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HTCは海外でこの春から「HTC One」ブランドを大きくアピール |
海外メーカー品ながら“全部入り”の日本専用モデルであり、アイドルグループ「乃木坂46」を利用したプロモーションも話題のau向け「HTC J ISW13HT」の売れ行きが好調だ。KDDIの積極的な販売戦略に支えられている部分もあるだろうが、発売直後から販売ランキングトップ3入りを保っているのは端末にも実力があってのことだろう。
従来のHTC製品よりもスタイリッシュなデザインに加え、音楽やカメラ機能の強化なども見逃せない部分も多い。HTC Jは当初の予想より幅広い層に受け入れられているようで、日本における同社の印象を大きく変えようとしている。
HTCは海外でも2月に発表した新シリーズ「HTC One」を強力にプロモーションしており、企業イメージの変革とブランド力の強化を図っている。HTC Oneシリーズには最上位のX、アルミボディーで機能を抑えたS、デザインに特徴のあるミッドレンジのVと3つのモデルが用意されている。いずれも端末の機能だけではなく、明るいレンズや高音質な音楽機能など使い勝手の面が大きくアピールされている。日本モデルのHTC Jも、製品の特徴からこのHTC Oneシリーズの一員を成すモデルと言えるだろう。
世界的なスマートフォンシフトの流れに乗って、HTCはここ数年業績を右肩上がりに伸ばしてきた。2010年第1四半期の販売台数は約340万台(ガートナー調査、以下同)、それが一年後の2011年同期には約930万台と3倍に伸び、同年第3四半期には約1210万台を記録している。
だがその次期となるクリスマスシーズンには売り上げが伸び悩み、前期比マイナスの約1084万台とここ数期ではじめての減速。iPhone 4Sが登場した影響もあるだろうが、サムスン電子やノキア、ZTEそしてBlackBerryのRIMまでもが前期比プラスの販売数を記録したことを考えると、HTCの業績に急ブレーキがかかった印象は否めない。
スマートフォンに特化しているHTCの強みは、他社よりも高いスペックの製品を中心としたラインナップだった。「ハイエンドスマートフォンといえばHTC」というイメージも今では各国の消費者に広く知れ渡っている。だが昨年あたりからはサムスン電子がハイエンド製品を拡充しており、機能だけでは差別化が難しくなっている。
しかもサムスン電子は上位から下位まで圧倒的な種類のGALAXYシリーズを市場に投入したことから、Androidスマートフォンの代名詞はHTCから「GALAXY」へと移りつつある。すなわちHTCのポジションを脅かしているのは実はiPhoneではなくGALAXYという見方もできる。
HTCは高級ヘッドフォンメーカー、Beats Electronicsの買収やタブレット端末向けの動画配信サービスなど、自社製品にプラスアルファの価値を付与するべく投資を行ってきた。2011年夏に発売した「HTC Sensation XE with Beats Audio」は同社のオーディオ技術を組み込み、またヘッドフォンを付属させた意欲的なモデルであった。
だが「ハードウェアに強い」という印象の同社の製品に、音楽性能という「ソフト面」を強化しても消費者へのアピールは期待したほどの効果は得られなかったようである。

高額で買収したBeats Electronics、その技術やブランドが生かされるのはようやくこれからか
そこでHTCはこれまでの製品イメージを一新することを図り、「HTC One」という新たなブランドを立ち上げた。HTC Oneの各モデルは共通機能としてBeats Electronicsのオーディオ技術と、コンマ数秒でオートフォーカスと撮影が可能な高性能カメラを備えている。特にカメラ機能はF2.0と明るいレンズを採用し、動画撮影中も静止画を連続撮影できるなどコンパクトデジカメを凌ぐ性能だ。
他にも同社独自開発の最新UI「Sense 4.0」を搭載し、Android OSの使い勝手を大きく改善している。すなわちHTC Oneシリーズとはハードウェアスペックを第一に置いているのではなく、「毎日使う、日常生活のツールとしての使いやすさ」を追及した製品なのだ。そしてこの基本性能をベースに、機能やデザインを分けたモデルがX、S、Vの3つの製品というわけである。
各社のスマートフォンが高機能化・高性能化を進める中で、使い勝手というソフト面を強化することは差別化を図る面で有利に働くだろう。特にHTCはハードウェア先行メーカーという印象が強かっただけに、HTC Oneシリーズが成功すれば同社のブランドイメージを大きく変えることも可能だろう。日本におけるHTC Jの動向からも、HTCが大きく変わろうとしている姿は見えているのではないだろうか。
