電子書籍の未来を考える「第2回LINEマンガ主催プレスセミナー」が開催!

LINE Corp.が都内本社にて電子書籍の現状と未来を考える『第2回LINEマンガ主催プレスセミナー「“スマホ発”のヒット作創出に向けた各社の最新動向について」』を7月25日に開催しました。

第1回のプレスセミナーは4月に開催され、紙の書籍の発行部数減少や書店の窮状について語られ、その上で認知と利用が広がりつつある電子書籍(電子コミックス)の現在やこれからの展望について多くのディスカッションが行われました。

あれから3ヶ月あまりでの第2回開催となりましたが、今回はどのようなテーマと切り口で電子書籍が語られたのでしょうか。なお、第1回LINEマンガ主催プレスセミナーについてはこちらの記事をご覧ください

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今回も多数の出版社からゲストが登壇しそれぞれの視点で電子書籍の現在と未来が語られた


■スマホは「新たなマンガ作品との出会いの場所」かもしれない
セミナーは前回と同じく2つのトークセッションが設けられ、トークセッションの前にはLINEマンガ編集チーム マネージャーの村田朋良氏による第1回の振り返りや現状についてのプレゼンテーションが行われました。

村田氏は「マンガの利用媒体はまだ紙がメインだがスマホで読む人が増加しており、LINEマンガが紙とデジタル双方に好影響を与えている。マンガの認知場所としてはスマホ向けアプリマンガアプリの方が紙よりも主体となりつつある」と、スクリーンに映し出されたアンケート結果のグラフなどを示しながら語りました。

マンガ作品を読む時間についてはすでに紙媒体よりもスマホの方が長くなっている点にも注目し、「マンガの媒体ではまだ紙が圧倒的に多いが読書時間はスマホの方が長い。起床後や就寝前、通勤通学、お昼休みなど、かつて感が雑誌が担っていた「隙間時間」にスマホ向けマンガアプリが置き換わっている」と分析しながら、紙媒体については「紙はマンガに集中したい時やゆっくりくつろぎたい時間に利用が多く、ユーザーが紙とスマホをうまく使い分け始めている」と、紙媒体とスマホが共存していることを強調しています。

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LINEマンガ編集チーム マネージャー 村田朋良氏


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紙媒体の利用率の低下以上にスマホの利用率の伸びが顕著だ


その上で村田氏は新たなマンガ(新作マンガ、知らなかったマンガ)と出会った経路や面白かったマンガと出会った経路などのグラフに着目し、スマホが新たな読者の発掘場所になるのではないかと分析。これまで紙媒体が新作発表のメインであったマンガ業界へ、スマホを新作や過去の作品の再発見の場として活用することを提案し、その後のトークセッションへと繋ぎました。

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スマホは新たなマンガ作品と出会う場として書店に肉薄している


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面白かった作品との出会いは新作に限らない。完結作でも知らなかった作品を読みファンになるケースは多く、そういった「旧作の掘り出し」でもスマホは大きな効果を出している


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「知らない作品と出会う場所」としてのスマホの活用にマンガの未来があるのかもしれない


■プラットフォーム運営ノウハウを活かした事業展開とアプローチを強みに
トークセッション1では村田氏司会のもと、サイゲームス サイコミ編集部編集長の葛西歩氏、ディー・エヌ・エー IPプラットフォーム事業部事業部長(兼)開発一部部長(兼)マンガボックス編集部編集長の安江亮太氏、LINEマンガ編集部編集長の中野祟氏が登壇し、「IT企業発のマンガサービスが考えるコンテンツ戦略とは」という題目でトークが行われました。

最初に村田氏からサイゲームスの葛西氏へ「サイコミはコミックスをどう売っていくのか」と振られると、葛西氏は同社のスマホ向けゲーム「グランブルーファンタジー」のコミックス化などを挙げ、「ゲームのコミカライズはもとより新作をマンガだけではなくアニメやドラマ展開していく」とメディアミックスによる戦略を語り、エンターテインメント総合企業としての強みを活かしていくと述べています。

