指定があり、音声プランでカケホーダイを契約した上で、同一名義にて「データプラン」を契約の上、パケットパックを契約した上で、データ通信回線側で「シェアオプション」(540円/月)を契約することで、複数の回線でパケット通信量をわけあって利用できる。

利用者が一人のケースで、音声通話にスマートフォンを、データ通信にタブレットを利用するケースを想定すると以下の通り。

(1)音声通話端末(スマートフォンを想定)
カケホーダイ:2,916円/月 (二年契約時)
spモード:324円/月
データSパック:3,780円/月 (2GBまで)
———————————————-
音声通話端末合計:7,020円/月

(2)データ通信端末(タブレットを想定)
データプラン:1,836円/月 (二年契約時)
spモード:324円/月
シェアオプション:540円/月
———————————————-
データ通信端末合計:2,700円/月

(1)+(2)=9,720円/月

上記ケースでは、月額料金は最低でも10,000円に近くなり、音声回線には通話定額が含まれる点を考慮しても割高に感じる。

家族向けは代表回線が「パケットパック」に申し込みをした上で、子回線が「シェアオプション」(540円/月)をそれぞれ申し込みすることで、同一の家族内で通信量を共有して利用することができる。なお、NTTドコモのファミリー割引グループ内で適用可能な「音声通話で余った無料通信料の割引」のような仕組みは存在しないため、無料通信は余らせずに利用するとベターだ。

従来は回線個別だった通信量を「家族で共有」することで、家族内の誰かが大量のデータ通信を行い、データ通信量を使い切ってしまうと、同一の家族内のユーザーも通信速度が遅くなる「連帯責任制」が導入されるため、「誰がどの程度データ通信をするのか」の確認や「通信量が多くなる場合に、他の家族との合意が必要(無くてもいいけどトラブルにはなりそう)という点は、これからのモバイルデータ通信サービスにおいて標準となるのかもしれない。

家族向けの「パケットパック」では最も定額料の安い「シェアパック10」の定額料が10,260円/月となっており、それほど通信量を必要としない場合や、利用する家族の家族が少ない場合はどうしても割高になってしまう点に注意が必要だけれど、家族が個別にパケット通信定額サービスに加入している場合は、パケットパックでの契約にまとめた方が通信量が安くなるケースがあり、今回の料金プラン改定による狙いはまさに「家族でドコモを使う」ユーザーの囲い込みであるように思う。


◯長期契約者&25歳以下のユーザー向けの割引を追加

新料金の提供開始に合わせて、長期契約者(6年以上)向けの「ずっとドコモ割」および25歳以下のユーザー向けの「U25応援割」が提供される。

新料金プランでは、NTTドコモを長期で使っているユーザーを対象にパケットパックの定額料の割引が以下のように適用される。「ステージ」はドコモプレミアステージの各ステージのことで、DCMX GOLDの契約で適用となる「ゴールドステージ」はパケットパックの割引とは無関係だ。

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パケットパック定額料の割引


割引金額が最大になる16年以上の契約の場合、ひとり向けの「データSパック」で648円/月、家族向けの「シェアパック30」で2,160円/月となり、それほど大きな割引率ではないように感じる。

また、25歳以下の利用者を対象とした「U25応援割」も提供される。こちらは利用者が25歳以下で、カケホーダイプラン&パケットパック(シェアプランの子回線でもok)を契約している場合に、一律して540円/月の通信料割引と、ボーナスパケットとして1GB/月の通信量がボーナスとして付与される(付与される通信量は通信量のわけあいの対象となる)。

また「ずっとドコモ割」で割引率の大きくなる長期利用者は、必然的に年齢層が高い利用者であることが多く、さらに、U25応援割がその子供達を対象とした割引であることや、NTTドコモが今回導入する「パケットパック」の料金体系を見ても、NTTドコモの戦略としては「家族揃ってドコモを使う」という戦略を最重視しているように思う。


◯新料金プランについてまとめ&思ったこと
NTTドコモの新料金プランは「国内宛の通話が完全定額」(一部電話番号除く)となる点や他のMNO(auやソフトバンクモバイル)に先駆けて「家族単位で通信量をシェア」可能になった点は面白いし、利用実態に合わせた最適なプランを選ぶことで、家族単位で通信料を値下げすることは可能にはなるけれど、そのための準備(毎月通信量のシミュレーションなど)が複雑になる点やシェアオプションで利用中の回線の利用形態が変化する要因が発生すると、それに合わせて適宜最適なプランを選択し直さないと、無駄な通信料を支払う可能性が高くなると感じた。

そういった点を含めて考えると、最適な料金プランの選択および運用のコストがあがるという考え方もできる。

国内の携帯電話市場では最も契約者の多いNTTドコモが他社に先駆けて「家族単位での通信料設定」を打ち出してきたことで、他社も似たような料金プランを出してくる可能性は高く、改めて“携帯電話の通信料は家族単位で選ぶ”という時代が来るのかもしれない。

そうした中で、今回発表された新料金プランの中で個人的に魅力なのは、音声通話が完全定額になる「カケホーダイ」プランをメインの音声回線でガンガン使うようになれば便利かもという程度で、家族でのデータ通信のシェアについては、自分以外の家族でデータ通信のニーズがそれほど強くないのと、データ通信の基本料とパケットパックの定額料の合計金額が割高になるので見送りする予定だ。

つまり、しばらくパケット通信については、NTTドコモのMVNOが提供するデータ通信サービスと通信容量が無制限のWiMAXサービスを組み合わせて使っていくようなイメージなりそうである。

記事執筆:shimajiro@mobiler


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ドコモの『カケホーダイ』&『パケあえる』 新料金プランを解説 | shimajiro@mobiler

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