iPhone SE(第2世代)について考えてみた!

モバイル系ニュースを日々チェックしいるようなみなさんならすでにご存知かとは思いますが、新型コロナウイルス感染症関連で各メディアが埋め尽くされる中、先日ひっそりと発表されたスマートフォン(スマホ)があります。Appleの「iPhone SE(第2世代)」です。

発売日は4月24日(金)を予定しており、すでに4月17日よりAppleの公式Webストアでは事前予約が始まっています。また移動体通信事業者(MNO)であるNTTドコモやau(KDDI・沖縄セルラー電話)、ソフトバンクの3者も4月20日(月)からの予約開始を発表しており、発売日は4月27日(月)です。

※新型コロナウイルス感染症問題を受けた緊急事態宣言に従い、一部MNOではオンラインショップおよび公式サイトのみでの受付となります。詳しくは各社公式サイトをご覧ください。

価格はAppleの公式WebストアにおけるSIMフリー版の場合、64GBが44,800円(以下、すべて税別)、128GBが49,800円、256GBが60,800円と、iPhone 11 Proシリーズの半額以下です。さらに下取りも活用すれば29,800円から購入でき、価格的なインパクトは十分でしょう。

iPhone SE(第2世代)の魅力はチップセット(SoC)や機能面でも多くあり、価格だけではありません。一方、時代的な変化からのメリットやデメリットをハッキリと感じられる製品でもあります。果たしてどのような人に向いている機種なのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はiPhone SE(第2世代)の魅力や、そのメリットとデメリットを考察します。

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圧倒的な安さに思わず欲しくなる


■価格は下げても性能は向上!
本機はiPadやAirPodsなどと同じようにAppleの通例にならい、相変わらず「第○世代」という呼び方(区別)をしているため、名称での分かりづらさがあります。素直にiPhone SE2とでもすれば良かったのに、と思ったのは筆者だけではないでしょう。

初代iPhone SEが発売されたのは2016年ですので、4年越しでの後継機種ということになります。端末のリプレースタイミングとしては若干遅かった気もしますが、安価で小型のiPhoneを求める声に応じた形での発売となりました。

ただし、小型と言っても画面サイズは4.7インチで、筐体デザインも含めてiPhone 8の事実上の後継機種、もしくはリニューアル製品といった位置付けです。画面サイズが4インチだったiPhone 5sのスペシャルモデルとして登場した初代iPhone SEからは、若干大型化しました(そもそも「SE」とは「Special Edition」の略)。

2019年9月にiPhone 8が価格改定した際には、公式オンラインストアで64GBが52,800円、128GBが57,800円だったため、それぞれ価格が8,000円下がり、さらに256GBモデルがラインナップされた形になります。

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iPhone SE(第2世代)と同サイズの「iPhone 8」。決して「小さい」とは言い難いが、それでも現在発売されているiPhoneシリーズの中では最小・最軽量となる


iPhone 8から価格は安くなりましたが、性能を犠牲にしているわけではありません。チップセット(SoC)には最新のハイエンドモデル「iPhone 11 Pro」と同じ「Apple A13 Bionic」が搭載され、安いから処理速度が遅いのでは、といった心配は全くありません。

防沫・耐水・防塵性能やFelica対応なども万全で、ディスプレイにはTrue Toneや広色域ディスプレイ(P3)などの最新技術を投入したRetina HDディスプレイを採用。背面カメラも単眼ながら性能を強化しており、光学式手ブレ補正を搭載した約1200万画素の広角カメラでは4K動画撮影が可能です。

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低価格端末でハイエンドの性能を楽しめるのは素晴らしい


■ホームボタンにこだわりのある人こそ購入すべき端末
そして何よりも、これまで初代iPhone SEやiPhone 7、iPhone 8などを愛用してきた人にとって最大の魅力となるのが、指紋認証付きホームボタンの存在ではないでしょうか。かくいう筆者も今でこそiPhone Xシリーズ以降の顔認証に慣れましたが、ホームボタンの素早い起動や扱いやすさには多少の未練があるほどです。

顔認証のほうがセキュリティレベルが高く、ホームボタンがないほうがデザイン的にもディスプレイの広さ的にも好ましいことは認識していますが、テーブルに置いた状態からでも画面を覗き込むことなくサッと起動できたり、特別な設定をせずともアプリ操作に影響を与えないホームボタンはやはり便利なのです。

また、マスクをしていても問題なく瞬時にロック解除が行える指紋認証機能は、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を奮う現在、奇しくもメリットの1つとなってしまっているのは間違いないでしょう。