最新の市場レポートによると、HTCの2012年第1四半期は販売数をさらに減らし、770万台と1年前を下回る結果となっている。
だがこれはHTC Oneシリーズのローンチを行い製品の入れ替えを行っている間の数字だ。今後HTC Oneシリーズには複数のモデルが投入されるであろうし、また同シリーズを中心にDesireなど従来モデルの後継機種がラインナップのマトリックスを埋めるように登場するだろう。そして「使いやすいスマートフォンならHTC」というメッセージが消費者に浸透すれば、販売台数は自ずと再上昇するはずだ。今年後半のHTCの新製品は、勝負を掛けた本気モデルがずらりと出てくるだろう。そのいずれにも大きく期待したい。
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だがその次期となるクリスマスシーズンには売り上げが伸び悩み、前期比マイナスの約1084万台とここ数期ではじめての減速。iPhone 4Sが登場した影響もあるだろうが、サムスン電子やノキア、ZTEそしてBlackBerryのRIMまでもが前期比プラスの販売数を記録したことを考えると、HTCの業績に急ブレーキがかかった印象は否めない。
スマートフォンに特化しているHTCの強みは、他社よりも高いスペックの製品を中心としたラインナップだった。「ハイエンドスマートフォンといえばHTC」というイメージも今では各国の消費者に広く知れ渡っている。だが昨年あたりからはサムスン電子がハイエンド製品を拡充しており、機能だけでは差別化が難しくなっている。
しかもサムスン電子は上位から下位まで圧倒的な種類のGALAXYシリーズを市場に投入したことから、Androidスマートフォンの代名詞はHTCから「GALAXY」へと移りつつある。すなわちHTCのポジションを脅かしているのは実はiPhoneではなくGALAXYという見方もできる。
HTCは高級ヘッドフォンメーカー、Beats Electronicsの買収やタブレット端末向けの動画配信サービスなど、自社製品にプラスアルファの価値を付与するべく投資を行ってきた。2011年夏に発売した「HTC Sensation XE with Beats Audio」は同社のオーディオ技術を組み込み、またヘッドフォンを付属させた意欲的なモデルであった。
だが「ハードウェアに強い」という印象の同社の製品に、音楽性能という「ソフト面」を強化しても消費者へのアピールは期待したほどの効果は得られなかったようである。

高額で買収したBeats Electronics、その技術やブランドが生かされるのはようやくこれからか
そこでHTCはこれまでの製品イメージを一新することを図り、「HTC One」という新たなブランドを立ち上げた。HTC Oneの各モデルは共通機能としてBeats Electronicsのオーディオ技術と、コンマ数秒でオートフォーカスと撮影が可能な高性能カメラを備えている。特にカメラ機能はF2.0と明るいレンズを採用し、動画撮影中も静止画を連続撮影できるなどコンパクトデジカメを凌ぐ性能だ。
他にも同社独自開発の最新UI「Sense 4.0」を搭載し、Android OSの使い勝手を大きく改善している。すなわちHTC Oneシリーズとはハードウェアスペックを第一に置いているのではなく、「毎日使う、日常生活のツールとしての使いやすさ」を追及した製品なのだ。そしてこの基本性能をベースに、機能やデザインを分けたモデルがX、S、Vの3つの製品というわけである。
各社のスマートフォンが高機能化・高性能化を進める中で、使い勝手というソフト面を強化することは差別化を図る面で有利に働くだろう。特にHTCはハードウェア先行メーカーという印象が強かっただけに、HTC Oneシリーズが成功すれば同社のブランドイメージを大きく変えることも可能だろう。日本におけるHTC Jの動向からも、HTCが大きく変わろうとしている姿は見えているのではないだろうか。
最新の市場レポートによると、HTCの2012年第1四半期は販売数をさらに減らし、770万台と1年前を下回る結果となっている。
だがこれはHTC Oneシリーズのローンチを行い製品の入れ替えを行っている間の数字だ。今後HTC Oneシリーズには複数のモデルが投入されるであろうし、また同シリーズを中心にDesireなど従来モデルの後継機種がラインナップのマトリックスを埋めるように登場するだろう。そして「使いやすいスマートフォンならHTC」というメッセージが消費者に浸透すれば、販売台数は自ずと再上昇するはずだ。今年後半のHTCの新製品は、勝負を掛けた本気モデルがずらりと出てくるだろう。そのいずれにも大きく期待したい。
記事執筆:山根康宏
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