ネットラジオの楽しさやメリットについて考えてみた!

8月末、ラジオ配信プラットフォーム(ネットラジオ)の「Radiko」(ラジコ)から、有料会員プラン「ラジコプレミアム」の会員数が100万人を突破したというプレスリリースが届きました。

ネットラジオの人気は意外にも高く、ラジコだけでも月間ユニークユーザー数は約900万人にのぼります。ネットラジオサービスにはほかにも「ラジオクラウド」(TBS系列)や「らじる☆らじる」(NHK系列)など、放送系列やグループごとに多数あり、さらに「音泉」のようにアニメや声優などの番組に特化したサービスもあります。

ストリーミング音楽配信サービスも数多く登場し、各社がしのぎを削る時代にありながら、旧世代的な印象の強いラジオサービスが着実にユーザーを掴み続ける魅力とは一体どこにあるのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はネットラジオの魅力とメリットについて考察します。

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サービスを徐々に拡大しながら100万人の有料会員を集めたRadiko


■「放送」の呪縛から解き放たれたラジオ番組
ラジオ番組の最大の魅力とは、ズバリ「人のトーク力」ではないでしょうか。音楽配信サービスは流行りの曲やお気に入りの楽曲を好きなだけ楽しくことはできても、そこに人のトークはありません(中にはトーク番組を配信するサービスもあるが)。

ラジオDJやゲストの言葉に耳を傾け、快活な会話やちょっとしたこぼれ話を聴いたり、大好きな音楽アーティストや声優のトークに喜んでみたり。ラジオならではの楽しさや楽しみ方は、ほかの媒体ではなかなか味わえないものです。

そんなラジオも「放送」としてはもはや旧時代の遺物と化しつつあります。災害時の情報源や運送業など自動車移動の多い職種の人であればまだまだ需要はありますが、普段の生活でAM/FMラジオを常に聴いている、という人はあまり多くないと思います。

しかしながら、それはラジオがつまらないから衰退したわけでも、ラジオという業態が別の何かに取って代わられたからでもありません。単に「ラジオ放送の受信機がない」という、ただそれだけの理由で聴かなくなってしまった人も多いのではないかと感じるのです。

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カーラジオは今でも利用者が比較的多い


ネットラジオがこれだけの人気を博し、有料会員すらも着実に増やし続けていることも理解できるところです。

基本的には通常のラジオ放送と同じく無料で楽しめる上に、地方局の番組や過去の番組が聴けるオプションを有料化するという発想は非常にシンプルで理解しやすく、そしてとても魅力的です。

故郷から離れて暮らしているけれど故郷の懐かしいラジオ番組が聴きたい。以前楽しんだ番組をもう一度聴きたい。そんな「あの番組をまた聴きたい」というささやかなニーズに、月額400~500円程度のサブスクリプションサービスは見事に合致したのです。

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無料会員でも限定的に聴き逃し配信やアーカイブ聴取を利用可能なサービスも多い


■「聴く」スタイルが人々の生活をほんの少し幸せにする
ほかにも、ネットラジオが人々に好まれる理由はいくつか考えられます。

例えばテレビ番組や動画配信サービスは仕事や勉学のお供には不向きですが、ラジオ番組であればむしろ仕事や勉学のストレスを緩和してくれる素晴らしい相棒になります。

視覚を奪われず、何気ないBGMや環境音として聴き流すのにもラジオ番組はとても適しているのです。そして人々はそういった「聴き流しコンテンツ」に飢えています。

その端的な例がVtuber(Vliver)の人気です。彼らの動画配信は映像作品として楽しめる一方で、単なるトーク番組としての一面も多く持ち合わせています。なかには「雑談配信」として、ファンからのコメントを読みながら他愛もない話をただするだけ、という配信すらあります。そしてそれはとても人気です。

これはまさに、ラジオ放送で言うところの「オールナイトニッポン」や「ラジオ深夜便」の感覚です。どうでもいい話を友人と話しているような、そんなホッとする時間を人々は求めているのです。

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映像主体のYouTuberと違い、Vtuberの配信はリスナーとの会話を楽しむものが意外と多い


そしてラジオ局とその番組制作スタッフは、そういったリスナーとの対話を楽しむような番組作りではどこよりも長けています。人を耳で楽しませ、和んでもらうための番組制作ノウハウは、時代が変わっても生き続けているのです。

むしろ、時間に縛られる「放送」から時間という制約のない「オンラインサービス」となったことで、いつでもどこでも好きな番組を好きな時間に楽しんでもらえるというメリットだけを享受できるようになったとも言えるでしょう。

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ラジオ放送が持つメリットを損なわず、新しい楽しみ方を提案してくれるのがネットラジオだ


■古きを温ね新しきを知る。ネットラジオのススメ
筆者は学生時代、クレジットカードサイズの小さなカードラジオで深夜ラジオを楽しみながら勉強し、社会人になってからは職場や営業車でFMラジオを聴きながら僅かな息抜きとしていました。

そのカーラジオから流れてくる音楽に聴き惚れ、仕事中だというのに営業車のままCDショップへ楽曲を買いに走ったことすらあります。

ネットラジオとオンラインサービスの行き渡った現代であれば、そんな手間も苦労も必要ないでしょう。気になった曲や番組があればお気に入りに登録しておき、休憩時間にiTunesなどで楽曲をダウンロード購入するか、Apple Musicで探せば良いのです。

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ラジコプレミアムの登録者分布。筆者のようなオジサン世代に偏っているかと思いきや、老若男女・地域を問わず広く楽しまれている様子が分かる


ラジオには番組自体の楽しさ以外にも、上記のように音楽や商品の宣伝媒体であるという側面があることも重要なポイントです。

ラジオがオンラインサービスとして広く楽しまれることで、多種多様な音楽アーティストが認知され音楽ジャンルがますます広がっていくことや、そこで宣伝された商品やコンテンツがヒットに繋がることも少なくありません。

単なるストリーミング音楽配信サービスとは違い、経済への幅広い波及効果が期待できる業界でもあるのです。

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ラジオはさまざまな顔を持つからこそ飽きないのかもしれない


筆者は今年、Bluetooth対応ラジカセという懐かしくも新しいガジェットを某氏よりプレゼントしてもらって以来、休日などは敢えてストリーミング音楽配信などではなく、FMラジオでのんびりと過ごす日が増えました。

ハイレゾ音源すら当たり前になった今、わざわざ音質の悪いラジオで音楽を聴く意味などないのかもしれません。そこで会話されている他愛もないDJトークも、別に要らないのかもしれません。

それでも聴き慣れたFMヨコハマのCMジングルが流れてくると、何故かホッとするのです。ラジオとともにあった人生……などと言えば大袈裟になりますが、少なくともそのCMジングルで思い出すものはたくさんあります。

そんなラジオをもっと身近に、もっと便利にしてくれるネットラジオは、「今更ラジオを買うのもなぁ……」と躊躇しているような人にも福音です。スマートフォン(スマホ)さえあれば聴けるのですから。

もしラジオ番組を聴いてみたいと少しでも思ったなら、ぜひネットラジオを試してみてください。懐かしく思い出すものがあったり、若い人であれば新しい世界が見えてくるかもしれません。

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小さなカードラジオはもう要らない。手元のスマホでラジオを楽しもう


記事執筆:秋吉 健


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