ブランド名を「Gt」としてLTEサービスを開始!これまでとは打って変わって積極的な広告展開を繰り広げる

台湾の移動体通信事業者である「亞太電信(Asia Pacific Telecom)」は2014年12月24日より4G(LTE方式)による商用サービスを正式に開始した。通称「Foxconn(フォックスコン)」として知られる鴻海科技集団(Hon Hai Technology Group)の傘下となることが決まっている亞太電信はこれまで「A+ World」をブランド名としていたが、LTEサービスの開始と同時にブランド名を「Gt」に変更し、LTEサービスを「Gt 4G」として展開している。Gtには「Good Time」や「Get Together」、「Great Technology」といった意味が込められているという。

また、LTEサービスの開始からわずか3日後の2014年12月27日に台湾桃園国際空港(TPE)で亞太電信のブースを開設し、訪台外国人を対象にプリペイドSIMカードの販売を開始した。プリペイドSIMカードではLTEサービスを利用できるプランも用意されている。

そこで、さっそく台湾に渡航し、亞太電信のプリペイドSIMカードを購入して試してきたので、今回はその模様を紹介する。

◯制限区域でプリペイドSIMを販売
亞太電信のブースは台湾桃園国際空港ターミナル2の国際線制限区域内に設置されており、入国審査前にプリペイドSIMカードを購入することになる。なお、ターミナル1に到着した場合は入国審査前にターミナル2へ移動する必要があり、ターミナル間の移動は2~8分間隔で運行されているスカイトレインを利用する。制限区域内のスカイトレインは乗り継ぎ客の利用を想定しており、乗り継ぎ案内を参照すれば見つけやすいだろう。

ターミナル1に到着した便で預け荷物がある場合、プリペイドSIMカードを購入後にターミナル1へ戻り、ターミナル1の入国審査場を抜けて預け荷物を受け取る必要があるので忘れないようにしたい。LTEサービスを利用できるプリペイドプランは台湾桃園国際空港限定となっており、入国後は制限区域内に戻れず、また市内の亞太電信のショップでは購入できないため注意が必要である。

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台湾桃園国際空港に設置された亞太電信のブース


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亞太電信のブースで配布されていたLTEサービスを利用できるプリペイドプランの案内には空港限定を意味する机場限定と記載されている


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SIMカードのデザインはGtのデザインとなっている



◯4G LTEを利用可能
台湾桃園国際空港における亞太電信のブースではプリペイドプランのみを扱っており、4種類のプランを用意している。プリペイドプランの一覧は下記の通りである。

プラン名有効日数データ通信音声通話販売価格
Gt 4G 6 Day Pass6日無制限利用不可300台湾ドル
Gt 4G 11 Day Pass11日無制限利用不可500台湾ドル
3G 10 Day Pass10日無制限50台湾ドル分248台湾ドル
3G 30 Day Pass30日無制限201台湾ドル分548台湾ドル


データ通信量はすべてのプリペイドプランが無制限である。プリペイドプランのうちGt 4G 6 Day PassとGt 4G 11 Day PassがLTEサービスを利用できるプランで、有効日数の期間内はLTEサービスを無制限に利用できる。ただし、LTEサービスを利用できるプランはデータ通信専用で、音声通話は利用できない。3G 10 Day Passと3G 30 Day Passは音声通話も対応するが、通信方式はCDMA2000方式に限定されるため注意が必要である。

筆者は滞在日数が3日間だったため、今回はGt 4G 6 Day Passを選択した。亞太電信のブースは国際線制限区域内ということで、販売の対象は主に訪台外国人であり、パスポートを提示するだけでスムーズに手続きを進められる。

SIMカードのサイズはminiSIMカード(2FF)、microSIMカード(3FF)、nanoSIMカード(4FF)の全サイズの切り抜きが可能で、SIMカードのサイズを気にする必要はない。購入前にはスタッフがテスト用のSIMカードで動作確認を行うため、通信方式や周波数に疎くても安心して購入できる。また、アクセスポイント(APN)の設定もスタッフが行ってくれる。なお、LTEサービスを利用できるプランのAPNは下記の通りである。

APN名任意の名前(例:gtnet)
APNgtnet
ユーザー名空欄
パスワード空欄
MCC466
MNC05


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亞太電信のブースに掲載されているプリペイドプランの一覧


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SIMカードをよく見ると切れ目が入っており、3種類のサイズに切り抜ける



◯4G LTEの周波数に注意
亞太電信に限ったことではないが、プリペイドSIMカードを利用する際はスマートフォンなどといった利用する端末の通信方式や周波数に注意したい。亞太電信のプリペイドSIMカードでLTEサービスを利用するためには、端末がBand 28の700MHz帯またはBand 3の1.8GHz帯に対応する必要がある。なお、北米などで採用されている700MHz帯はBand 28ではないため注意が必要である。また、Band 28に対応した端末の中にはBand 28の一部の周波数範囲が非対応となっているものが存在しており、その場合は亞太電信のプリペイドSIMカードでBand 28を利用できない可能性がある。


