ストリーミング音楽配信サービスについて考えてみた!

みなさん、最近音楽は聴いていますか?先週、アマゾンジャパンが無料で音楽を楽しめる広告付きストリーミング音楽配信サービス「Amazon Music Free」の国内提供を開始しました。

またグーグルが同社のストリーミング音楽配信サービス「Google Play Music」を2020年後半に終了することを発表し、同社が並行して運営していたストリーミング音楽配信サービス「Youtube Music」へのアカウント移行ツールの公開が行われました。

大手企業による立て続けの新サービスや戦略の発表にストリーミング音楽配信サービス界隈はにわかに活気づいています。その背景には新型コロナウイルス感染症問題(以下、コロナ禍)によって外出が制限され、限られた娯楽の選択肢をビジネスチャンスとして捉えて攻めの戦略に出ようという各社の思惑が見え隠れします。

コロナ禍による生活様式の変革が叫ばれる中、音楽聴取の形態も大きく変わろうとしています。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はストリーミング音楽配信サービスの「今」を考察します。

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音楽の楽しみ方はどう変わっていくのか


■伸びしろが大きなストリーミング音楽配信サービス
はじめに、日本国内でのストリーミング音楽配信サービス(定額制音楽配信サービス)の利用動向を見ていきましょう。

少々古いデータになりますが、2019年5月にICT総研が公開した「2019年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」によれば、CDのなどのオーディオレコード市場は年々減少している一方、音楽配信市場は順調に増加し続けていおり、2020年末には市場全体で2280万人、2021年末には2370万人が利用するという試算を出しています。

これは2018年までの調査を基にした数字であり、コロナ禍の影響を加味したものではありませんが、冒頭でも書いたように人々は自宅でも可能な娯楽を模索し始めており、ストリーミング音楽配信サービスの需要は2019年以前よりも増加しているように思われます。

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推計と予測とは言え、非常に安定した成長だ


また上記データやグラフ、さらに以下に示す定額制音楽配信サービスの利用率などを見ると、意外と有料サービス利用者が多いことが分かります。

一般的にオンラインサービスと言えば基本無料で有料のプレミアムオプションがあったり、月額を支払うことで広告の非表示に対応するなどの施策が一般的ですが、ストリーミング音楽配信サービスでは課金ユーザーが特異的に多いように見受けられます。

しかしこの背景には、そもそもストリーミング音楽配信サービスに無料のサービスが少ない、もしくはシェアの大きな大手サービスに無料サービスが少ない点が挙げられるように思われます。

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有料ユーザーが多いのではなく、無料で使えるサービスが少ないだけ?


例えば2019年4月現在のアンケート調査でトップシェアとなったAmazon Musicは、冒頭でお伝えしたように無料プランとなる「Amazon Music Free」がようやく開始されたばかりです。また第2位となったApple Musicには無料プランがなく、30日間の無料期間が終了すると自動的に有料プランへと移行されます。

第3位に挙げられたLINE MUSICには無料プランがありますが、楽曲を30秒しか聴けないとか、ログイン(アカウント登録)していても月1回までしか1つの楽曲をフル再生できない(2回目以降は30秒のみ)など、聴取に大きな制約がつきます。事実上有料プラン以外は常用できる仕様ではありません。

オンラインサービスの利用者は有限であり、その中でも課金ユーザーは一般的に2~5%程度と言われる中、ストリーミング音楽配信サービスのユーザーの半数以上が課金ユーザーであったというのは、ある意味「異常な数字」だったのです。

早い話が、無料プランさえ用意すればそのユーザー数は現在の数倍になる可能性すら秘めた市場であったと言うべきで、アマゾンジャパンが広告付き無料プランの提供に至ったのは必然だったと言えるでしょう。

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LINE MUSICの無料プランは制限が厳しく「お試しプラン」の域を超えていない


■課金ユーザーを増やすことの難しさ
人々が有料プランに満足していない様子は、その他の調査データからも見受けられます。

例えば「定額制音楽配信サービスを利用しない理由」では、「定額で支払うことに抵抗がある」がトップとなっており、やはり月額課金(サブスクリプション方式)を嫌う傾向が強いようです。

また「YouTubeなどで無料で楽しめる」という理由が第2位となっている点も重要なポイントです。YouTubeには音楽レーベルやアーティストによる公式チャンネルも多く存在しますが、中には違法アップロードや法に抵触しない形での第三者による演奏なども数多くあります。

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サブスクリプションモデルにはまだまだ抵抗感があるようだ


音楽ユーザーの「無料で楽しめるのだからそれで十分」という声には理解できる部分もある一方、それでは法的な問題がある上に、何よりアーティストに利益が還元されない(アーティストの収益とならない)問題があります。

