Twitterの新機能「Fleet」について考えてみた

先週Twitterを使っていたところ、突然タイムラインに「フリート(Fleet)」という言葉がいくつも出てきていました。何か新しいコンテンツサービスだろうかと調べてみれば、Twitterに追加された新しい投稿機能のことでした。フリートを利用できるのは11月13日現在はまだiOSのみですが、今後Android OS向けにも公開していくとのことです。

iPhoneユーザーの筆者は早速Twitterの公式アプリをアップデートして使ってみましたが、正直なところ通常のツイートとどのように使い分けるべき機能なのか、未だに考えあぐねています。まあ、あまり深く考えずに使うのが良いのかもしれませんが。

フリート機能では閲覧した人が誰なのかが既読して表示されるため「インスタのようだ」と言う人もいますが、Instagramをほとんど使っていない筆者にはその例えもよく分からず、「mixiの足跡機能みたいだな」とインターネット老人会らしい発想に落ち着きました。

フリートはTwitterで定着するのか、それとも使われずに消えていくのか。そもそもフリートとは誰が望んだ機能だったのか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はTwitterの新機能「フリート」について、つらつらと考えを巡らせてみます。

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フリートとは一体何者なのか


■フリートが本当のTwitter?
はじめに、フリートの機能について紹介しておきましょう。

フリートは主に画像や30秒までの動画を投稿できる機能で、24時間で投稿内容が削除されるのが特徴です。この24時間で削除されるという点や、冒頭でお伝えしたように閲覧者が誰か分かるという点がInstagramの機能に似ていると言われる所以です。

フリートにはメッセージを投稿できますが、投稿されたメッセージはDMでフリートを投稿した人へ届けられるため、他人は読むことができません。この閉鎖的な仕様もまたInstagram的だと言われる理由の1つです。

フリートは通常のTwitterタイムラインの上部に表示されており、投稿も上部左側のボタンから行います。タイムラインの表示がその分少し狭くなりましたが、下へスクロールさせれば隠されるのであまり気にはなりません(上にスクロールを戻す操作を行えばどこからでも呼び出せる)。

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タブで分けるのではなく、タイムラインの一番上の表示されるのが煩わしいと感じる人もいるようだ


フリートは表示自体にも時間制限があり、6~30秒(投稿動画の長さに依存)経つと自動的に同じアカウントの次のフリートを表示するか、別の人のフリートを自動的に表示するようになっています。

【2020年11月15日17時 訂正】
初掲載時、フリートの表示時間を30秒と記載していましたが、実際は6~30秒でした。訂正しお詫び致します。

文字数には事実上制限がないらしく、何万文字も書いて検証している人もいますが(セキュリティ的な懸念が出なければ良いが)、一般的には一言二言を書いて投稿する程度でしょう。

つまりフリートとは、Twitterの通常投稿よりもさらにカジュアルで、放置していれば勝手に流れて消えていく、本当の意味での「つぶやき(Tweet)」に近い機能だと言えます。

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フリートには、人々が忘れていたTwitterの原点がある……?


■ツイート共有機能を使ってみよう
また、ちょっと面白い使い方としては、通常のツイートをフリートに貼れるというものがあります。

ツイートの右下にある共有用のメニューボタンをタップすると、共有一覧に「Shere in a Fleet」という項目が追加されています。これをタップするとフリートの編集画面に移り、該当ツイートを画像として貼り付ける形でリンクを張ることができます。

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通常のツイートと連携できるのはなかなか面白い


この機能はなかなかイマジネーションを刺激される機能です。

例えば通常のツイートのみの場合、投稿した瞬間にタイムライン上に表示されて流れていくため、他のフォロワーのタイムライン上には一瞬しか表示されません。トップツイートが優先的に表示される「ホーム」表示にしていたとしても、タイムラインが流れてしまえばやはり消えてしまいます。

しかし、フリートにリンクを張れば24時間は必ず画面上に留まります。「24時間で消える」という仕様を逆手に取り、24時間以内なら絶対に消えない広告のような使い方ができるのです。

フォロワーがそのフリートを開いてくれるかどうかは別としても、例えば24時間限定のセールをゲリラ的に告知したり、期間限定で行うイベントのURLを掲載することができるのです。フリートには既読が付くために注目度や拡散度合いを視覚的に理解でき、メッセージもDMでのみ受け付けるため、ビジネス的な利用も可能です。

