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監視社会

秋吉 健のArcaic Singularity:Appleよ、お前もか?Appleが導入を予定しているNeuralHash技術から現代のプライバシー問題を考える【コラム】


AppleのNeuralHash技術について考えてみた!

先日、Appleに関するニュースがIT界隈を騒然とさせました。新しいiPhoneやiPadが発表されたわけではありません。それは「AppleがiOS 15にiPhone内の画像を検閲する機能を導入する」といった内容でした。

ニュースタイトルを見た瞬間にはにわかに信じがたく「どうせセンセーショナルなタイトルでPVを稼ぎたいだけだろう」とライター特有の穿った気持ちで記事を読んでみれば、内容はほぼ上記のままで、Appleが米国内における子どもへの性的虐待などを防止する目的として、iPhoneなどの端末内の児童ポルノ画像を自動検出するAI技術「NeuralHash」を実用化するというものでした。

結論から言えばこれには若干の語弊があり、iPhone内の画像をiCloud上へアップロード(同期)しようとした際にチェック機能が働き、米国の全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)が管理(確認)している児童ポルノ画像などと合致した場合にカウントされ、そのカウントが一定の閾値を越えた場合にApple内部の人間による確認を得た上でアカウントの停止やNCMECへの報告が成される、というものでした(詳細は後述)。

いわゆる「端末内のすべての画像を監視する」といった極端なシステムではなかったとは言え、これまでAppleは個人のプライバシーを最優先する方針を貫いてきただけに、このような手法を取ってきたことはかなりの衝撃でした。

Appleはなぜ多くの人々から非難されるほどに一歩踏み込んだ「検閲」を行うのでしょうか。そしてそれはテクノロジーの使い方として正しいのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はAppleによるNeuralHash技術の実装とプライバシーの問題について考察します。

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秋吉 健のArcaic Singularity:監視社会は果たしてディストピアなのか。IoT技術が支える未来と社会の在り方を考える【コラム】


監視社会は是か非か。IoT技術がもたらす未来とは……。

「フィンチ、どうやらあの坊やは少々厄介事に首を突っ込んでいるようだ。」ジョンは耳に装着した超小型の無線機に触れると小さくそうつぶやき、ターゲットとなった人物が表示された手元のスマートフォン(スマホ)を操作した。するとターゲットが持つスマホとBluetoothペアリングが開始され、会話の内容が盗聴できるようになった――。

これは2011年からアメリカで放映されていたTVドラマシリーズ「パーソン・オブ・インタレスト」の冒頭によくある一幕です。同ドラマでは「マシン」と呼ばれる人工知能システム(AI)がニューヨーク中の防犯カメラ情報を取得して犯罪を「予知」し、犯罪を食い止めようとする主人公たちへその犯罪に関わる人物の「番号」を教える、という流れでストーリーが進みます。

ドラマの紹介をしたい訳ではないのでここでは割愛しますが(とても面白いのでオススメです!)、AIによる監視社会という近未来像を、単なるSFではなく現実社会で起きている問題に絡めながらシナリオ化したという点で、観るものに得も言われぬ不気味さと深い考察を与えてくれたことは間違いありません。

話を現実の日本へ戻しましょう。現在の日本ではIoT(Internet of Things=モノのインターネット)があらゆる産業界の大きなブームとなりつつあります。IoTと言ってもまだまだピンとこない人も多いかと思いますが、早い話が「ありとあらゆるものにセンサーを付けて情報を可視化する」ことです。例えばオフィスビルの利用者をWi-Fiタグや防犯カメラで把握し空調を適切にコントロールすることでビルの管理コストを削減したり、物流倉庫の商品1つ1つにRFタグを取り付けることで管理を効率化することなどが挙げられます。

こういったIoT技術を使った効率化がブームとなる一方で、生活の中にありとあらゆるセンサーが配置されることについて懸念を示す声も少なからずあります。防犯カメラによるプライバシーの侵害などは最も分かりやすい例ですが、例えばネットの利用履歴やGPS情報などのライフログから生活支援を行うようなAIアシスタントの存在すらも、ともすればプライバシー情報の収集行為だと批判されかねません。

果たしてさまざまなセンサーに囲まれたIoT社会はディストピアとしての「監視社会」となってしまうのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はそんなIoT技術の目指す未来や監視社会がもたらすメリットやデメリットについて考察したいと思います。

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