ファーウェイへの制裁の猶予期間がさらに延長も次はない!?半導体などの制限は強化

米国商務省(United States Department of Commerce)は15日(現地時間)、 昨年5月に同省の産業安全保障局(BIS)が中国の通信機器メーカーであるHuawei Technologies(華為技術、以下「ファーウェイ」)およびその関連企業を輸出規制リスト(Entity List)に追加したことに対して米国輸出管理規則(EAR)を改正する一時一般許可(TGL)をさらに90日間延長すると発表しています。

いわゆるアメリカのファーウェイに対する制裁による「ファーウェイ問題」における猶予期間で、これによってこれまで米国企業がファーウェイへの輸出を含む同社との取引について限定的に期間限定で承認する猶予が与えられており、これまでに90日間が2回、45日間が2回延長されてきましたが、さらに90日間延長して2020年8月13日(木)までとしました。

ただし、同省では今回は募集していたパブリックコメントを受けての決定であり、今回の延長期間終了以降についてはTGLの内容が修正または廃止される可能性があると通告しており、TGLに依存している場合は廃止された場合における影響を判断するための準備をして欲しいと案内しています。

また合わせて同省ではファーウェイとその関連企業(HiSilicon Technologyなど)が昨年5月の輸出規制リスト追加後もアメリカの技術や設備、ソフトウェアを使用して海外の工場に生産委託することで半導体などを製造しているとし、長く運営されている直接製品ルールと輸出規制リストを修正すると発表しています。

この変更によって輸出規制リストに掲載されているファーウェイとその関連企業が生産した半導体設計などの品目で米国商取引管理リスト(CCL)にある直接生産物に加え、これらの企業が設計した仕様から製造されたチップセット(SoC)などの品目で米国外で生産された直接生産物が対象となります。

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米国商務省の延期の発表文

ファーウェイはスマートフォン(スマホ)や基地局などを開発・製造する中国の通信機器メーカーで、スマホでは世界出荷台数シェア2位、基地局などの通信インフラでも世界シェア2位となっており、米中貿易摩擦にも絡んで米国の国家安全保障および外交政策における利益に反する活動に従事していると結論付けるに足るとして昨年5月に米国の輸出規制リストに追加されました。

一方でファーウェイの製品を利用している消費者や通信事業者が急に製品を使えなくなるなどの問題に配慮して、猶予期間が設けられており、これまでの4度の延長が実施されてきました。現状では問題が解決しそうもないようで、新たに半導体については制限が追加されました。

また前回の延長時に米国商務省ではさらなる延長の必要性や許可範囲についてパブリックコメントによる意見募集を行っていましたが、その結果として新たに90日間の延長はするものの、この延長期間が終わった後は猶予の修正や終了を行う計画だと発表しました。

なお、猶予期間の間は従来通りにすでにファーウェイの製品を利用している消費者や通信事業者が継続してサービスを利用したり、ネットワークの運用を行ったりするための特定の取引を米国企業とファーウェイは行え、ファーウェイでも同社の製品に対してセキュリティーアップデートやアフターサポートを継続して実施可能となっています。

対するファーウェイでは対抗する構えを取っており、Androidを搭載したスマホなどの新製品にGoogle PlayストアやGmailなどのGMS(Google Mobile Service)を搭載できない問題が続いており、代わりに自社独自のアプリ配信マーケット「AppGallery」を含むHMS(Huawei Mobile Service)の拡大を急いでいます。

日本でもHMSを搭載した「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」を4月に発売し、AppGalleryに日本でニーズの高いコミュニケーションサービス「LINE」アプリを配信開始していたりしており、このまま制裁が続く状況も想定しながら対応しています。

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米国商務省による規制強化のプレスリリース

またこれまでは米国外製であればアメリカの技術やソフトウェアなどの利用率が25%以下なら規制の対象外となっていましたが、新たに半導体などの部品については米国製だけでなく米国外製も規制の対象とするとのこと。

これでファーウェイやその関連企業が製造を委託する台湾TSMCや部品メーカーなどとの取引が制限されることになり、台湾TSMCでは「内容を確認する」とした上で「ルール修正には従う」とコメントし、実際にファーウェイやその関連企業との取引停止が必要かどうかを確認するとしています。

台湾TSMCなどとの取引が停止した場合には主力のSoC「HAUWEI Kirin」シリーズなどの調達が難しくなり、新たな製品の製造が停止する可能性も出てきます。またファーウェイではソニーのカメラセンサーなどの部品も利用しており、今回の制限強化でどの程度影響があるのか各社ともに動向を注視していくことになりそうです。



記事執筆:memn0ck


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