スマホ世界シェア7位に食い込んだ中国TCL

いよいよ中国携帯電話企業の台頭が本格化してきた。中国TCLは、グローバル市場でその存在感を高めつつあり、今、その動向に注目が集まっている。

調査会社ガートナーの報告によると、2012年の同社の端末出荷台数は3717万6600台で市場シェアは2.1%となった。シェア上位グループのSamsung、Nokia、Apple、2位グループのZTE、LG、Huaweiの後を追いかける7番手につけており、日本でも知られるメーカーBlackBerryやHTCのポジションを既に抜き去っているのだ。

TCLは2004年にフランスのAlcatelと合弁会社を作り、ヨーロッパでAlcatelブランドで販売されている携帯電話やスマホもTCLが製造している。Alcatelは日本ではあまりなじみがないが、ヨーロッパでは老舗のメーカーであり、ブランド力も高いメーカーだ。

2000年代初頭にNokiaやEricsson、Motorolaが急激に販売数を伸ばしていく中でシェアを落とし、中国企業と合弁するまでに追い込まれてしまったが、今ではヨーロッパ各国でAlcatelの端末を必ず見かけるほど展開されており、TCLの成長と共にそのブランドも復活の兆しを見せている。

002
ヨーロッパではAlcatelブランドとして製品を販売

TCLはこれまで低コストを武器に主に低価格フィーチャーフォンを市場に投入し続けてきた。市場の中心は中国が大半で、Alcatelと合弁後はヨーロッパへもプリペイド向け端末を積極的に投入していた。だが同社もここ数年のスマホブームに乗って、製品ラインナップのスマホシフトを急激に進めたのだ。2011年には総出荷台数の3.2%であったスマホを、2012年には15.3%まで増加させている。スマホラインナップも常時4-5機種を揃え、定期的に新製品も投入している。カラフルなボディーの採用やナノコーティングによる防水モデル、QWERTYキーを備えたモデルなど特徴的な製品も多い。

2012年にはスマートフォンを10機種以上投入したが、2013年は上半期だけで15モデルを発表。販路もアメリカやアジアまで広がっており、その結果、中国市場での販売数は全体の約13%と比率は下がっている。またヨーロッパではキャリアブランドスマホへの進出も2012年から進めている。キャリアブランドの製品はこれまでHuaweiやZTEが市場をほぼ独占していたが、Huaweiは2012年からOEM事業を縮小し自社ブランド製品への本格的な切り替えを開始。そのHuaweiの変わりにTCL/Alcatelの製品がVodafoneやOrangeといったロゴをつけけて各国で販売されるケースが増えているのである。

今年になって新製品攻勢をかける同社が今もっとも注力しているのがハイエンドクラスの製品だ。この5月には世界最薄のAlcatel One Touch Idol Ultra(中国はTCL S850)の販売が開始された。同モデルの厚みは最薄部でわずか6.45mm。ただしここまで薄いとカメラモジュールをツライチで収めるのは難しく、残念ながらカメラ部分は厚みが増してしまっている。この世界最薄モデルの話題は海外でもあまり大きく取り上げられてはいないが、これだけの製品を作る実力を同社にすでに持っているのである。

003
4.7インチモデルのIdol Ultra。カラフルなボディーも同社の特徴だ

004
本体の厚みは6.45mmと世界最薄

TCLはコストパフォーマンスの高い台湾MediaTekのSoCをスマホに採用しており、デュアルSIMカードに対応するモデルも多い。デュアルSIMは新興国や途上国で人気が高く、同社の製品はそれらの市場でも販売数を伸ばしている。そういえば今年2月のMobile World Congress 2013で大きな話題となったFirefox OSスマホの最初の製品の一つ、One Touch FireもAlcatelブランドをまとったTCL製である。TCLが同OS搭載製品の第一モデルを出せるのも、低コストスマホ製造のノウハウに強みを持っているからだろう。
005
発売が待ち遠しいFirefox OSスマホ

また今後利益を伸ばしていくために、利幅の高いハイエンド製品の開発にも力を入れている。先進国の消費者が興味を持つような上位モデルも今年は続々登場する予定だ。前述した世界最薄モデルのほか、この夏には同社初のLTE対応スマホであるAlcatel One Touch Snap LTEや、大型5インチディスプレイとクアッドコアCPUを搭載するAlcatel One Touch Idol Xなどが発売される。これまで量販店やキャリアの店舗でSamsungやLGなどメジャーメーカー製品の隅に目立たず並べられることが多かった同社の製品も、これらのモデルは肩を並べる位置に置かれるようになるだろう。

そして忘れてはならないのは、TCLは携帯電話だけではなくTVや冷蔵庫も手がける総合家電メーカーであることだ。スマートTVとスマホのシームレスな連携や、家電をスマホからコントロールするスマートホームソリューション製品なども今後同社は強化していくだろう。また中国やアジアに多いTCLの家電販売チェーン店の存在も同社スマホの拡販には強力な武器となる。
006
流行のフリップカバーも用意された5インチモデルのIdol Scribe X。付属スタイラスペンで手帳のように書き込みもできる

007
TVでも大手の同社。スマートTVとスマホの連携が今後期待される


TCLグループの副総裁かつTCL通信のCOO、王激揚氏は「2015年までに携帯電話で世界シェア5位に入る」という目標を3月に行われた決算発表会で話したが、グローバルに製品を供給している同社の実力を見るとその数字も実現不可能な数字ではないかもしれない。将来、事業者向けの低価格スマホやFirefox OSスマホが日本市場に投入される日が来る可能性もありうるだろう。スマホ市場に攻勢をかけるTCL/Alcatelの今年の動きは要注目しておきたい。

記事執筆:山根康宏


■関連リンク
エスマックス(S-MAX)
エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
【山根康宏の“世界のモバイル”特集!世界のスマホ事情がすぐわかる】 - S-MAX(エスマックス) - スマートフォンとモバイルを活用するブログメディア - ライブドアブログ
山根康宏オフィシャルサイト - 香港携帯情報局