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仙台市で開催された「電波利用推進セミナー」を紹介!

総務省東北総合通信局が12月2日に宮城県仙台市のホテル法華クラブ仙台ハーモニーホールにて「電波利用推進セミナー2015 ~電波利用で実現する元気で安心な社会~」と題した講演イベントを行いました。

産学官でそれぞれ電波の利用に携わっている3人の講師を招き、さまざまな視点から将来的な電波の利用方法についての講演がありました。当然のことながらスマートフォン(スマホ)を含む携帯電話は電波を利用しているわけですが、その他にもさまざまな電波が生活や研究に利用されています。

今回は3つの講演の中で、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課長田原康生氏の講演で、今後の携帯電話電波利用について中長期的な方針が示されていましたので、その講演を中心に紹介していきたいと思います。

◯電波政策の最新動向
dempa02総務省総合通信基盤局電波部電波政策課長 田原康生氏


dempa03移動通信システムの高度化

田原氏はまず、どの周波数の電波がどのように利用されているのかを語った後、非常に需要の多い電波を利用している移動通信システム、すなわち携帯電話の電波利用について多くの時間を割いて説明しました。

携帯電話はアナログだった第1世代(1G)、デジタルになった第2世代(2G)、第3世代(3G)と進化し、3.9世代として日本では2010年にLTEが登場。そして、第4世代(4G)のLTE-Advancedへと進化してきています。来年の2016年にはNTTドコモ、au、ソフトバンクの大手携帯電話会社3社には各40MHz幅を割り当てられた3.5GHz帯を利用した第5世代(5G)へとつながる高速通信サービスが始まる予定です。

dempa04第4世代移動通信システム(LTE-Advanced)の導入

今回の3.5GHz帯サービスが導入されると、約1Gbpsの高速通信が可能となる予定。

dempa05移動通信システムへの周波数割当ての目標設定

また、トラフィックがここ1年で1.41倍に増加していることもあり、今後公共業務システム等との周波数共用を進め、現在約740MHz幅が携帯電話向けに利用されていますが、東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年までに、無線LAN(Wi-Fi)も含めて約2700MHz幅を確保する見込みとのこと。また、現状利用実績の無い6GHz以上の電波に関しても利用技術の研究開発・国際標準化を進める意向ということです。

dempa06各国において移動通信に使用されている周波数帯

また、昔のように日本だけ独自の周波数を使っているということがないように、諸外国の周波数割当てと協調を図っていく方針です。

その他、無線LANでは5GHz帯の利用促進を図っていく旨を明らかとしました。東京オリンピック・パラリンピックに向けた無線LANアクセスポイントの整備推進などのほか、現在屋内限定となっている5.2~5.3GHz帯の屋外利用や現在別のシステムで利用されている5.4GHz帯、5.8GHz帯の追加割当ての可能性を探っていくとのことです。

dempa07第5世代移動通信システム(5G)が実現する世界

そして、今後導入に向けて本格始動する5Gについての話になりました。5Gは超高速はもちろんのこと、超低遅延で、多数機器の同時接続が可能になるとのことです。

dempa08第5世代移動通信システム(5G)推進ロードマップ

気になるロードマップですが、2017年には実証実験に入り、2020年にはサービス提供したいとの意向を示しています。

その他、60GHz帯を用いた次世代無線LAN導入の話や、海外からの持込み端末の一時的利用(技適マークの話)の話などが携帯電話に関連する話題でした。

全体的に「2020年」がキーワードになっている講演という感じを受けました。東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、携帯電話界も新技術導入や周波数の割当て拡大が加速していきそうです。ぜひ楽しみにしていきたいですね!


◯電波科学による防災・減災の技術
dempa09東北大学東北アジア研究センター佐藤源之教授


dempa10地上レーダー技術を用いた被災地での捜索活動

続いて、東北大学東北アジア研究センター佐藤源之教授による講演では地上レーダー技術を東日本大震災からの復興活動に応用している話でした。携帯電話に関連する内容はありませんでしたが、リモートセンシング技術で地震後の地滑りの様子を調査したり、被災地で遺留品などの捜索活動を行ったりという事例が紹介されました。


◯電波を利用したITSの取り組みと今後の展望
dempa11トヨタ自動車 ITS企画部 ITS開発室長の末木隆氏


dempa12今年10月に商品化されたITS Conect対応車でできること

最後にトヨタ自動車 ITS企画部 ITS開発室長の末木隆氏からは、総務省の田原氏からも少し言及のあったITS技術についての講演がありました。こちらも携帯電話にはほとんど関連しない話題でしたが、渋滞情報など従来から運転者支援のシステムはあるものの、今年10月にトヨタ自動車が商品化したITS Conect対応車では、右折時の衝突防止支援システムが搭載され、右折時対向車の情報が運転者に伝わる形となっています。

さまざまな情報は信号などに設置されるITS専用周波数760MHz帯の電波でやりとりされ、今後はさらに運転者支援のシステムを進化させ、最終的にはいわゆる自動運転を2020年代後半には実現させたいとのことです。

携帯電話以外の電波の話題も多かったですが、電波は生活のあらゆるシーンで利用されていることが分かりました。今後の電波利用技術のさらなる進化に期待したいです。

記事執筆:こば


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