モバイル通信契約の手段や場所について考えてみた!

みなさんは携帯電話やスマートフォン(スマホ)の契約をどこで行うでしょうか。通信キャリアの看板を掲げたキャリアショップであったり、家電量販店のスマホ売り場だったり。最近ではオンライン契約専用プランなども登場し、オンライン契約を行う人も増えてきているようです。

かくいう筆者も現在のメイン回線はソフトバンクのオンライン契約専用プランであるLINEMOであり、副回線でもKDDIのオンライン契約専用プランであるpovo2.0を利用しています。それ以前からも、仮想移動体通信事業者(MVNO)を利用するためにオンライン契約を多く行っており、もはや最後に実店舗で契約したのがいつだったのか思い出せないほどです。

モバイル通信回線のオンライン契約はどの程度人々の間に浸透したのでしょうか。また実店舗での契約は今後なくなっていくのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は通信契約の手段や場所について考察します。

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キャリアショップはもう要らない?


■急速にオンライン化が進むモバイル通信契約
はじめに、人々がどこでモバイル通信契約を行っているのか数字で見てみましょう。

MMD研究所が2023年8月に公開した「2023年7月通信契約のチャネル別調査」によると、「メイン利用の通信会社を契約した場所」として最も多くの回答を得たのは「通信会社の公式WEBサイト」の29.2%でした。これは2位の「路面店舗の携帯ショップ」の21.8%を大きく上回っています。

2022年に行われた同様の調査では、「通信会社の公式WEBサイト」は25.0%、「路面店舗の携帯ショップ」が28.7%であったことを考えると、オンライン契約を行う人の割合が急速に伸び、1つのターニングポイントを迎えたことを示唆します。

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たった1年でこの変化はかなり衝撃的だ


社会情勢的にはコロナ禍による自粛ムードも終わり、小売店などの店舗利用客が増えているだけに実店舗の利用も増えているのかと思いきや、モバイル通信契約に関しては完全にオンライン化へ傾倒しています。

恐らく背景には急激な物価高から生活費の切り詰めが急務となり、MVNOやオンライン専用プランといったリーズナブルな通信料金の通信サービスやプランを選択せざるを得なかったということもあるかもしれません。

とは言え、すべての通信契約がオンライン化へ一気に進むと考えるのはまだ時期尚早でしょう。「メイン利用の通信会社を契約した場所」の詳細からオンライン契約と実店舗契約の2つに大別して見てみると、「通信会社の公式WEBサイト」、「家電量販店などのWEBサイト」、「Amazon」の3つの合計が31.1%、「路面店舗の携帯ショップ」、「街の携帯ショップ」、「家電量販店」、「ショッピングモール内の携帯ショップ」、「出張店舗の携帯ショップ」、「上記以外の携帯ショップ」、「郵便局内の携帯ショップ」の7つの合計が56.9%となり、まだまだ実店舗契約のほうが2倍近く多いことが分かります。

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契約した場所を「覚えていない、分からない」と答えた人も、恐らくほぼすべて実店舗だろう


「メイン利用の通信会社を契約した場所を選んだ理由」や、逆に「メイン利用の通信会社と契約した際に他の契約場所を選ばなかった理由」などを見ても、実店舗をすべてなくす訳にはいかないことがよく分かります。

例えば実店舗契約のユーザーは専門スタッフによるサポートや相談の必要性を高く評価しており、オンライン契約のように誰にも相談せずに契約作業を行うことに大きな不安を抱えていたり、契約後にスマホの設定などができないため店舗スタッフに手伝ってもらいたいといった要望が強くあります。

世の人々すべてが高いモバイルリテラシーを持ち合わせているわけではなく、「食わず嫌い」のような単なる印象の問題だったとしても、すべて自己責任且つ自力で契約手続きを行うことに抵抗があるのも頷けるところです。

また、オンライン契約を行うには単に契約手続きが自力で行えるというだけではなく、通信回線やスマホ本体についての詳細な知識が必要です。

例えばAndroidスマホの場合、現在使っているスマホをそのまま別の通信会社で利用しようとした場合、利用できる電波(バンド)が少なくなって通信品質やエリアに問題が発生する可能性があります。これはスマホの基本性能の時点で利用できるバンドが限られているためですが、そういった利用可能バンドの知識などが事前にないと大失敗してしまうこともあります。

