タブレットをノートPCのように使うときには気をつけたい

最近話題のWindowsタブレットはもちろん、iOSやAndroidのタブレットやスマートフォンにおいてもキーボードやマウスを接続してPC的に使いたいという人も多いかと思います。このような利用を想定したBluetooth接続のキーボードやマウスが多く販売されていますが、これらBluetooth入力機器は無線で接続されるため、他の無線機器との干渉により入力が妨害されることがあります。

今回の連載「スマホのちょっと深いとこ」では、Bluetooth入力機器がWi-Fi(無線LAN)と干渉する事例を紹介します。タブレットでBluetoothキーボードやマウスを使うと入力が引っかかるというあなた、原因はWi-Fiかもしれませんよ。

【BluetoothとWi-Fiは同じ周波数帯域を使用する】

Bluetoothは2.4GHz帯の電波を使用して通信を行います。この2.4GHz帯はISMバンド(*1)と呼ばれており、無線免許を必要とせず利用できるため、Bluetooth以外にディジタルコードレス電話や電子レンジなど、多くの機器が利用しています。一方Wi-Fiは、当初はISMバンドである2.4GHz帯のみを利用していましたが、その後5GHz帯を追加で利用するようになりました。つまりBluetoothと2.4GHzを利用するWi-Fiは同じ周波数帯を共有していることになります。

Bluetoothと2.4GHz帯Wi-Fiが干渉するという問題は、両者の技術が登場した初期から問題視されていて、現在のBluetooth規格には2.4GHz帯Wi-Fiとの干渉対策が盛り込まれている(*2)のですが、それでも干渉してしまう場合があるというのが今回紹介する事例です。

*1: 「ISM」はIndustry(産業)、Science(科学)、Medical(医学)の略で、本来はこれらの目的に運用されることが意図された周波数帯域となります。

*2: 2003年のBluetooth 1.2より導入されました。

【干渉の程度は機器により様々】

今回はBluetoothキーボード(ELECOM TK-FBP069BK )およびBluetoothマウス(Microsoft Wedge Touch Mouse)を用いて、Wi-Fi接続中のWindows・Android・iOSのデバイスに接続した時の動作を観測しました。結果を下表に示します。

No. 機器 機器OS Bluetooth機器の機能低下
キーボード マウス
2.4GHz帯
Wi-Fi
5GHz帯
Wi-Fi
2.4GHz帯
Wi-Fi
5GHz帯
Wi-Fi
1 Lenovo
Miix 2 8
Windows 8.1
Update
なし なし あり なし
2 Nexus 7
(2012) (*3)
Android
4.4.2
少しあり - 少しあり -
3 Nexus 7
(2013)
Android
4.4.2
あり なし 少しあり なし
4 Nexus 5 Android
4.4.2
あり なし あり なし
5 Xperia Z
SO-02E
Android
4.2.2
なし なし 少しあり なし
6 iPhone 5
(*4)
iOS 7.1 なし なし - -

*3: Nexus 7 (2012)は5GHz帯Wi-Fiに対応しません。

*4: iOSはマウスに対応しないので、マウスについては検証対象外としました。また今回用意したBluetoothキーボードはiOS対応が公式にうたわれていませんが、基本的な文字入力は実行できました。

まず全体的に、接続先Wi-Fiが5GHz帯である場合には干渉が発生せず、Bluetoothキーボードやマウスが問題なく利用可能でした。この場合BluetoothとWi-Fiで利用する周波数帯が異なるので当然の結果と言えます。

それなら2.4GHz帯Wi-Fi接続時にBluetooth機器が全く使えなくなるかというとそうでもなく、接続先の機器によって干渉の度合いや発生する事象が異なります。表において「少しあり」「あり」となっているところは、キーボードでは入力の遅延やキーリピート(内部的にキーが押されたままになり連続入力される)、マウスではポインタの移動が引っかかる事象が発生しました。

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キーリピートが発生しキーボードの入力がままならない場合も

【Bluetoothと2.4GHz帯Wi-Fiの同時使用サポートが望まれる】

Bluetoothと2.4GHz帯Wi-Fiは周波数帯を共有するため、干渉が本質的に発生するものであると言えます。しかしながらその度合は機器によって異なり、全く問題なく利用できるものから使い物にならないものまで差異があります。

タブレットのような機器(特にWindowsタブレット)では、Wi-Fiに接続しつつBluetoothキーボードやマウスを利用してノートPCライクに利用することは当然想定されるわけで、干渉するから使えませんというのでは話になりません(それなりに使えている機器もあるのですからなおさらです)。タブレットやBluetoothキーボードなどのメーカーにおいては、2.4GHz帯Wi-Fiとの同時使用を可能とするような製品開発をお願いしたいところですし、直近では接続情報(支障なく利用できるかどうか)を積極的に公開することを望みます。

なお「Wi-FiとBluetoothの干渉に困っていて、今とにかく何とかしたい!」という方には、Wi-Fiを5GHz帯に切り替えることを提案します。現在市販されているWi-Fiルーターの多くは5GHz帯対応になってきていますし、5GHz帯を利用できるモバイルルーターも登場してきています。それでなくても2.4GHz帯Wi-Fiはアクセスポイントの乱立に起因する電波干渉で速度がでなくなってきていますので、これを機会に5GHz帯の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

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5GHz帯Wi-Fi対応機器は増えつつある(写真は5GHz帯Wi-Fiに対応するモバイルルーター、NECアクセステクニカ Aterm MR03LN)

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