一方で「サイゲームスがマンガをやっているという認知度がまだまだ低い」として、現在は認知度の向上に注力している点も強調しています。

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「グランブルーファンタジー」のコミックス第1巻を手に語るサイゲームス サイコミ編集部編集長 葛西歩氏


ディー・エヌ・エーの安江氏は「我々はモバゲーというゲームプラットフォームをやってきたが、その発想からマンガボックスというプラットフォームによって他社との作品協業などを目指している」と語り、同社が得意とするプラットフォーム事業の一環としてマンガコンテンツを考えている点を主張しました。

また女性向けマンガの「恋と嘘」が180万部のセールスを上げアニメや実写化も進行している点や同じく女性に人気の「骨が腐るまで」などが堅調な推移を見せている点を挙げ、「好調なマンガボックス」をアピールしたいとしています。

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ディー・エヌ・エー IPプラットフォーム事業部事業部長(兼)開発一部部長(兼)マンガボックス編集部編集長 安江亮太氏


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メディアミックス展開は各社とも注力するポイントのようだ


LINEの中野氏はオリジナル作品の連載を強化していく方針を語り「現在は毎週200作品程度を更新しており、オリジナル作品も10作品強入っている。今年中にオリジナル連載を30本に増やしたい。このくらいやっていかないとヒット作は出ない」と強気のコメント。スマホが新たな作品との出会いの場であるという自社の分析を忠実にトレースした戦略を推し進める見解を示しました。

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LINEマンガ編集部編集長 中野祟氏


その後村田氏が「どのようにしてオリジナル作品を生み出していくのか」について話題を振ると、葛西氏が「新人賞からの発掘やコミティアでの持ち込み、専門学校など様々なアプローチでいく」と語ると安江氏や中野氏も「我々も似たアプローチ」と続け、各社オリジナルの新人賞などの開催が重要であると指摘しています。

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作品の鮮度や新作ラッシュはマンガ業界にとって生命線と言える


■無料連載が有料出版を支える「フリーミアム」への気付き
トークセッション2では「コンテンツ展開におけるLINマンガの活用事例」として、講談社 なかよし・ARIA・エッジ編集部部長の中里郁子氏、秋田書店 メディア事業部主任の藤井基氏、集英社 別冊マーガレット編集部編集長の勅使河原祟氏の3名が登壇しました。

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LINEマンガへ作品を提供する企業としての見解は如何に


講談社の中里氏は「なかよしは『マンガを初めて読んでもらう媒体』というスタンス。それが紙でもウェブでも問題はない。(LINEマンガは)ウェブでの実験場として企画した」と語り、他社同様に当初はスマホでのマンガ購読について手探りであった点を述べた上で「現在の売り上げはまあまあといったところ。ウェブは95%が無料、5%が有料というフリーミアムの場所。そこでどの程度できるのか見たかった」と語りました。

また作品を知ってもらう場所としてのスマホについても「作家さんが優秀だったので編集者としてその能力を広げてあげたかった」と、スマホという新しい作品公開の場が作家性や作品に与える影響についても述べています。

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講談社 なかよし・ARIA・エッジ編集部部長 中里郁子氏


ウェブマンガを始めてみた社内外の反響などについては「週刊連載はなかなか大変だった。スマホはゲームやLINEそのものがライバルだったりするので読者が1ヶ月待ってくれない」「(LINEマンガへの参加は)社内ではウェルカムだった。LINEでやっていることは喧伝していなかったがメディアが取り上げてくれた。ここ1年くらいで『ネットだから』といった偏見はなくなったかもしれない」と述べ、スマホ読者特有の動向やスマホでマンガを読むというスタイルが浸透しつつある点に注目しました。

また「私たちはマンガが一番喜ばれる場所で提供するのみ。10年20年後にはスマホに変わる何かが出ているかもしれない」とも述べ、媒体に拘らないスタンスである点も強調しています。

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LINEマンガ限定連載の「これはきっと恋じゃない」。連載開始から2年近くになるが人気作品の1つだ


