IIJがNTTドコモとHLR/HSS連携でフルMVNO化!

インターネットイニシアティブ(IIJ)は30日、NTTドコモに対して仮想移動体通信事業者(MVNO)におけるデータ通信について加入者管理機能(HLR/HSS)連携に関する申し込みを2016年8月29日(月)に完了し、NTTドコモより同日に該当申込に対する承諾書を受領したと発表しています。

これにより、今後、サービス基盤およびネットワークの構築・検証等のプロセスを経て、IIJは国内初の「フルMVNO」として2017年度中の商用サービス開始をめざしていくとしています。

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基地局などの携帯電話のインフラ設備を持つ移動通信帯事業者(MNO)の設備を借り受けてモバイル通信サービスを提供するMVNOは、2009年に実現したレイヤー2接続と、2012年にIIJが他のMVNOに先駆けて商用化したPCC(Policy and Charging Control)によっていわゆる「格安SIM」という新しい市場の拡大を推進してきました。

一方でMVNOは、異業種を含めて現在では200社を超える参入によって価格競争が進み、サービスも同質化しつつあり、MVNOの活性化に向けて新たな取り組みが求められています。

このような市場環境の中で、IIJではより柔軟で付加価値の高いモバイル通信サービスを提供することで差別化をはかるべく、フルMVNOを開始します。

これまでIIJでは、2008年からMVNOに参入し、法人向けモバイルサービスからM2Mソリューション、仮想移動体サービス提供者(MVNE)、個人向けモバイルサービスへとビジネス領域を広げ、モバイル通信サービスの可能性を具現化してきたとのこと。

そして、MVNOの次なるステップとして、フルMVNOへの取り組みを他社に先駆けて開始し、新たなモバイルビジネスを創出することで、中長期での飛躍的な事業規模拡大をめざしていくとしています。

MNO設備への依存度が高い従来のMVNO(同社ではフルMVNOに対して「ライトMVNO」と呼称)に比較し、フルMVNOはSIMカードを管理するデータベースであるHLR/HSSを独自にIIJで運用することにより、独自のSIMカードの調達・発行が可能となり、より自由なサービス設計が行えるようになります。

HLR/HSSはHome Location RegisterおよびHome Subscriber Serverの略で、SIMカードに紐付けられているユーザ情報を管理するデータベースのことを指し、これを独自に管理することでより独自のサービスが展開可能になります。

なお、今回のフルMVNOに関する提携はデータ通信のみで、今後、NTTドコモと音声通話に対応したフルMVNOについても提携できるように協議していくということです。

なお、IIJではNTTドコモ回線だけでなく、au回線を使ったMVNOも行っていますが、少なくとも現時点ではau(KDDIおよび沖縄セルラー)とはフルMVNOについての協議はしていないとのことです。

特にフルMVNO化することで、今後発展が見込まれるIoT分野では組み込み型SIMの提供や課金・開通管理などを自由にコントロールできるサービスの開発が可能となり、新しいMVNOビジネスモデルの創出が期待されます。

例えば、同社では利用者のニーズに応じて、以下のようなサービスが実現できるとしています。

・海外のMNO/MVNOとの提携により、海外へのローミングの際に最適な通信サービスを提供する
・組み込み型SIM(eSIM)や、耐振動性、耐候性を備えたSIMカードを提供する
・機器の製造ラインでSIMを組み込み、出荷後、必要なときに通信サービスを開通し利用可能にする

これにより、IIJではMVNOの契約者を今年度末に200万、中期計画として2020年までに700万を目標に掲げているとのこと。ただし、特に700万契約については、今後のIoTの普及などを考えると控えめなのかもしれないと語られました。

またIIJでは、自社だけではなく、MVNEとしてパートナー企業にフルMVNOのプラットフォームを提供し、パートナー企業が持つ顧客基盤やビジネスモデルに適した独自のMVNOサービス展開を支援していくとしています。



記事執筆:memn0ck


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MVNO事業の強化に向けた「フルMVNO」への取り組みについて | 2016年 | IIJ
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