商品レビューのあり方について考えてみた!

出不精な筆者は仕事柄、そして私事でもオンラインショップをよく利用します。最近はスマートフォン(スマホ)用のスタイラス(タッチペン)を色々と試しており、その度に「これは使いやすい」とか「これはイマイチ」などと自分なりの評価をしていたりします(スタイラスについての記事も近日中に執筆予定)。

当然商品を購入する際には、メーカーやショップによる説明だけではなく購入者による評価(レビュー)も必ず目を通します。これは使いやすいのかな?持ちやすさは?耐久性は?……メーカーの売り文句だけでは分からない部分を補ってくれるのがユーザーレビューであり、良い意味で主観的な評価を読めるからです。

しかし最近、このレビューシステムが正しく機能していないように感じることが多々あります。業者による、いわゆる「サクラ」のレビューであったり、モンスタークレーマーの如き支離滅裂な低評価であったり。もちろんそれらのレビューは一目見れば判断がつきますが、しかしそれらの「読むに値しないレビュー」が大量に投稿され、真面目なレビューを探し出すのに一苦労することも少なくありません。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はそんな商品レビューの現実と本来あるべき姿、そして状況を改善する手段について考えます。

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健全で有用なレビューのあり方とは


■機能不全に陥ったレビューシステム
商品のレビュー機能というのは非常に大きな意味と効果を持ちます。実店舗のように商品を手に取ることも、気軽に試用することもできないオンラインショップにおいて、購入者によるレビューは貴重な「生の声」だからです。

Amazon.co.jpにしても楽天市場にしても、必ずレビュー機能は存在します。もはやレビュー機能が存在しないオンラインショップでは購入をためらうほどに重要な機能なのです。

ところが、そこまで重要な機能であるにも関わらず、システムとしてのレビュー機能はあまりにも脆弱で放置されすぎているのではないかと常々感じるのです。

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細かく分析されたレビューのように感じても、実際はあまり有意ではないことも……


1つ目は冒頭でも述べたような、サクラ行為の横行や一言レビューによる粗悪評価の横行です。

「この商品は素晴らしいです!おすすめです!」といった商品賛美の定型文がずらりと並ぶ様子は、オンラインショップを利用したことがある人なら目にしたことは多いでしょう。それが1件や2件であれば騙されもしますが、100や200もレビューが付いているのにその大半が定型文レビューだった場合など、あまりにも滑稽で笑ってしまうほどです。

こういったサクラ行為によるレビューが増殖した背景の1つには、評価を単純に視覚化した「段階評価」と上位のレビューしか見ない消費者が多いことが挙げられます。

いわゆる「星評価」と呼ばれる5段階程度の評価システムは単純明快で、急いで評価を知りたい人やあまりレビューを気にしない人にとっては良い指針となります。しかし、その単純さ故に「評価の量産」も容易で、出品業者によってはサクラ行為によって評価を上げ、製品が本来の評価よりも良いものであるかのように工作しやすいのです。

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某スマホ用ガラスフィルムのレビュー欄。いずれも文量が多く丁寧なレビューに見えるが、実はすべてたった2人(2アカウント)だけでのレビューである


「これだめです。使えません」、「全然おもしろくなかったです」といった、一言レビューも評価としての体を成していません。こういった一言レビューによる低評価は、いわゆる「荒らし行為」にも繋がりかねず、本当に商品が良くないと感じて行った低評価すらも、星評価だけを見ればすべてが怪しげな評価に紛れてしまうのです。

一言レビューの無意味さは低評価のみに限らず、高評価であっても大差はありません。ただ一言「よかったです」しか書かない評価に何か意味があるでしょうか。

この一言レビューの傾向はスマホアプリなどで顕著です。ゲームなどの評価の場合、そのゲームのファンとしての投票的な意味を込めているのかもしれませんが、アプリの内容に全く触れず「アプリ化おめでとう!」のコメントだけで最高評価を付けられているのを見て、何かの参考になる人はまずいないでしょう。

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ファン投票的な評価なのであれば、そのアプリの何が素晴らしいのかを詳細に語って欲しいとすら感じてしまう


2つ目は段階評価システム自体の機能不全です。前述のように5段階評価のようなシンプルな総合評価のみの場合、評価の一覧性は上がりますがレビュー項目を採点する指標としては全く役に立ちません。

例えば最低評価を付けられた商品があったとして、そのレビューを読んでみると、「商品はとても使いやすかったですが、届くのが遅くて箱も潰れていたので星1です。」といった、商品自体の評価とは何ら関係のないものであった、などという話はネットジョークにすらされるほどです。

そこまで極端ではなくとも、全体としての使い勝手は悪くなかったものの、耐久性に難があって評価を落としている場合や、商品自体は素晴らしい完成度にもかかわらず価格が高いことで評価が下げられている場合などはよく見かけます。

