ワイヤレスジャパン2018に出展したKDDIブースを紹介!

KDDIおよび沖縄セルラーは23日、東京ビッグサイトにて開催された「ワイヤレスジャパン2018」にブースを出展し、次世代通信規格「5G」に関する技術展示や実演などを行いました。

日本における5Gは同社をはじめNTTドコモやソフトバンクなど移動体通信事業者(MNO)各社が現在最も注力している技術であり、各社ともに2020年前後のサービス開始を目指して研究および実証実験を行っているものです。

出展ブースでは5Gの基礎技術となる仮想化基地局のスライシング技術や透明アンテナなどの展示のほか、完全無人運転(レベル4)車両の実証実験内容の展示、作業用機械の遠隔操縦、IoTセンサーやスマートフォン(スマホ)およびコネクティッドカーなどを活用した大規模な人口動態分析/予測など、幅広い展示を行いました。

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5Gに関する様々な活用法を提案していたKDDIブース


■5Gと自動車技術の融合に力を入れるKDDI
ブースで最も注目を集めていたのは完全無人運転の実験車両です。自動車の自動運転は人間の干渉度合などでいくつかのレベルに分けられており、KDDIが展示していたのは「レベル4」と呼ばれる完全無人運転の実証実験車で、福岡県内の公道約10kmの区間で実際に無人のまま走らせたものです。

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実験に用いられた車両はトヨタのエスティマハイブリッドの改造車


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車両の周囲や天井には各種センサーやLIDER(レーザー光による測定システム)が設置されている


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サイドミラーにはカメラも


レベル4車両と言えども事故を防ぐ目的や万が一の事故の際の責任の所在などを明確にする目的から人間による遠隔制御手段の実装が義務付けられており、本実験においても障害物をよけるなどのテストの際に遠隔制御による操縦が行われました。

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将来正式に法整備が行われる際も無人運転車両の遠隔操縦システムは義務化されるだろう


この遠隔操縦に必要な技術が5Gとなります。実証実験ではLTE(4G)回線が用いられましたが、通信の遅延の少なさや車両から送られてくる映像の高精細化などで5Gには大きなメリットがあります。とっさの判断や緊急回避などが求められる自動車の遠隔操縦は5G技術の非常に分かりやすい活用例と言えます。

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車両から送られてくる大量の情報を伝送するのにも大容量を誇る5G回線は役立つ


自動車関連ではコネクティッドカー技術の展示も行われていました。コネクティッドカーとは自動車にIoTセンサーを搭載し自動車を1つの情報機器として扱うもので、自動車同士や自動車とスマホを連携し連絡を取り合うことで事故を未然に防ぐV2Xなどの基幹技術となるものです。

IoT機器による人口動態分析および予測はとくに災害時の避難誘導や渋滞回避などに大きな効果を発揮すると思われており、トヨタとの連携によってKDDIがとくに注力している分野でもあります。地域に張り巡らされたIoTセンサーや自動車、スマホなどから送られてくる大量の情報を伝送するのにも5G技術は非常に有効であると考えられています。

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5G時代におけるKDDIの強みはトヨタとの連携にある


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人々の動静をリアルタイムにつかめるため災害時の誘導や避難予測などに大いに活用できる


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災害対策のみならず、タクシーの効率的な配車などにも活用できるかもしれない


■5Gを支える基幹技術と活用例も数多く展示
5Gに関する技術展示では基地局技術として仮想化基地局のスライシング技術が大きな注目を集めていました。

通常の通信用基地局は1つの物理的な基地局設備に1つの基地局としての機能が備わっていますが、仮想化基地局では物理的な基地局設備に利用目的ごとに分化した仮想基地局を複数内包することができます。

仮想化基地局の大きなメリットは設置コストと効率的な帯域利用にあります。物理的な基地局設備に接続される端末の利用目的に応じてどのような帯域制御と伝送を行えばよいかが柔軟に変更できるため、目的が変わった場合に基地局を交換したり増設したりする手間が不要です。

現在はまだ実証テスト段階ですが、5Gのサービス開始には実用化したいとのことでした。

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1つの物理的な基地局を仮想的に分割(スライス)するため、スライシング技術と呼ばれる


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展示では実際にIoTモジュールからの断片的なデータ情報と映画などのストリーミング伝送を別々の仮想化基地局と通して送受信するデモが行われていた


5G用アンテナとしては光透過性の高い導電材を用いた透明アンテナを展示。従来からLTE用として使われていたアンテナを5G用に作ったもので、非常に目立たない外観からLTE用のアンテナではイベントスペースやホテルなどでの採用が多いとのことです。

このアンテナは屋外にも使えるため、駅構内やスタジアムなど人々が密集する場所での活躍も期待できます。

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導電フィルムを挟むための素材には強度に優れたポリカーボネートが利用されているとのこと


5Gを活用した遠隔操縦の応用例としては工事現場における作業機械の操縦などを展示していました。

遠隔作業には4K・3Dモニターが利用され、操縦者は裸眼のままで遠隔地から送られてくる映像を立体的に観ることができます。4K解像度の映像出力を2つ用いるため、5Gの高速大容量という特徴が如何なく発揮される技術と言えます。

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遠隔操作の実証実験では大林組が協力


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4K解像度の3Dモニター映像は非常にリアルで見やすい


今回の実証実験で判明した面白いデータとして、Wi-Fi接続やLTE接続に比べて5G接続の方が作業効率が有意に短縮されていた点があると、実験に協力した大林組の担当者は語ります。

5Gの低遅延性と高精細な映像品質によって現場の状況が把握しやすくダイレクトな操作感を得られるため、非常に作業がしやすかったのだそうです。作業現場での安全性も含め、5Gによる作業の快適さの向上は思わぬ副次効果も生んでいたようです。

また3D映像による作業のしやすさについても触れ、「VRゴーグルのようなやり方もあるが、それでは映像以外の情報が少なく作業がやりづらかった。3Dモニターであれば作業現場の状況や各種データを別モニターで参照することが可能なので作業効率が非常に高くやりやすかった」と語っています。

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熟練技術者が遠隔地の作業を快適に行えるのは大きなメリットがある


■5Gによって広がるビジネスアイデア
このほか、ブースでは5Gとは直接関係しないものの災害対策ソリューションやスマートグラスの実演や「音のVR」と呼ばれるような音響技術の展示も行われ、地域インフラからエンターテインメントまでを幅広くカバーするKDDIらしいブース内容となっていました。

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被災地の通信インフラの臨時復旧に基地局設備を搭載したドローンを活用する提案などが行われていた


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スマートグラスもまた5Gとともに期待される「これからの技術」の1つだ


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利用者が映像を任意に動かすとそれに合わせて音の定位も動く「音のVR」。エンターテインメント性の高い技術と言える


既に沖縄セルラーなどではスタジアムを利用した4K映像の同時受信なども実証実験が行われ、着々と5Gサービス開始に向けた準備が整えられつつある様子がブース内の展示からも見て取れました。

電波の指向性が高く到達範囲も比較的狭い5G通信は広域をカバーする用途には向かないため、KDDIの担当者によれば5Gサービスは開始当初、駅やイベント施設などを中心にスポット的にエリアを広げていくことになるだろうと語っていました。

大容量・低遅延・多接続を可能にする夢の技術は、もはや夢ではありません。ほんの数年後には人々が当たり前に使う技術の展示の数々に、ブース来場者も強い関心と興味を惹かれているようでした。

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5Gはもうすぐやってくる


記事執筆:秋吉 健


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