◯国内ローミングで台湾大哥大のネットワークを利用
亞太電信はLTE用の周波数オークションを経てBand 28の10MHz幅を取得しており、鴻海科技集団傘下の國碁電子と2015年6月末までに統合することが決定している。亞太電信と國碁電子の統合は亞太電信を存続会社とするものの、鴻海科技集団が亞太電信の株式を取得して筆頭株主となるため、亞太電信は鴻海科技集団傘下の移動体通信事業者となる予定だ。

これにより、國碁電子は亞太電信とは別会社として周波数オークションに参加しており、Band 8の900MHz帯とBand 28の700MHz帯をそれぞれ10MHz幅ずつ取得したが、周波数オークションの際にカバレッジの面で有利な1GHz未満の周波数は1社あたり最大で25MHz幅と決められており、亞太電信と國碁電子が統合すると1GHz未満の周波数を1社が30MHz幅も保有することになってしまう。

そこで、鴻海科技集団が台湾の他の移動体通信事業者である「台湾大哥大(Taiwan Mobile)」と戦略的提携を締結し、現時点で鴻海科技集団傘下の國碁電子が保有するBand 28の5MHz幅を台湾大哥大に売却することで決まった。

台湾大哥大は周波数オークションでBand 28の15MHz幅とBand 3の10MHz幅を取得していたため、國碁電子からBand 28の5MHz幅を取得することでBand 28の20MHz幅とBand 3の10MHz幅を保有することになる。しかも、國碁電子が売却する周波数範囲は台湾大哥大が保有する周波数範囲と隣接するため、台湾大哥大は連続した20MHz幅を保有することになり、これは台湾大哥大にとっても大きなメリットである。

現時点では亞太電信と國碁電子の統合は完了しておらず、亞太電信はBand 28の10MHz幅で、台湾大哥大はBand 28の15MHz幅とBand 3の5MHz幅でLTEサービスを展開している。なお、Band 3に該当する周波数範囲の一部はGSM方式で使用中であるため、LTEサービスで利用できる帯域幅が限定されている。

戦略的提携の内容は周波数の売却だけではなく、亞太電信が国内ローミングとして台湾大哥大のLTEネットワークおよびW-CDMAネットワークを利用することも含まれている。先述の通り、亞太電信はBand 28のみでLTEサービスを展開しているが、亞太電信のプリペイドSIMカードでLTEサービスを利用するためにはBand 28とBand 3に対応している必要があると案内されている。これは台湾大哥大のネットワークを使用しているためである。LTEエリア外では台湾大哥大が3Gとして展開しているW-CDMAネットワークを利用する。なお、台湾大哥大が2Gとして展開するGSMネットワークは使えない。ローミング設定がOFFの状態でも自動的に台湾大哥大のネットワークに接続されるため、国内ローミングのためにユーザー側で設定することはない。

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通知バーにはGt 4Gと表示されているが、接続先は台湾大哥大と表示されている。端末や項目によって表示名が異なる場合があるが、台湾大哥大と表示されても誤りでない



◯100Mbpsを超える速度も
亞太電信のプリペイドSIMカードでは台湾大哥大のLTEネットワークを利用できるため、15MHz幅のBand 28に接続すれば通信速度は下り最大112.5Mbpsとなる。一方、亞太電信はBand 28の10MHz幅のみであるため、通信速度は下り最大75Mbpsに留まる。そのため、亞太電信のプリペイドSIMカードでは亞太電信のLTEネットワークでは理論的に出せない速度も出せることになる。

台湾大哥大はBand 28をメインとして展開しており、エリアと速度の両面でBand 3に勝る。したがって、亞太電信のプリペイドSIMカードでLTEサービスを利用する場合はBand 28に対応した端末を選ぶ方がより快適に利用できる。

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台湾大哥大のネットワークを利用するため、台湾大哥大のブランドで販売されているTaiwanMobile Amazing X3を主に利用した。TaiwanMobile Amazing X3は鴻海科技集団傘下のFIH Mobile製である


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屋内基地局を設置している亞太電信のショップで通信速度を測定すると下りは100Mbpsを超えた



◯短期滞在のヘビーユーザなら亞太電信がオススメ
台湾大哥大もLTEサービスに対応したプリペイドSIMカードを販売しているが、台湾桃園国際空港のブースでは取り扱っておらず、空港外にある台湾大哥大のショップで購入する必要があり、データ通信容量は無制限ではなく、大容量なデータの送受信を行うとすぐに使い切ってしまう可能性がある。一方で、亞太電信の場合は台湾に到着してすぐにデータ通信量を気にすることなくLTEサービスを使える。ただ、有効日数は台湾大哥大が30日以上に対して、亞太電信は最長でも11日となる。そのため、亞太電信は長期滞在には向かない。

現時点では台湾桃園国際空港から入国する場合に限るが、短期滞在でデータ通信量を気にせずに高速なLTEサービスを利用したければ亞太電信を選ぶ方が適していると言える。

記事執筆:田村和輝


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