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SIMフリーブランド「FREETEL(フリーテル)」を展開するプラスワン・マーケティングが販売するモバイルWi-Fiルーター「ARIA2」において発表から発売まで「WiMAX 2+」をサポートするといったアピールについての問題(以下、WiMAX 2+サポート問題)とそれについて思うことをまとめてみる。
ARIA2のWiMAX 2+サポート問題をひと言で説明すると、ARIA2について発表会やWebサイト、各種サポートにて「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」と告知して発売したものの、実際にはUQコミュニケーションズ(以下、UQ)の提供するWiMAX 2+サービスのSIMカードではデータ通信を利用できなかったことだ。
その後、発売日を迎えてからWebサイト上に「UQ WiMAX契約のSIMカードでは利用できない」ことを告知するなど、発売前に「使える」としていたSIMカードで実際にはデータ通信が利用できないことを明らかにした。また現在ではそれらの対応キャリアに「WiMAX 2+」の記載もなくなっている。
この問題は「ARIA2がTD-LTE方式のBand 41と互換性があるWiMAX 2+方式に対応することで、WiMAX 2+契約のSIMカードでも利用可能」と同社が勘違いをしていただけだと考えていたけれど、問題の経緯を整理して考えると、プラスワン・マーケティングの品質管理に深刻な問題があるように思えた。
【そもそも問題は発表時に指摘されていた】
プラスワン・マーケティングは2016年6月27日に開催した「新製品・新サービス発表会」にてARIA2を発表した。発表会のプレゼンテーション資料を確認すると、ARIA2は「docomo&UQ回線対応」とされており、この「UQ回線」がUQの提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)による携帯電話サービス「UQ mobile」のことを意味するのか、あるいはモバイルWi-Fiルーターなどの「UQ WiMAX」のWiMAX 2+対応向けに提供される「ギガ放題」などのプランなのかは明確に判断することが難しい。ただし、この発表会後の囲み取材の中では明確に「WiMAX 2+契約のモバイルWi-Fiルーターを利用中のユーザの乗り換えを狙う」と発言しており、UQ WiMAXのWiMAX 2+対応ルーターを契約中のユーザーに向けた製品と考えられていたことがわかる。
なお、ジャーナリストの石川温氏が公開している同発表会の後の囲み取材の動画を以下に掲載しておく(※ARIA2のWiMAX 2+対応関連のコメントから再生)。
ARIA2に関する部分の概要は以下の通り。このやりとりを見ていると、FREETELとしては完全にARIA2が「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」と思い込んでいることが理解できる。
——————————————
・記者
新しいルーター(ARIA2)はB41に対応しているが、誰がどういう使い方をすることを想定しているのか?
・増田社長
UQの(WiMAX 2+対応)モバイルWi-Fiルーターを長く使っていると、端末のスピードが出なくなったり、電池の持ちが悪くなっているユーザがたくさんいる。そういったユーザの代替端末になる。というのが一つ。
・記者
UQ(WiMAX 2+)のSIMカードは他社端末では利用できないように、(ネットワーク側で)ロックがかけられているが???
・増田社長
……○○(担当者)君、説明してください。
・担当者
あ、そうですか(笑)
……確認をさせてください。
・増田社長
ARIA2の売り方に関しては、いろいろなところで握りをしている。
・記者
つまり、UQ側と(WiMAX 2+契約のSIMで使える様に)合意は、現時点ではとれていない?