おそらくグーグルが最も懸念し解決を図りたかった部分こそが、この著作権的な問題とアーティストの収益性の問題ではないでしょうか。

自社のストリーミング音楽配信サービスを一本化し資産の集約と効率性の向上を図りつつ、YouTubeを音楽配信プラットフォームとして大きく育てることで、違法アップロードなどを能動的に潰していこうというものです。

現在はまだYouTube動画からのYouTube Musicへの誘導や導線の整備が進んでいませんが、コンテンツプラットフォームとしてのYouTubeに、すでに「映画と番組」や「ゲーム」などのカテゴリーがある以上、ここに「音楽」が加わる可能性は大きいでしょう。

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YouTubeは端末やOSに縛られない巨大なコンテンツプラットフォームへと変貌しつつある


■アーティストを知るきっかけとしてのストリーミング音楽配信サービス
著作権問題やアーティストへの利益還元という点に着目するならば、ストリーミング音楽配信サービスは非常に都合の良いサービスと言えます。

そもそも、ストリーミング音楽配信サービスは音楽を販売するというよりも「貸し出す」サービスです。ユーザーは音楽を購入しているのではなく「音楽を聴く権利」を購入しているのであり、その所有権は認められていません。一時的にダウンロードしオフライン利用できるサービスなどもありますが、オフラインでの利用方法には大きな制限が付きます。

そのため、例えば何かの事由により特定のアーティストの楽曲の配信を停止しなければいけなくなった場合でも、ストリーミング音楽配信サービスであれば即座に対応できます。また著作権料などは基本的に著作権管理団体との包括的契約となるため、その管理が簡単で流通的にも効率が良くなります。

この著作権や収益の包括的管理は、あまり著名ではないアーティストほど恩恵があります。著名なアーティストであればダウンロード配信やCD販売などで直接的な収益を見込めますが、そうではないアーティストは認知自体がなかなか進まず、収益を上げるのは至難の業です。

しかしストリーミング音楽配信サービスのレコメンド機能などがあればユーザーに楽曲を知って貰う機会も増え、収益的にもレーベルによる包括契約によって最低限は保障される可能性も出てきます。

かつて、数多くの無名アーティストがラジオやUSENといった媒体によって名を上げ、メジャーデビューを果たしてきたように、ストリーミング音楽配信サービスがその役割を担う時代が訪れたのです。

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YouTube Musicで「おすすめのミックス」を再生すれば、好きなアーティストに混じって全く知らないアーティストの楽曲が流れる。これが重要なマーケティングとなる


■生活に音楽を、心に喜びを
ユーザー視点で考えても、ストリーミング音楽配信サービス市場の拡大と利便性の向上はメリットしかありません。

前述のように、ストリーミング音楽配信サービスは「音楽の貸し出しサービス」であるため、本当に手元に残しておきたい音楽であれば、CDなどの物理媒体で購入するか、ダウンロード配信などを購入するほうが良いでしょう。

しかし、音楽には「流し聴きする楽しさ」や「知らない音楽に偶然出会う楽しさ」があります。街で流れていた音楽に耳を傾けたり、ドライブ中にラジオから流れてきた音楽に興味を持ち、そこからアーティストを知ってファンになった経験は誰にでもあると思います。

ストリーミング音楽配信サービスには、そういった可能性が大いにあります。もしくはそういった可能性が求められるコンテンツサービスです。

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音楽はもっと自由になれる


2019年、日本中で人気となった音楽に、米津玄師氏の「パプリカ」があります。老若男女を問わず多くの人々に支持され、YouTubeにある公式サイトのミュージックビデオは、2019年8月の公開以来、約9ヶ月間で9500万回以上も再生されています。

このように特定の楽曲が国民的大ブームとなるのは、近年では非常に珍しいことです。その背景にはYouTubeなどの動画配信サイトによる無料再生や、それがSNSで拡散されていったという事実があることは間違いありません。

もちろんその裏には、NHKなどの強力なプロモーション活動もあったでしょう。しかし、それだけではここまでのブームにはなりません。良い曲は良い、という素直な感想と想いが、人々をつないだ結果ではないでしょうか。少なくとも単なるCD販売やダウンロード配信だけでは、ここまでのブームにはなり得なかったでしょう。

ストリーミング音楽配信サービスもまた、こういった口コミを広げる可能性の塊です。人々は音楽を欲しています。年配者は懐かしい音楽を、若者は新しい音楽を。そして誰もが「誰でも知ってる音楽」を。

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音楽に簡単に触れられる、ということの大切さ


コロナ禍で暗鬱とした生活が続いている人もいることでしょう。そんな今だからこそ、ストリーミング音楽配信サービスを強くオススメしたいところです。

音楽は心の栄養、などと言う人もいます。好きな音楽や、初めて聴く音楽に心を躍らせる、あの感覚こそが今必要なことです。

日々の生活に音楽を。音楽とともに心強く行きましょう。

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さあ、思う存分音楽を楽しもう!


記事執筆:秋吉 健


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