docomoが参画した小学校授業へのICT活用事例をレポート!

NTTドコモでは2020年に向けた新しい教育指針へのICT(Information and Commnication Technology/情報通信技術)活用、また働き方改革へのICT活用などを目的に有識者や教育現場と協力してのICT活用推進に取り組んでいます。

一例として2017年度より「教育の情報化」の有識者・研究者である東北学院大学・稲垣忠教授と協力し、宮城県内の小学校で授業にICTを活用する実践に参画してきました。

この取り組みを紹介する場として2018年5月13日(日)にNTTドコモ東北支社で「富谷市立明石台小学校でのタブレットを用いた実践授業の成果報告会」を開催しています。当日取材しICT活用事例・利用検証に関する話を聞いてきたので、レポートしていきます。

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東北学院大学教授の稲垣忠氏

今回の報告対象である実践授業のフィールドとなったのは富谷市明石台小学校(宮城県)。タブレット端末を授業に取り入れた「反転学習」に取り組むことで、教育現場でのICT活用にトライしてきました。

報告会の参加者のほとんどは自治体や教育現場などで働く教育関係者。参加者数は当初予定の20名から当日までに50名まで拡張され、あらためて関係者内での関心の高さが伺いしれます。

ちなみにNTTドコモでは「携帯安全教室」など特別授業は開催しているものの、通常の授業に組み込む形での参加や協賛は今回が初めて。

今回は協賛となっており「100台のiPad(セルラーモデル。SIMセット済み)」を無償で貸与。生徒数(400名)との不足分をID発行でカバーする“ソフトウェア的な対応”も組み合わせ、個別環境を実現しています。

報告会の内容は大きく「講演」「教育現場からのフィードバックと分析」「ディスカッション」の3パート。冒頭は授業実践に協力していた東北学院大学・稲垣氏の基調講演でスタートしました。

稲垣氏は政府広報のオンラインサイトにて公開中のイメージ動画「Society 5.0」( https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/ )などを紹介しつつ、教育現場においてもこれから「IoT」「人工知能(AI)」「ロボット」がカギになってくること、そこから「教育がこれからどうなっていくか?」を参加者に問いかけます。

「先生(教育者)という存在がそもそも必要な時代なのか?」という参加者からの意見も聞かれる中、稲垣氏は「従来の『教育者中心のスタイル』から『学習者中心のスタイル」に変わっていく』こと、またその実例としてこの後に触れる実践授業が参考になることを伝え話は進んでいきました。

今回の実践授業にもつながるポイントとして取り上げられたのが、現状の「教育者中心のスタイル」では難易度が高い「到達ベースのシステム」。授業で教えたい内容を「児童全員が」「求められる同じレベルまで」理解できるか?というもので、コマ数に制約がある今の学校教育では実現が難しいことのひとつです。

しかし、ICTを活用し「学校の授業でやること」「自宅にて個人でやること」を上手にわけられれば、この点を解決できる可能性は高くなります。このことの実践例として、以降は富谷市立明石台小学校での実践内容報告へと移っていきます。

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1つ目の実例を報告した明石台小学校教諭の阿部太輔氏

報告された実例は2つ。1つ目は明石台小学校4年生の授業「算数・計算のきまり」での取り組みです。反転学習とは「授業から学習が始まる形」ではなく「家庭から学習が始まる形」のこと。従来が授業→家庭の順に学ぶ「復習型」とすれば、反転学習は家庭→授業に学ぶ「予習型」といえます。

1つ目の実例では学習の流れが次のとおりになっていました。

(1)【家庭】学習用の動画をダウンロードし視聴する
(2) 【家庭】ノートをまとめて写真で送付(提出)する
(3) 【家庭】宿題をおこなう
(4) 【学校】事前に集めた提出内容をもとに、家庭学習を振り返る
(5) 【学校】つまづきが見られたポイントの解説、応用問題

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資料の配布・回収などで授業を支援する「ロイロノート・スクール」