・増田社長
今は合意はとれていない。
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つまり、6月の発表時点では、WiMAX 2+契約のSIMカードが他社製品で利用できないようにしている制限について把握していないものと思われる。なお、UQ(およびそのMVNO)ではWiMAX 2+対応のモバイルWi-Fiルーターを提供開始以来、制限をかけている仕様に変更がない。
百歩譲って、増田社長が細かい仕様を理解していないのはある程度仕方がないとしても、増田社長から指名された担当者が正確な情報を把握していない上に、6月の時点で「確認する」としていたWiMAX 2+契約のSIMカードでの動作確認が発売時まで行えていないのは問題だ。
さらに確認できていないにも関わらず、そのまま発売した上で販売開始後に「WiMAX 2+契約のSIMカードでは使えない」ことを明らかにしており、一連の対応についてひと言でまとめれば「(端末発売の)数ヶ月前にツッコミがあったのに、確認を放置していた。」と言わざるを得ない。
【特定の担当者が勘違いしたのではなく、会社全体として確認が行われていない】
また「ARIA2がWiMAX 2+契約のSIMカードで使える」という勘違いについては、プラスワン・マーケティングの特定の担当者あるいは販売店の特定のスタッフが勘違いをしていただけではなく、会社全体として「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」ことが共有知とされていたことは、ARIA2を販売する店頭での告知内容やARIA2の製品紹介ページ、ユーザサポートの対応から理解できる。6月に開催された発表会で「本当に本当に使えるの?」という趣旨の質問が記者からあり、担当者が「確認する」とコメントしたWiMAX 2+契約のSIMカードでの利用可否について、発売までの数ヶ月の間、誰一人としてプラスワン・マーケティングの中で「WiMAX 2+契約のSIMカードでは使える・使えない」ことを確認する人間が1人も居なかったという事実が浮かび上がる。
これはWiMAX 2+契約のSIMカードで使える・使えないを確認したプラスワン・マーケティングの社員および関係会社の社員は存在していたかもしれないけれど、それを会社として正しく確認することができなかったという意味では、ユーザ視点で言えば結果は同じだと思われる。
前述の通り、WiMAX 2+契約のSIMカードは、UQ(およびそのMVNO)が販売する機種以外は利用できないという制限は今に始まった話ではなく、その上で「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」とアピールするのであれば、実際にWiMAX 2+契約のSIMカードと対応を謳う製品で確認をするのが当然だと思う。なお、このUQのWiMAX 2+サービスにおける制限が妥当かどうかはここでは議論してしないことを添えておく。
仮に、プラスワン・マーケティングが主張しているようにTD-LTE方式のBand 41に対応するだけで「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」ということになるのであれば、AppleではiPhone 6シリーズ以降が、SIMフリースマホでもASUSTeK ComputerのZenFone 3などの多くの機種が「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」ということになる。
実際には、これらの機種でもUQの制限によってUQ WiMAX 2+契約のSIMカードでは利用できない。一方で、WiMAX 2+方式という意味では、UQからWiMAX 2+方式の通信網を借り入れているau契約のSIMカードでiPhone 6シリーズ以降で使えていることからも対応しているのは確かだ。
【「WiMAX 2+契約のSIMカードで動作確認」は、大きな誤りかウソ】
というわけで、FREETELが当初主張していた「WiMAX 2+契約のSIMカードで動作確認をした」という点は、実際にはWiMAX 2+契約のSIMカードで通信ができないことから考えて、何らかの勘違いがあるかそもそも動作確認が行われていない可能性が極めて高い。また、一部メディアで「動作確認を行った」とする旨が伝えられていたため、この点について具体的にどういった通信事業者やプラン、そして、APN(アクセスポイント)設定などで行ったのかといった内容を問い合わせ中だけれど、現時点ではFREETELから返信はない。
仮に、FREETELにて何らかのWiMAX 2+契約のSIMカードで動作確認ができていたとしてもWiMAX 2+契約のSIMカードとモバイルWi-Fiルーター向けのAPN情報は公式情報としては公開されていない。
WiMAX 2+サービスを提供するUQおよびそのMVNOが正式情報として公開していないAPN情報をFREETELの責任でユーザーに対して公開するのも無理があるようにも思えるし、ARIA2のユーザーが自己責任でAPN設定するというのはさらに無責任であるように思う。
さらにWiMAX 2+契約のSIMカードを使う限り、総合的に判断するとほぼあり得ないリスクではあるけれど、APN設定を誤れば意図せぬ通信料が発生する可能性があり得る情報を、(UQから見て)第3者であるFREETELが公開するのもユーザーが自力で辿りつくのも、どちらも多くの問題があるだろう。
【FREETELの掲げる「日本品質」って、何ですか?】
FREETELでは「JAPAN QUALITYとして自社製品を厳しく品質管理しているとしているものの、今回のARIA2におけるWiMAX 2+契約のSIMカードでの利用可否に関しては、6月の製品発表から12月の発売に至るまで、本来あり得ないミスを数多くしているように思う。ARIA2が「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」とアピールしてしまったのは、国内の通信事業者が提供するサービスとその制限を正しく理解していなかったことや、6月の発表後に記者からのツッコミを受けて「確認する」とした内容が社内にて正しく確認されることなく製品発売まで至ったことを露呈している。
言うなれば、実機と回線さえあれば「ARIA2はWiMAX 2+契約のSIMカードで使える」とした品質管理は多くのSIMフリーとMVNOが抱える問題ではあるが、この点において今回のARIA2とWiMAX 2+契約のSIMカードについては、結果的にプラスワン・マーケティングが一切の確認をしていないのと同一となる。これは同社が掲げる日本品質であるとはまったく思えなかった。
記事執筆:shimajiro@mobiler
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相変わらず、いい加減な会社ですね。