集英社の勅使河原氏は新人賞が設定された「少女マンガグランプリ」について語り、「新人の発掘・育成はうちの生命線。読者は常に入れ替わるもので新しい読者は新しい作家しか連れてこられない」と、新人作家の発掘が同社にとって重要な価値である点を強調し、その上でLINEマンガで新人賞を始めたきっかけについて「LINEからの声がけで始まった。新人賞は各編集部が独自でやっているが色々考察した結果まずは別冊マーガレットのような少女マンガ系から始めることにした」として、当初からスマホと少女マンガの親和性の高さに注目していた点を述べています。

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集英社 別冊マーガレット編集部編集長 勅使河原祟氏


この少女マンガグランプリではウェブサイト上の投稿機能を利用して作品を募集するという手法が取られましたが、その点については「直接編集部に持ち込みするのが顔も突き合せられるし編集部としては一番だが抵抗も多いと思われる。持ち込みはアナログ原稿が多いがデジタルだとそのあたりの手間も省けて心理的なハードルも下がるのではないか」と語り、デジタル投稿のメリットについても、「一番大きかったのは集英社として新たにデジタル発のヒット作を狙う部署ができた。今は読者もデジタルが主体になりつつあるので直で見つかればいいかなぁ」と期待を述べています。

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気軽に投稿できるメリットを活かし新人発掘に弾みを付けたい集英社


秋田書店の藤井氏も「LINEマンガを始める前は無料で(マンガを)見せて良いのかという理解が少なかったので、まずは少女マンガなどを、という形で始めた」と切り出し、少女マンガがスマホ世代とも言われる学生層の反応を見るのに適していた点を述べました。

その上で「紙への『跳ね返り』は読者の注目が集まったことから書店からの注文が増えた」と語り、スマホでの無料連載が紙媒体の売り上げに繋がった点を指摘しています。

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秋田書店 メディア事業部主任 藤井基氏


秋田書店はLINEマンガで長期の連載を行っているのも特徴となっており、中には3年以上も続いている作品も。この連載の効果については「エンジェルボイスは全40巻で既に4年前に完結した作品でそれほど大きな知名度はないが、LINEマンガで連載を始めたところ毎月ある一定数の電子売上がある。今まで動いていなかったのが他の書店でも動き始め、2年経っても同じボリュームで動いている。今でも売上が落ちていないという点で(連載を)継続させていただいている」と述べています。

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10月より月刊チャンピオンで連載が始まる「彩子」のスピンオフ作品もほぼ同時にLINEマンガ限定で連載が開始される。紙とデジタルのメディアミックス戦略といったところか


■紙からデジタルへの転換は発想の転換でもある
トークセッション1ではIT企業によるプラットフォーム事業としてのスマホ向けマンガの展望が語られ、トークセッション2では各出版社のスマホ読者層とその動向についての見解が示されました。その意見の多くがスマホによるマンガ購読への肯定的な意見であり、スマホで読書をするというスタイルが急速に一般へ浸透しつつあることを示しています。

また無料配信や無料連載から有料版の購入や紙媒体の単行本購入へ繋げるフリーミアムについても、当初は懐疑的であったものが実際の読者の動向によってむしろ積極的に活用すべきエコシステムである点に気が付き始めていることも重要なポイントかもしれません。

これまで読書と言えば書店で雑誌や単行本を買い、そこから初めて作品に触れるという購買先行型が主流でしたが、スマホの世界では「まずはお試し無料で」というスタイルがゲームでも一般アプリでも主流である中、出版業界がそのビジネスモデルに躊躇してきたのは当然とも言えます。

しかしこれからの出版業界はフリーミアムをうまく活用したビジネスモデルへと転換していく未来が強く予想されます。LINEマンガやマンガボックスといったプラットフォームはその重要な主戦場であり、紙からデジタルへの転換が求められる時代だからこそ、デジタルネイティブな新人作家の発掘やスマホ発の新規連載の必要性が高まっているのではないでしょうか。

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LINEは今後、SNSの「LINE」アプリ内からもLINEマンガなどへのアクセスを容易にするアップデートを予定している


記事執筆:あるかでぃあ


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