フリートの真の面白さは、このツイートの共有機能にあると言っても良いかもしれません。

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Twitterの活用が上手い企業は早速宣伝に使っていた


■単なる自己欲求を満たすためだけではない使いみち
筆者は最初、フリート機能を知ったときに「また人の承認欲求と自己顕示欲を消費するだけの機能が追加されたのか」とうんざりしていました。

実際、フリートを閲覧した人は既読として記録され、「たくさんの人に見てもらえた」という個人の承認欲求を「いいね!」ボタンよりも簡単に満たすための条件が揃っています。

24時間で消えるという仕様も、「着飾った写真を人に見せたいけど長くは残したくない」というワガママな自己顕示欲を都合良く満たしてくれます。

こういった刹那的で短絡的な自己満足のためのツールとしてしか価値がなかったとしたら、とても悲しい思いだったでしょう。

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既読リストからアカウントをフォローしたり相手のタイムラインを追いかけることも可能


しかし実際に使ってみたところ、もっとライトで「どうでもよいこと」のために使ったり、前述のようにビジネス的な活用ができる面白い機能であることに気がついたのです。

例えば、Twitterで「仕事用」、「ゲーム用」、「友人用」など、アカウントを複数使い分けている人も少なくありませんが、そういった使い分けはアカウントを間違えてツイートしてしまいトラブルとなる事故が絶えません。

また、アカウントを使い分けずに普段はイラストなどの投稿で利用している人が「たまには日常的なこともツイートしたいけどフォロワーのタイムラインを汚してしまうのでは」などと気を使ってしまうこともあるようです。

そのような場合にこそ、フリートはとても便利です。通常のツイートでは普段書かないような毛色の違うつぶやきをしたり、普段とはジャンルの違うことを発信したいときにフリートに書く、などです。

ネガティブツイートなども本来は書かないのが一番ですが、残業などで「疲れた……」などとボヤきたくなることもあります。そういった「残らないで欲しいけどちょっとだけ誰かに知ってもらいたい書き込み」にも使えるかもしれません。

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この「どうでも良い感じ」こそ、フリートの真髄かもしれない


■Twitterの利用形態の変化がフリートに存在意義を与えた
Instagramなどとの大きな違いを感じるのは、大元の機能としてのTwitterが存在しているという点です。

マイボイスコムが2020年1月に公開した「Twitterの利用に関するアンケート調査」によれば、2019年12月現在でTwitterを実際に使っている人の割合は3割程度で毎年増加していますが、その内訳を精査してみると、自身による投稿よりも他者による投稿の閲覧やフォローが大きく伸びていることが分かります。

また利用目的を見ても、自身による情報発信ではなく趣味や時事ニュースなどの情報収集が上位を占めており、人々がTwitterにメディアとしての役割を期待していることが分かります。

つまり、現在Twitterを利用している人々にとっては「情報を得るための道具もしくは場所」であり、自身が何かを発信し人々に伝えるための道具としての意味合いは薄まっているのです。

だからこそカジュアルに自分を発信し、一定時間で消えていく気軽なフリートには、これまでのTwitterにはない新しい魅力を感じるのです。

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「自分」を前面に押し出したくはないが最新情報は欲しい。そんな層に受け入れられたTwitter


つぶやいてはタイムラインの中に消えていく揮発的なメッセージ性が面白くて広がったTwitterが、投稿内容のアーカイブや保存の方向ではなく、さらに揮発性の高い時限式投稿機能を追加してきたこと自体に面白さを感じます。

そしてまた、Twitterがギークのオモチャであった時代には自身の表現の場として存在していたはずが、今や人々の情報共有ツールとしての使われ方がメインになりつつあり、それに対する「新たなつぶやきの場」の再構築が必要であったことに気付かされた次第です。

みなさんはフリート機能をどう使いたいでしょうか。それとも一切使いたくないと感じるでしょうか。筆者もまだまだこの機能を使いこなせていませんが、なにか面白いことに使えるのではないかと試行錯誤している最中です。

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筆者がたまにつぶやく「カピバラになりたい」も、今後はフリートのみになるかもしれない


記事執筆:秋吉 健


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