XENON GROOVE SYNTHESIZER

充実のiPhone・iPod touch用の音楽制作アプリ、app storeを覗いてもとにかく数が多すぎて自分の求めているアプリに出会うのは中々大変です。
今回は、比較的新しい音楽制作アプリ「XENON」を実際に使って、サンプルのパターンを組んだそのサウンドもお届けします。

XENONとは?!

XENONは、6つの音源モジュールと、ミキサー、1種類のエフェクター、ソングシーケンサーからなるGROOVE SYNTHESIZER系の音楽制作アプリです。
01
それぞれのモジュールには16ステップ(1小節分)のパターンシーケンサーが内蔵されていて、それらのパターンをソングシーケンサーモジュールでソングを作ります、いわゆるオーソドックスなDTMツールと同じ作法で曲作りをしていきます。

ただし、100パターンまでしか並べる事が出来ないので、長いソングを作る事が出来ません。
これがGROOVE SYNTHESIZERたる所以の一つなのですが、リアルタイムにパターンを切り替えて演奏する使い方(JUMP)が用意されていますので、任意の長さのパターンループと展開用のパターンを用意して、パターンジャンプで曲を展開させます。
02
パターンジャンプは、次の小節の頭で切り替わりるので、あらかじめパターンを指定しておけば大丈夫です。
ソングシーケンサーの左側のモジュールアイコンは、ミュートスイッチになっていてトラックの抜き差しが可能となっています。画面切り替えが必要ですが、音源モジュール、ミキサー、エフェクターなどもリアルタイムで変更可能なので、楽曲にライブ要素を盛り込む事が出来ます。


音源モジュールについて

ポリフォニックハイブリッドシンセサイザーHSX-4 ×1
03
2オシレーターのポリフォニック(同時発音数4音)シンセサイザーです。オシレーターには通常のサイン波、三角波、ノコギリ波、ノイズの他にオシレーター1には、人の声の特徴を捉えたフォルマント波形とFM合成が可能なFMオシレーターが、オシレーター2には、リアルなPCM波形(112音のプリセット波形)が用意されています。

ハイブリッドシンセサイザーと言えば、大容量のROMやRAMが高価な時代に、リアルなPCMサウンドの特徴的なアタック部分などの短いサウンド素材をサンプリングし、シンセサイザーの音にピアノや、トランペット、ブラスセクションなどのPCMサウンドを重ねて、独特なシンセサイザーサウンドが話題となったRolandのD-50や、DTMの先駆けのMT-32などの音源モジュールがありました。
HSX-4は、様々なオシレーターの合成による凝った音作りの他に、ピアノの音にシンセストリングスを重ねたスペーシーなサウンドを簡単に作ることが出来ます。

サンプル曲では、SAW(ノコギリ波)とPCMオシレーターのTrace Sawを合わせて、厚みのあるサウンドを作ってみました。曲の展開部分で使用しています。

モノフォニックVAシンセサイザーASX-1 ×2
04
ベースやリード楽器用のシンセサイザーです。2つのオシレーターにはそれぞれサイン波、三角波、ノコギリ波、ノイズが用意されており、定番のシンセサウンドを作り出すことが出来ます。

サンプル曲では、ベースサウンドと展開部分で使用しているRolandのTB-303風ビキビキサウンドに使用しています。

ベースサウンドは、リングモジュレーションとローパスフィルターでバッサリと高音域カットして、低音域を強調しています。アンプのエンベロープでは、アタックタイムとディケイタイムを調整して、コンプレッサーをかけた様なガッツのあるサウンドにしてみました。

TB-303風サウンドは、ノコギリ波だけでは素直過ぎるので矩形波も混ぜ、ドライブつまみで適度な歪みを作っています。ポイントは、フィルターのベロシティーを設定して、ベロシティーでTB-303のアクセント機能をエミュレートしています。
オートメーション風に、フィルターにゆっくりとしたLFOをかけて、リアルタイムにカットオフが変わる様な設定にしています。

ポリフォニックPCMシンセサイザーPSX-4 ×1
05
PCM波形を加工して音作りをするポリフォニック(同時発音数4音)シンセサイザーです。PCM波形はリアルな楽器音の他に、サイン波やノコギリ波などの波形も用意されていますので、1オシレーターのシンセサイザーとして使用できます。楽曲の構成によって、リアルなサウンド用、バックのコード用や、リードやベース、シーケンスフレーズ用などのシンプルサウンド用に上手く使い分けると便利です。

サンプル曲では、ロックオルガンののサウンドをもとに、ローパスフィルターで硬く聞こえる高音域を削って、レゾナンスを調整し、アンプエンベロープのアタックタイムを少しだけ遅めにして、ちょっと懐かしい音色のシーケンスフレーズを作りました。

6トラックリズムマシンPRX-6
06
PCM音源(プリセット185音)を使用したドラムサウンドを6つのパッドに登録できるリズムモジュールPRX-6です。それぞれのサウンドは、音量やパン(左右の位置)、ピッチ、音の長さなどの設定が出来、楽曲にあわせたチューニングが可能です。

サンプル曲では、特にこれと言ったテクニックは使って無いのですが、XENONはSwingの設定の跳ねた感じが気持ち良いので、出来るだけ16分音符を多用しています。
オートメーションが使えないので、スネアのロールはベロシティーで調整していますが、一音一音設定するのが大変でした。簡単に編集する機能が欲しいですね。

