NTTドコモがAIエージェントを用いたオープンパートナー・プログラムをスタート! |
NTTドコモは23日、同社の人工知能(AI)技術の基幹となる「AIエージェントAPI」を開発を発表し、その普及促進のスタートとして「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ発表会」を都内にて開催しました。
現在のAI技術分野は音声認識やIoT機器を活用した生活支援がトレンドとなり、すでにGoogleやAmazonなど海外企業による製品化も進みつつあります。日本国内でもLINEが音声認識を活用した端末を発表するなど早くも競争激化の様相を呈していますが、後発となるNTTドコモがこれらの技術や製品に対抗しアドバンテージを勝ち取ることは可能なのでしょうか。
NTTドコモが打ち出すAIエージェントAPIの仕組みやその活用例、そして将来の展望について解説します。
■「しゃべってコンシェル」で培った技術をAIに
発表会冒頭では本プログラムのパートナー企業としてインテルや高島屋、カカクコムの代表者が登壇し、AIエージェントによる生活支援技術への期待感をそれぞれに挨拶しました。
ドコモAIエージェントの基幹技術となるのは「AIエージェントAPI」であり、このAPIによってさまざまなIoT機器(IoT企業)とNTTドコモやパートナー企業のサービスが紐付けされます。IoT機器やサービスの多くはNTTドコモ自身が開発・販売するのではなく、このAPIをオープン化してパートナー企業に利用してもらおうというのがNTTドコモの狙いです。
NTTドコモは2012年より同社のスマートフォン(スマホ)などで利用できる音声認識技術を用いた生活支援サービス「しゃべってコンシェル」をスタートさせており、現在までに4300万人以上が利用、総発話数は17億回を数えています。
このしゃべってコンシェルによって培われた日本語の自然言語処理技術や発話ログの蓄積により向上し続けてきた対話性能が同社AI技術の強みであるとし、日本語環境に強いAIのメリットを強調していました。
例えばカカクコムが提供する「食べログ」では「現在2000万以上のクチコミ情報があるが検索には文字で入力するしかなく膨大な情報を100%活かしきれていないのが実状(村上氏)」と語り、AIエージェントであればその膨大な情報を裏側で検索してユーザーへ提供できるとしています。
この場合、AIエージェントはユーザーが求めるものを推察・判断し、ユーザーの代わりに情報を引き出してきて提案しているのです。
■メインとエキスパート、2つのエージェントでユーザーを支援
ドコモAIエージェントには「メインエージェント」と「エキスパートエージェント」という2つの大きなエージェントシステムがあり、この2つのエージェントシステムがデータベースの裏側で作業することでユーザーに意識させることのない快適な支援を行っています。
まず、ユーザーが手元の端末などでアクセスするのはメインエージェントとなります。メインエージェントはそれぞれの機器ごとに設定されており、例えばTVであればTVの中に1人のメインエージェントが存在している、という解釈です。
ユーザーが「テレビを付けて」や「明かりを消して」などと発声すると、それをメインエージェントが聞き取り実行しますが、ここまでならば手元のリモコン操作と何ら変わりはありません。しかし、「新幹線の予約をしたい」や「母の日のプレゼントは何がいいかな」といった、メインエージェントだけでは解決しない問題が出た場合に活躍するのがエキスパートエージェントです。
メインエージェントとエキスパートエージェントが個別に用意されているのは、それぞれのサービスを運営する企業が違うからです。宅配であれば宅配業者、新幹線であれば鉄道会社といったように、各サービスを提供する企業がそれぞれのエキスパートエージェントを持っており、それをAIエージェントAPIによって一元管理・制御することでメインエージェントへと繋いでいるのです。
またこの仕組みから、末端でサポートするメインエージェントもその機能を有する機器ごとに違う場合が存在することになります。この点についてNTTドコモでは「メインエージェントが複数存在しても問題はないと思っている。また複数企業のメインエージェントが同じキャラクターのデザインを利用することもあり得る」としており、NTTドコモとしてメインエージェントを固定するつもりはないものの、ユーザーに分かりやすい仕組みやキャラクターを利用する案も検討しているとしています。
またユーザーからの呼びかけに応えるプル型のサービス以外にも、エージェント側がユーザーの行動を先読みし次に行うべき行動を支援するプッシュ型サービスも検討されています。
例えば宅配サービスでは、宅配業者のエキスパートエージェントからメインエージェントへ宅配物の情報が届いた場合、メインエージェントがユーザーの現在位置などから配達時刻に受け取れないと判断した場合、ユーザーへSMS通知のような形で配達場所の変更などを提案するデモが行われました。
この場合もメインエージェントがユーザーにチャット形式で伺いを立て、ユーザーが配達場所の変更を頼むと宅配業者のエキスパートエージェントへ取り次ぎ、そこで配達場所の変更などを行うといった流れになります。
この方式はユーザーに分かりやすいだけではなく、メインエージェントは最低限のエキスパートエージェントの情報のみを持っていればよく、システム全体の処理が分散され大多数の利用負荷に対応しやすいというメリットもあると思われます。
■2018年春のサービス開始を予定
NTTドコモはAI技術の基幹システムとしてのAPI策定に非常に積極的で、さまざまなIoT機器をAIを通して一元制御するための「デバイスWebAPI」というものも開発しています。このデバイスWebAPIについてはコンソーシアムも立ち上げており、AIエージェントAPIやデバイスWebAPIといったプラットフォームを広く普及させ、より多くのIoT機器で活用してもらうことこそがAIおよびIoT分野でのシェア獲得に繋がると考えているものと思われます。
ドコモAIエージェントは2018年春のサービス開始を目標としており、2017年7月にパートナー向けイベントを、2017年秋から冬にかけてトライアルサービスの実施などを予定しています。また6月28日より東京ビッグサイトで行われるAI・人工知能EXPOにも出展を予定しています。
記事執筆:あるかでぃあ
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