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Face IDはマスクをしていても認証が通るように改善されてきているものの、やはり認証精度がかなり落ちる


ただ、先進性という点では現在販売されている多くのAndroidスマホに遅れを取っている感は否めません。

Androidスマホでは顔認証と指紋認証など、複数の生体認証システムを持つ機種が少なくありません。顔認証が使えない場合には指紋認証を、さらにどちらも利用できなければパターン認証を、といったように複数の認証システムを利用できる利便性は、Androidスマホに軍配が上がります。

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ASUS製「Zenfone MAX (M2)。実売3万円前後の非常に安価な端末だが、顔認証と指紋認証の2つの生体認証に対応する


とは言え、物理キー(厳密にはセンサー方式だが物理的に独立したキーという意味で)としてのホームボタンの安心感はやはり大きく、これまで初代iPhone SEなどで使い慣れてきた人には何も違和感なく使えるという最大のメリットがあります。

これまでホームボタンのあるiPhoneシリーズを愛用してきた人で、画面の大きさよりも端末の軽さや持ちやすさを重視したい、という人には強くオススメできる機種だと思います。

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顔認証は使いづらいと、わざわざiPhone XシリーズからiPhone 8などへ戻した人もいるほどだ(画像はiPhone 7)


■「安くて軽くて性能が良い」iPhone
最新のチップセットとパッケージであるため、OSの最新機能やトレンドのアプリを余すところなく利用できる点もメリットです。

安価なAndroidスマホなどではチップセットの性能も抑えられているのが一般的であり、最新のゲームなどでは処理が重くなったり表示品質が大きく落ちたりしますが、iPhone SE(第2世代)であれば、そのような心配は無用です。

またeSIMによるデュアルSIM対応となったことも大きなメリットです。eSIMはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクを利用している人にはあまり関係がありませんが、MNOの楽天モバイルや仮想移動体通信事業者(MVNO)のIIJmioなどが採用しているため、これらの通信キャリアの回線を契約する時に便利です。

eSIM対応通信キャリアで動作確認が取れていることが前提条件となりますが、例えば仕事用として物理SIM(nano-SIM)でNTTドコモと契約し、プライベート用としてeSIMでIIJmioを契約して使い分ける、といったことも可能です。

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楽天モバイル公式サイトより。今後eSIMを採用するスマホや通信キャリアは徐々に増えていくだろう


まだ実機を触ったわけではないために細かな評価はできませんが、「最新チップセットを搭載した、さらに安価なiPhone 8」というだけでも十分にその魅力は伝わってきます。

ベースがiPhone 8であるため、無接点充電方式「Qi」(チー)にも対応しています。置くだけ充電の便利さは筆者も強く実感しているところで、使わない時にただ置いておくだけ、という気軽さに慣れてしまうと、ケーブル接続による充電は本当に煩わしく感じます。

そんな「安くて軽くて性能が良い」と三拍子揃ったiPhone SE(第2世代)は、むしろカメラ機能や全画面ディスプレイなどを重視しないならこれで十分なのではないかと思うほどです。

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iPhone 8から搭載された無接点充電は本当に便利だ(画像はiPhone 8)


みなさんはiPhone SE(第2世代)をどう受け止めるでしょうか。筆者の直感は「バカ売れする」と囁いています。

MNO・MVNO問わず、スマホ市場でのiPhoneの強さは相変わらずですが、これまで価格が最大のネックでした。そのため中古のiPhoneすら飛ぶように売れていたわけですが、その弱点が是正されたことの市場へのインパクトは絶大です。

とくに中高生を中心に、「はじめてのスマホ」として保護者が買いやすい価格に落ちてきたことが大きな理由です。性能面でもハイエンドと遜色ないとなれば、子どもたちからも不満を言われることは相当減ることでしょう。

端末が148gと非常に軽い点も大きな魅力です。昨今のハイエンド機種は重く、手や肩への負担が大きいことについて以前コラムで書いたことがありますが(こちらを参照)、中高生などが持つ端末としてもiPhone SE(第2世代)の軽さはメリットであると感じます。

筆者がこの記事を書いている今まさに、Apple公式オンラインストアで予約が始まろうとしています。大きな発表もなくひっそりと登場したiPhone SE(第2世代)が一般にどのように評価され、どのように売れていくのか、個人的にも非常に気になるところです。

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「スペシャルエディション」と名付けられたiPhoneが復活する








記事執筆:秋吉 健


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