5チャンネルステレオミキサーMX-5
07
5つのモジュールが接続されているミキサーです。左から、HSX-5、ASX-1(1)、ASX-1(2)、PSX-4、PRX-6を調整します。ソング演奏中にSOLOボタン、MUTEボタンでリアルタイムにトラックを抜き差しする事も可能です。
それぞれのチャンネルには、エフェクターへのSEND(送信)つまみが用意されていますので、チャンネル別にディレイの強さを設定できます。

FX ステレオディレイ
08
任意の時間(0.1ms - 2500ms)もしくはテンポにシンクロするディレイエフェクター(やまびこ効果)です。
定番の空間系エフェクターのリバーブが無いので、リスニング用途としては綺麗さに欠けますが、クラブ等で鳴らすなら重要な要素でも無いと思います。ディレイタイムの設定が気持ち良さの鍵となるので、テンポシンクでかっちり合わせるより、少しラフな感じで、「いい感じ」のディレイタイムを設定するのもアリです。

ソングシーケンサーSQX-5
09
コピーペースト機能を備えた、ソングシーケンサーです。それぞれの音源モジュールで組んだパターンを1小節毎に並べて曲としての展開を作ります。
操作は、パターンを置きたいモジュールの各小節の位置をタップして、パターンナンバーをタップします。複数小節をドラッグして範囲指定して、一括でパターンナンバーを指定することも可能です。
パターンの一括変更やコピー&ペーストが充実しているので作業自体は驚くほど簡単です。ただし、パターンのインサートやデリートが出来ないので、コピー&ペーストを駆使してパターンの移動をする必要があります。

今回のサンプル曲は、展開全部をソングで組んだので(100パターン使い切りました)、途中でアイディアが浮かんでからのパターンのインサートの操作が意外と面倒でした。やはり、XENONらしい使い方は、ざっくりとパターンを並べて、リアルタイムに切り替えだと思いました。


XENONを活用しよう

モジュールのパターン単位、ソングをwavファイルとして、WiFi送信やクリップボードへのコピーが出来ますので、iPhoneのオーディオを扱えるアプリへのデータ転送や、PCに取り込んで着信音作りや、本格的な編集、オリジナルオーディオCD制作などへの連携が可能です。

今回のサンプル曲の動画は、iPadでソングを組んで、WiFiでPCへオーディオファイルを送り、PCの波形編集ソフトでフェードアウト処理だけをしてwavファイルをiTunes経由でiPhone4へ送っています。

映像トラック部分は、サンプル曲とは関係ありませんが、実際にiPadで操作している所をiPhone4で撮影し、iPhone4のiMovieで撮影した映像とオーディオトラックを合わせて書き出したムービーをiPhone4でそのままYoutubeにアップロードしています。

オーディオファイルの部分だけPCが必要ですが、楽曲制作、ムービー撮影、ムービー編集、Youtubeで公開がiPhoneだけで出来てしまうのは、実は凄い事ですね。


※この原稿を書いている最中に、新バージョンがリリースされました。新バージョンはiPadのユニバーサルバイナリーとなり、iPad用HD画面対応となりレイアウトが変更されています。
464c3fa6.jpg

iPad版の画面
シンセサイザーのエディット画面や、ソングシーケンサー画面の情報量が増えて、リアルタイム演奏が楽になっています。

XENONは、GROOVE SYNTHESIZERに特化したアプリです。それぞれのモジュールの個性や制限が、アプリの機能全体を把握できる規模になっていますのでプラス要素になっているとも言えます。
余計な情報を廃した黒ベースにツマミをイメージしたシンプルな画面デザインは、曲作りにおける頭の中のイメージがボヤけないので、クリエイティブな作業に向いている様な気がしました。

オーディオのエクスポートを利用して、オーディオベースのシーケンサーや、ハードディスクレコーダー系のアプリへの連携、PCでの作り込みも出来ますので、外ではiPhoneでスケッチ的な使い方、家ではPCベースで編集作業なんて使い方もいいですね。

記事執筆:mi2_303



アプリ名:XENON Groove Synthesizer
価格:350円
カテゴリ:ミュージック
開発者:iceGear
バージョン:1.5.0
App Store:http://itunes.apple.com/jp/app/xenon-groove-synthesizer/id385498073?mt=8

■関連リンク
エスマックス(S-MAX)
エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
動画をとことん楽しむ!ソフトバンクモバイル「選べるかんたん動画」【iPhoneアプリ】 - S-MAX - ライブドアブログ
カラオケ好きは必見!「UTAMO(カラオケ歌い放題)」【iPhoneアプリ】 - S-MAX - ライブドアブログ
まるで本物の熱帯魚のような美しさ!「MyReef 3D Aquarium」【iPhoneアプリ】 - S-MAX - ライブドアブログ
「札幌国際短編映画祭」をより深く楽しめるiPhoneアプリがリリース【iPhoneアプリ】 - S-MAX - ライブドアブログ
爽快感抜群!弾幕系シューティングゲーム「怒首領蜂 大復活」【iPhoneアプリ】 - S-MAX - ライブドアブログ