2021年のメタバースの進化と飛躍について考えてみた!

みなさま、新年あけましておめでとうございます。

2021年は通信・テクノロジー業界にとって苛烈な1年で、年末のコラムにて総括させていただきました。しかしながら、暗い話題ばかりだったかと言われると実はそうでもなかったように思われます。

その代表とも言えるのが「メタバース」関連の話題です。本連載コラムでも2021年11月に入力デバイスの歴史と未来について特集を組み、その後編の大部分をメタバースと入力デバイスの関わり方でまとめさせていただきました。

筆者が現在最も注目し、そして2022年に大きく飛躍すると考えているものこそがメタバースです。さまざまな技術やコンテンツサービスが日々発表される中、最も現実的で最も私たちの生活に密接に関係してくるであろう技術とサービスだからです。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。2022年最初のコラムは、メタバースの未来について考察します。

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メタバースは私たちに何をもたらすのか


■体験しないと分からないメタバースという概念
メタバースについての技術的な解説やその概念については、冒頭でも書いたように以前のコラムで詳しく書かせていただきました。

メタバースとは決して新しい発想や概念ではなく、それこそ人々がパソコン通信やインターネット上のBBS(電子掲示板)で話に花を咲かせていた時代から脈々と培ってきた「夢」だったのです。


【過去記事】秋吉 健のArcaic Singularity:コントロール・デバイス・ジェネレーションズ(後編)。スマホ革命から現実とメタバースが融合する未来を考える【コラム】

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入力デバイスの進化がついにメタバースを実現させるところまで来た


世界中の人がどこからでもアクセスできる「もう1つの世界」を作り、そこに自分自身の分身となるアバターを存在させてコミュニケーションを図る。メタバースの典型はこのようなものと考えて問題ありません。

しかしながら、メタバースという概念の素晴らしくも難しい部分は、こういった典型に当てはまらないものも多く内包しているという点です。

例えばARグラスを用いて、あたかも目の前に遠方の友人が立っているかのように表示して会話をする、といったこともまたメタバースという概念が実現させようとしていることの1つです。

MR技術によって現実世界にバーチャルオブジェクトの建築物を表示し、工事関係者でその映像を共有しながら配置や工事手順の確認を行う、といった活用方法もまた、メタバースが内包するものです。

言葉で書くと「なんのこっちゃ」と言わんばかりに理解不能な世界ですが、実際にMRグラスやARグラスを利用したことがある人であれば、すぐに理解できるはずです。

メタバースは、体験者以外に概念が伝わりづらい点がネックかも知れません。

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ARやMR技術は、実際に使ってみないとその便利さや有用性が伝わらない


■AR/MRグラス飛躍の年となるか?
2021年はメタバース元年などとも言われましたが、筆者は2022年をメタバース活用が本格化する年であると捉えています。それはサービスやコンテンツとしてだけでなく、デバイスの面でもブームが起こるかもしれないからです。

2021年12月14日、OPPOが新型のARグラス「OPPO Air Glass」を発表しました。

ARグラスというと、ゴーグルタイプのかなり大きなものを想像しますが、OPPOが発表したのは片目のみに文字情報を表示する非常に簡易的なもので、スマートフォン(スマホ)を母艦としワイヤレス方式(ケーブルレス)によって小型軽量を実現している点が特徴です。

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メガネタイプのフレームにマグネット装着するため、メガネ利用者でも利用しやすい


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表示できるのは文字情報のみだが、スマホでの音声認識と組み合わせて自動翻訳なども可能


かつて、Googleも小型軽量のARグラス「Google Glass」を2013年に発売し話題となりましたが、当時はスマホとの連携も弱く、また処理性能や技術的な未熟さもあり、ブームを起こすまでには至りませんでした。

しかしながら、Google Glassというプロジェクト自体が立ち消えたわけではなく、現在もエンタープライズ・エディションとして販売は継続されています。

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実はNTTドコモも法人向けに販売している(引用元


こういったARグラスは、メタバースが実現させようとしている概念を簡略的に体験するための道具として有用です。それ自体はメタバースとは言えないかもしれませんが、オンラインゲームの世界のようにメタバースの要素を強く持った道具だからです。

夢は、OPPOのAir GlassやGoogleのGlassのようなサイズでMR空間の表示を可能とすることです。

かつて筆者はNTTドコモの展示会にてMRゴーグルやタブレットを用いてMR映像を大勢の人々と共有する体験をしましたが、そういった体験がこのサイズのグラス型デバイスで可能になるのは、そう遠くない未来だと感じるのです。

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タブレットに映し出されたMR映像が小さなメガネ型デバイスに表示される未来は遠くない


■コミュニケーションへの渇望がメタバースの未来を切り開く
今回は未来への展望をつらつらと語るコラムということで、正月の初夢らしく技術的課題や現状の問題点などについて深く掘り下げることはやめておきましょう。

完全なオンライン上の仮想空間の活用という面では、メタバースは時勢的なメリットが多くあります。長引くコロナ禍によって人々はコミュニケーション手段を大きく制限され続ける中、対面でのコミュニケーションが持つ重要性を再認識し始めています。

その対面コミュニケーションをオンライン上で可能にする手段としてのメタバースは、間違いなく今年のテクノロジー・トレンドの1つとなるはずです。

また、コロナ禍によるテレワークやコワーキングスペースの活用は人々を孤立化させかねませんが、そこでもMR技術などによって対面コミュニケーションを可能にしてくれるようになれば、精神的な安定を得られやすくなります。

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コロナ禍は、テーブルを囲んで多くの人と話をする、ということの大切さを思い出させた


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MRグラスがあれば、SF映画のようなホログラフィック・コミュニケーションも夢ではない


私たちはすでに、その基礎となる技術を日常的に利用しています。

SNS、オンラインゲーム、そしてビデオチャットなどです。メタバースとはそれらをすべて統合・内包し、さらに利便性を高めたサービスと考えても良いでしょう。

そしてその開花の年と考えるのが2022年です。テクノロジー企業はコロナ禍というピンチをチャンスと捉え、かつて何度も夢見ては実現し得なかったメタバースの実現に本腰を入れ始めています。

5G通信および対応スマホの普及やスマホの基本性能の向上(MRグラスの母艦としての性能)、AIを活用した画像認識や音声認識技術の成熟など、多くの駒が揃いつつあります。あとはその駒をどう上手く組み合わせていくかの問題です。

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手駒を上手に動かし、メタバースの勝者となるのはどこか


何かと暗く深刻な話題ばかりが目立つ昨今ですが、ことメタバースに関しては筆者が珍しく楽観視するほどに、ワクワクドキドキするような未来しか見えないというのが正直なイメージです。

もちろん、困難やいくつかの問題は起こるでしょう。例えばMRグラスは歩きスマホ以上に街中での事故リスクが懸念されていますし、プライバシーへの配慮の問題もあります。またオンライン上でのメタバースにはゲーム依存のようなリスクも少なからず危惧されます。

しかしながら、それらですら現状すでにコロナ禍によって引き起こされている諸問題と比較すれば、正直些細な問題であると考えてしまうほどに、コロナ禍が引き起こしたコミュニケーション不足や社会機能不全という問題は深刻であるとも痛感する日々です。

通信とテクノロジーの先にあるメタバースの特異点はすでに見えています。今年こそそこに辿り着くことを夢見つつ、2022年のコラム初めとさせていただきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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困難な時代だからこそ、夢を語り実現に向けて走ろう


記事執筆:秋吉 健


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