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児童の理解度に応じて出題内容を自動で判断するドリル「やるKey」

反転学習にはツールとして資料の配布・回収・作成・整理に株式会社LoiLo(ロイロ)が開発する授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」、宿題など理解を深めるドリルとして凸版印刷株式会社の小学校向けドリル学習サービス「やるKey」も活用。

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前日にタブレットのカメラで撮影し、提出されたノート


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宿題にやるKeyを活用し、正解率が全体的に低かった箇所をフォローする授業が可能に

反転学習実践による教育者目線でのメリットとして阿部氏が語ったのは「翌日の授業をより適した内容でデザインできる」こと。

従来型では宿題の内容を確認できるのは早くても翌日。翌日になりノートを回収してからそれぞれの理解度を把握することになるため、それを踏まえた授業内容のデザインが難しくなります。

しかしICT活用で宿題を前日中に回収できれば、児童の提出内容も時間に余裕を持って確認可能に。こうした効果で「生徒へのフォローも含め、授業内容がデザインしやすくなった」旨を語っていました。

効果測定として実施された「実践前後でのテスト結果」も紹介されましたが、全体的に点数が向上したことに加え、とくに中位郡や下位郡で、正解率が大きく伸びていることが確認できました。

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2つ目の実例を紹介した明石台小学校教諭の齋藤裕直氏

実例の2つ目は明石台小学校6年生「算数・並べ方と組み合わせ方」での取り組み。

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反転学習で学びが効率化。生まれた時間で新たな取り組みが可能に

こちらも反転学習の導入により、授業が「初めて内容を教える場」から「家庭学習の理解度を確認する場」へと変化。授業時間を家庭学習でつまづきが多く見られた箇所のフォローに充てられるようになり、児童の理解度を高めつつ、授業の効率化も実現できたとしています。

効率化の積み重ねでできた時間は「児童自身による解答動画の制作」を含めた応用問題を解く時間に活用。単元で学んだことを用いて児童それぞれがオリジナルの問題を作成。児童間で問題を共有し、解き合うというものですが、この解法の説明にタブレットのカメラを用いての動作制作を組み込んでいました。

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報告会で紹介された児童制作の動画。聞き取りやすく、よくできていた

報告会では実際に児童が制作した解答動画も紹介。齋藤教諭いわく「児童の多くは日常的にネット上の動画配信サービスを視聴している」そうで、確かに見ている人が聞き取りやすい話し方などは慣れた様子。何より説明する児童の様子が楽しそうであったことが印象的でした。

こちらでも効果測定とした事前テスト(プレテスト)と事後テスト(ポストテスト)では全体での正答率が増加。とくに下位郡での正答率が大きく向上していました。

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報告会の最後は参加者間でのディスカッション

2つの実践例や分析に見て取れた「教育現場でのICT活用の効果」をあらためて整理してみると、次のようなことが挙げられます。

・学習者はまわりの目を気にせず、自分のペースで取り組みやすい
・学習者は理解度に応じてデザインされた授業が受けられ、より理解を高められる
・教育者は反転学習が導入しやすく、授業デザインもやりやすくなる
・教育者は家庭学習の途中過程も把握でき、より的確に評価・フォローしやすくなる
・資料の配布や回収など細かな作業を効率化できる

実践内容および報告を聞く限り、有効に活用できさえすれば、ICTは教育現場で「学習者」「教育者」の両方に大きなメリットをもたらす。そうしたことをあらためて理解できる機会となりました。

NTTドコモからも「目的(やりたいこと)を支援するための機能・ツールとして、ドコモではインフラ面でのサポートをおこなっていきたい」との話があり、当日は東北地方の県市町村の教育委員会・教育センサー/学校法人を対象としたプロジェクト「ドコモ教育ICT加速化プロジェクト」の概要発表も。

教育現場へのICT導入に向けた課題を端末貸与などインフラ面でサポートし、地方創生や“新しい時代の教育”に貢献していくとするNTTドコモの取り組みに今後も注目です。





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