そういった評価の詳細こそ、本来は段階評価の時点で一覧性を持たせるべきなのです。濫造されたサクラレビューや一言レビューの山の中から、そういった有用なレビューを探し出す作業がどれだけ面倒で手間が掛かるのかは、想像するだけでもウンザリするほどです。

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参考にならない評価だらけの世界を誰が望んだのか


■レビューシステムはある程度面倒な方が良い?
こういったレビューシステムの機能不全を改善する方策はないのでしょうか。完璧とは言えずとも、一定の成功を見せている例はあります。

例えば「価格.com」です。ここでは全体としての総合評価のほかに、商品の特性や特徴に合わせた詳細な評価項目が存在します。レビュアーはこれらの細かな評価項目に1つ1つ点数をつけることで、商品のどこが気に入ったのか、何が悪かったのかなどを段階的に評価しやすくなっているのです。

これはレビュアーの利便性だけではなく、レビューを読む側にとっても大きな価値があります。総合評価による一覧性の高さは確保しつつも、価格やデザイン、重さ、機能性、操作性なども、長々と書かれた文章を読み解くことなく一覧性の良い段階評価によって知ることができるからです。文章によるレビューを段階評価の補足程度のものとして扱える手軽さは、大きなメリットです。

また、こういった詳細評価は自分にとって何を重視するのかを明確にしやすいメリットもあります。

例えばカメラであれば、画質さえ良ければ携帯性はあまり重視しないとか、バッテリーは複数持ち歩く前提なので連続撮影枚数は気にしていない、ということは多々あります。そういった自分の使い方や趣向に合わせた評価を一瞬で判断できるという点でも、レビューシステムとして非常に優秀であると言えます。

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総合評価が満点でも操作性だけは一般的なカメラ相応、というのがすぐに分かる


詳細評価型のレビューには、安易な一言レビューを防げるという分かりやすいメリットもあります。

そのレビューの形式上、評価を行うには多数の項目を埋めていく必要があります。一見するとそれは面倒な作業ですが、その面倒な作業をしてでも後続の購入者へ伝えたい内容がある、という点が、レビュアーの質も読む側の質も向上させているように感じられます。

場合によってはユーザー登録が必須であったり、年齢層や性別など、個人情報に近い情報を開示しなければレビュー出来ない場合もあります。こういった「煩わしさ」こそが、ノイズの少ない「真面目なレビュー」のみを集めるキーポイントなのかもしれません。

当然、これらの詳細な評価システムを採用しただけでサクラ行為や参考にならない評価のすべてが防げるわけではありませんが、少なくとも現在大多数のショッピングサイトが採用している総合評価のみのレビューシステムよりは、質の良いレビューを得られるのではないでしょうか。

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敷居の高さが、逆にレビューの質を向上させる


■商品レビューにこそビジネスチャンスがある
オンラインショッピングやスマホアプリの購入など、レビューが必要とされる場面は多数あります。しかし現状は「参考にならないレビュー」で溢れかえっており、その傾向は無料アプリや購入者以外でも評価ができるショッピングサイトほど顕著です。

参考にならないレビューが増え続けることは、結果として人々の購買意欲を失わせ、経済活動の低迷や商品開発の妨げにすらなりかねません。事実、ゲームのレビューでは遊んでもいない人が不当にゲームを蔑む「アンチレビュー」を大量に書き込むことが問題となり、Amazon.co.jpなどでは購入者以外のレビュー投稿を一部制限するといった流れにも発展しています。

価格.comのように詳細な評価項目を用意することは、ショッピングサイト側にも大きな負担を強いることになるため、Amazon.co.jpや楽天市場のような巨大ショッピングサイトでは難しいようにも感じられますが、それができてこそより良質なショッピングサイトと呼べるのではないでしょうか。

また、価格.comのような商品比較サイトがビジネスとして成立していること自体が、「商品を正しく評価する」ということに高い価値が見出されている反証と言えるでしょう。

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商品の情報に莫大な価値があることを教えてくれたサイトでもある


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ゲーム情報サイト「4gamer.net」のユーザーレビュー。細かなレビュー項目やレビュアー情報により、そのゲームを誰がどのように評価しているのか一覧できる点が良い


技術の発展によって日々進化し続けるオンラインビジネスの世界にあって、レビューシステムだけは何故か10年近くも進歩らしい進歩が見られないように思えるのは筆者だけでしょうか。かのGoogleやAppleのアプリマーケットですら、レビューシステムがシンプルすぎてほとんど何の役にも立っていません。

ネット広告の世界ではあの手この手を使い、巧みに商品を売り込む手法が次々に編み出されているのに、商品レビューはまるで「商品の広告にもならない」と、投げやりに放置されているかのようです。

人々の口コミほど、費用対効果の高い宣伝方法はありません。「あのサイトのレビューはとても参考になった」、「このレビューのおかげで良い商品に巡り会えた」。……そういった喜びが再び良いレビューとして返ってくる、そんなオンラインショッピングの世界が実現されることを願うばかりです。

記事執筆:秋吉 健


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