こういったハードルの高さが、モバイルリテラシーのあまり高くない人々には非常に不安な点であり、実際に「どうすればいいのか分からない」と言われてしまう部分でもあります。

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オンラインでサクッと契約してしまう身としては、通信関連の知識が少ない人々の感覚がなかなか理解しづらかったりもする


■減り続ける実店舗
しかしながら、それでもオンライン契約の割合は急速に伸び、人々は通信の知識を身につける努力をしてでもオンライン契約へと切り替え始めています。

MCAが2023年4月に公開した「キャリアショップの展開状況と店舗一覧」の抜粋によると、2023年2月のキャリアショップ数は7794店舗で、半年前となる2022年8月の時点から184店舗も減少しています。

店舗減少の傾向はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社ともに調査データのある2020年から継続しており、その中でもNTTドコモは半年で81店舗も減少しています。

楽天モバイルのように実店舗数を増やすことに注力している通信キャリアもありますが、業界全体の傾向としては実店舗を減らす方向にシフトしており、業界内部からも契約のオンライン化が進んでいる状況です。

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数字はキャリアショップのみだが、家電量販店などでの取り扱い規模も年々縮小している


業界内部から縮小の傾向にある理由として最も大きいのは、通信料収益の低下によるコストカットです。

202012月の「ahamoショック」を契機に通信料金は劇的に下がりましたが、同時に通信キャリアは通信料収益も大きく下げました。これをKDDIやソフトバンクはフィンテックやポイント経済圏による収益増強によってカバーしましたが、NTTドコモは年間数千億円単位での売上減になるなど、非常に苦しい経営状況となったのです。

そこで発案されたのが実店舗の縮小です。2022年には「2025年までに3割程度(約700店舗)減る」との見通しが立てられていると報道されるほどで、実際に数字として半年で81店舗ものキャリアショップが減少している事実を鑑みるに、700店舗という数字もあながち荒唐無稽ではないのだろうと考えてしまいます。

当然KDDIやソフトバンクもオンライン専用プランの好調さやスマホ販売の低迷を受けるようにして、徐々に実店舗数を減らしています。若い世代ほどオンライン契約に抵抗がないことは数字を見るまでもなく推察されるところであり、今後NTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった通信キャリアの実店舗数が増加に転じることはないでしょう。

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NTTドコモは実店舗数をただ減らすのではなくオンライン業務とのハイブリッドチャネル化を目指す


■オンライン契約ができる程度の知識は身につけよう
モバイル通信契約のオンライン化は人々の「通信料金をもっと安くして欲しい」という要望を叶えるために通信キャリアが編み出した手段でしたが、その結果として実店舗は確実に縮小・減少していく運命にあります。

しかしながら、実店舗数がゼロになることは絶対にないと断言しても問題ないでしょう。さまざまな理由からオンライン契約ができない、あるいは非常に難しい人々が必ず存在します。そういった人々のために、対面での手厚いサポートや契約前の相談などを行える場は絶対に必要だからです。

これまでのモバイル通信業界と携帯電話やスマホの市場が「異常だった」と言っても過言ではありません。単なる通信手段のために街中に店舗が並び立ち、熾烈な価格競争を行い、時には法令違反ギリギリの値引きやキャンペーンを打ち、お客を騙すようにして大量のオプションを付けた契約をもぎ取る。そんな時代はもう負の歴史として過去のものにしなければなりません。

今後もモバイル通信のサポート拠点としての実店舗は最低限必要になりますが、これまでのような「看板の数が正義」と言わんばかりのショップ乱立は、コスト削減の意味でも人々のモバイルリテラシー醸成のためにも、確実に是正していく必要があります。

もしまだモバイル通信回線のオンライン契約をしたことがない人がいましたら、ぜひ前向きに検討してみてください。覚えなければいけない知識は少なくありませんが、その知識は今後の人生で一生役に立つものです。

日々利用する道具なのですから、最低限必要な知識は積極的に覚えていく習慣を身につけたいところです。

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モバイル通信の知識を身につけ、自分でできることを増やしていこう


記事執筆:秋吉 健


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