Synapticsが世界初のディスプレイ一体型の指紋認証センサーをOEM提供開始!

タッチパッドや指紋認証センサーなどの入力機器ベンダーとして有名なSynapticsは12日(現地時間)、世界初のディスプレイ一体型の指紋認証センサー「Clear ID FS9500」のOEM提供を開始したと発表しました。

あくまでスマートフォン(スマホ)などの製造元であるメーカーに量産品をOEM提供開始しただけですので、すぐに一般消費者向けの完成したスマホなどの製品が発売されるというわけではありませんが、量産開始ということなのでそう遠くない時期に内蔵した製品が出てきそうです。

また発表では5大OEMへ出荷したとのことで、残念ながら具体的なメーカー名は挙げられていませんが、過去には「Galaxy S5」がSynapticsの指紋センサー「Nature ID」シリーズを搭載していたりします。

なお、同社は来年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市「CES 2018」に出展するということで、これに合わせてどこかのメーカーが搭載製品を発表するかもしれません。

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今回、スマホのスタイルを大幅に変えるディスプレイ一体型の指紋認証センサーのOEM提供を開始したSynapticsですが、実は2017年11月15日にディスプレイ一体型の指紋認証センサーの商業化に関するロードマップがクリアになり、2017年の終わりまでには提供開始できるだろうと発表していました。

正直なところ、11月の発表で残り1ヶ月半ほどの間に本当に製品化できるのか疑問に思っていましたが、約束通り、2017年中にディスプレイ一体型の指紋認証センサーの商業化を見事成し遂げたようです。

なお、同じようなディスプレイの下に内蔵することで画面上にタッチして指紋認証が行える指紋センサー「Qualcomm Fingerprint Sensors」をQualcommも開発し、今年6月に発表しており、この時点では2017年10〜12月に同様にメーカーへの出荷を開始予定であることを案内していました。

Qualcomm Fingerprint Sensorsが超音波指紋センサーなのに対し、Synaptics Clear ID FS9500は光指紋センサーとなっています。Synapticsでは指紋センサーがディスプレイ内に搭載されたことによってどのような角度でタッチしても指紋認証を行うことができるとしています。

また、指紋センサーをカバーガラス内に埋め込み、指紋の高解像度スキャンを実現しているため、従来の指紋センサーと違って濡れた指や乾燥した指、冷たい指でタッチしても認証できるようになっているとのこと。

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Synaptics Clear ID FS9500

最近のスマホでは「iPhone Ⅹ」の“オールスクリーンディスプレイ”、「Galaxy S8」シリーズや「Galaxy Note8」の“Infinity Display”など、前面ほぼまるまるディスプレイとなっている機種が増加してきています。

そのような状況ですが、前面全体がディスプレイ化されるとホームボタンはバーチャル化または廃止され、指紋センサーは側面や背面に追いやられてしまいます。例えば、Galaxy S8シリーズやGalaxy Note8では背面に指紋センサーが搭載されていますが、iPhone Xのように指紋認証センサーを完全に取っ払って顔認証「Face ID」だけでといった対処を取っています。

背面に指紋センサーがあると、使う人の手のサイズによっては認証させにくい、持ちにくい、落としやすいといったデメリットがありますし、顔認証だけだとマスクを装着していると認証できなかったりといったユーザーエクスペリエンス(UX)を阻害するデメリットが存在しています。

そのため、ディスプレイ内に指紋センサーを搭載して画面にタッチするだけで指紋認証できる仕組みの開発が各所で行われており、SynapticsやQualcommだけでなく、Appleも関連した特許を取得していたり、LG Electronics傘下のLG Innotekもディスプレイを覆う強化ガラスと指紋センサーを一体化したモジュールを開発したことを発表しています。

ディスプレイ内に指紋センサーを搭載できれば、従来のホームボタンに指紋センサーを内蔵したiPhoneの「Touch ID」などと同じUXを提供できるため、阻害していたデメリットが一気に解決できるのです。

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一方、指紋センサーについては「認証制度が甘い」や「偽装される恐れがある」などの懸念点が存在しますが、Synapticsはそれらの懸念点を払拭するため、セキュリティーレベルを向上させる「SentryPointテクノロジー」を採用しています。

SentryPointテクノロジーには、指紋認証の精度を高める「Quantum Matcher」、独自の人工知能技術を利用して本物の指紋と偽物の指紋を区別する「PurePrint Anti spoofingテクノロジー」、TLSプロトコルのサポートとECC認証及びAES暗号化を組み合わせた「SecureLink」が含まれています。

まさに革新的な指紋センサーと言え、同社もSynaptics Clear IDによってスマホ市場に革新的なシフトの機会を提供していくと表明しています。ただし、ディスプレイ内に指紋センサーを埋め込むとなると、もし万が一ディスプレイを割った場合、修理費用が高く付きそうではあります。

とはいえ、割らなければいいだけですし、今でもきちんと保証に入っていない場合には割ったらそれなりに修理費はかかりますし、これは快適さとのトレードオフと諦めるしかなさそうです。

昔、SF映画や小説などで画面に手を触れるだけで生体認証ができるといった描写が見受けられましたが、現実でも思っていたより早くにそんな未来が実現されそうです。

記事執筆:YUKITO KATO


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