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GoogleがMotorolaを買収へ!

米グーグル(Google)は、15日、通信機器大手のモトローラ(Motorola)の携帯電話部門「モトローラ・モビディティ」を1株当たり45ドルの総額125億ドル(約9600億円)で買収することを発表しています。

グーグルとしても過去最高額の買収で、スマートフォンなどのモバイル向けプラットフォーム「Android」を手がけるグーグルが携帯電話端末の開発・製造する企業を買収したことになります。その目的は、どういったところにあるのでしょうか?現在の携帯電話市場の状況を見ながら、グーグルの狙いを見ていきたいと思います。

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Googleのプレスリリース


モトローラ・モビディティは、モトローラの携帯電話端末部門を今年1月に分社化してできた大手携帯電話メーカーです。米調査会社ガートナーによる昨年2010年の携帯電話端末販売台数で世界7位のシェア2.4%となっています。数年前までは、ノキアに続いて世界2位となっていましたが、ここ最近は、かなり低迷し、Androidを採用し、少し回復傾向も見えたりもしましたが、業績も振るわず、分社化して買収先を探しているという状況でした。

これにグーグルが名乗りを挙げ、買収に至ったということになります。これによって、Androidのエコシステムのバランスが崩れる可能性も示唆されていますが、グーグルCEOのラリー・ペイジ氏は、「両社の協力によってさらなる新しいユーザーエクスペリエンスが創造できる。Androidのエコシステム全体の勢いが加速するだろう。」とコメントしており、これまで通り、Androidがオープンなプラットフォームであり、モトローラ・モビディティの経営がグーグルと分けられるとされています。

その方向性を受けて、モトローラ・モビディティ以外でAndroidを採用している大手携帯電話メーカーのサムスンモバイル、ソニー・エリクソン、HTC、LGエレクトロニクス、ZTEといった企業のコメントがGoogleの公式サイトにて公開されており、概ね今回の買収を歓迎するといった主旨となっています。

また、グーグルに在籍するAndroidの生みの親であるアンディ・ルービン氏も「Androidのオープン性を今後も継続する。」とコメントしています。

では、グーグルは、一体なぜモトローラ・モビディティを買収したのでしょうか?しかも、今回の買収額は、市場価格の時価総額を考えると63%のプレミアムを上乗せしての買収となっています。単に、モトローラ・モビディティを携帯電話メーカーとして再生させるならむしろ安く買う流れになるはずです。

そこに、グーグルの狙い、現在の携帯電話市場、特に、スマートフォン市場における特許訴訟合戦への対策があるのです。

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Nokiaと手を組む、Microsoft


すでに、Androidを採用するHTCやサムスン電子がアップルに訴えられ、HTCが米国でアップルが起こした訴訟で敗訴しているほか、最近では、欧州市場でサムスン電子製Androidタブレット「GALAXY Tab 10.1」の販売差止めの訴訟を起こし、アップルが勝訴(仮判決)していたりします。また、アップル以外にもマイクロソフトやオラクルもAndroidを採用したデバイスを開発・製造するメーカーを槍玉に上げています。

この流れで、今春に経営破綻した大手通信機器メーカーの加ノーテル・ネットワークスが保有していた6000件の特許をグーグルと、マイクロソフトやアップル、オラクルといった連合チームと獲得競争になり、最終的にグーグルが敗れたという経緯があります。

ただでさえ、グーグルが保有する特許が約750件で、アップルの約5000件、マイクロソフトの約1万8000件などと比べると弱かったのは、明らかです。

モトローラ・モビディティを買収することで、同社が保有する約2万4500件(申請中を除くと1万7000件)の特許を手に入れることになります。これらの後ろ盾にし、他の各メーカーの特許と合わせることで、アップルやマイクロソフトとの特許訴訟合戦に備えるというのが最大の目的でしょう。

実際に、グーグル公式ブログでは、「Androidに対する特許紛争が増加しており、モトローラ・モビディティの買収がグーグルの保有する特許を強化し、アップルやマイクロソフトなどからの提訴に対抗するための施策の一環」だといったことが記載されています。

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今秋にiOS 5をリリース予定のApple


グーグルの目的も見え、恐らく、Androidのオープン性が今後も継続されることが確かだと思われるが、それでもなお、グーグルが携帯電話メーカーを保有することは、Androidを採用するメーカーにとって不安要素として残ると思われますし、モトローラ・モビディティとしては、これまで以上に選択肢が狭められそうです。

このままグーグルの元にいても、さらなる売却があったとしても、以前のような世界2位の頃のモトローラの勇姿が見られる可能性が低くなったのかなと思うと少し残念です。

03一方で、モトローラ・モビディティは、家庭用セットトップボックス事業も抱えており、国内では、KDDI向けに「au BOX」を提供していたりしていました。この点については、今回の買収時におけるモトローラ・モビリティCEOのサンジェイ・ジャー氏が「Androidをグーグルとともに推進し、両社の協力で、携帯電話事業と家庭用デジタル事業において革新的なソリューションを提供していくだろう。」とコメントしており、ラリー・ペイジ氏も「家庭用デバイス事業を拡大していく。」とのことなので、スマートデバイスへの期待は高くなるのだろうと思われます。

今後の各社の動向は、さらに注目していく必要がありそうです。

記事執筆:memn0ck


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