子どもとスマホの関係やフィルタリングサービスについて考えてみた!

現代の私たちの生活で、スマートフォン(スマホ)は切っても切れない存在となりました。みなさんは朝起きてから寝るまでに何時間スマホをいじっているでしょうか。中には必要以上に「依存してるなぁ」と感じている人もいるでしょう。

そんな中毒性すらあるスマホですが、子どものいる家庭で最も悩むのが「いつスマホを持たせるべきか」ではないでしょうか。何歳になったらスマホはOKなのか、どのようなルールで持たせるべきなのか、子どもはルールを守ってくれるのか、そもそも親として何を教えれば良いのか……恐らく不安だらけだと思います。

筆者のように常にスマホについて勉強している人間ですら、子どもたちに何歳からスマホを買い与えて良いのかなどは明確に答えることができません。子どもと両親との絆の醸成状況や家庭環境によって、その時期や学ばせるべき内容が千差万別だからです。しかし、それでも指針となるような提案やアドバイスであれば、十分に可能です。

例えば「フィルタリングサービス」(もしくはその機能)です。フィルタリングサービスは、子どもにとって有害であったり、ゾーニングが必要であるコンテンツへのアクセスを制限するだけではなく、SNSなどで不適切なコミュニケーションが行われないよう見守るために存在します。しかし、フィルタリングサービスはなかなか保護者に浸透していないのが現状です。

人々はどの程度フィルタリングサービスについて知っているのでしょうか。また何故その利用が広がらないのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は、お子さんを持つ保護者の不安や悩みを解決すべく、子どもたちとスマホの関係や、子どもをインターネット上の脅威から守るフィルタリングサービスの重要性について解説します。

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子どもとスマホの正しい関係とは

■急速に進むスマホ利用の低年齢化
まずは子どもたちのスマホ所持状況や利用状況について見ていきましょう。

いわゆる「格安SIM」となる携帯電話サービス「イオンモバイル」( http://aeonmobile.jp )を運営する仮想移動体通信事業者(MVNO)のイオンリテールが今月6日に「小・中学生からの初めてのスマホ勉強会」を実施しました。そこで利用された資料によれば、小学生は約5割、中学生では約7割がスマホを所持しているということです。

利用用途では、小・中学生ともに「動画」や「ゲーム」が圧倒的に多く、僅差で「コミュニケーション」が続きます。とくにコミュニケーションでは小・中学生ともにLINEの利用が圧倒的で、中学生や高校生になるに連れ、TwitterやInstagramといった、より外部へと広がるSNSの利用が増えていきます。

小学生のLINE利用率が高い理由については、家族との連絡に利用されていることが推察できますが、当然ながらそればかりではないでしょう。友人との連絡や雑談など、地域コミュニティの延長線としてうまく活用し始めていることが伺えます。

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イオンモバイルのサービス紹介も兼ねた勉強会が行われた


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小学生のスマホ所有率は約40%としているが、グラフを見る限り約50%と言うべきだろう


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TwitterやInstagramに対し、小学生のLINE利用率の高さが際立つ


一方で気になるのは、犯罪に巻き込まれる危険性や、いじめなどの温床とならないかという点です。

スマホを悪用した子どもへの犯罪の多くはSNSを介して行われます。SNS経由での事犯被害児童数は年々増加傾向にあり、2018年には約1800件もの被害が報告されるなど、決して楽観できる状況ではありません。その増加を助長してしまっているのが、フィルタリングサービスおよびその機能の利用率の低さです。

資料によれば、子どもが持つスマホへのフィルタリング利用率は、その所有率やインターネット利用率の急上昇に反するように年々低下しています。これは由々しき事態です。

フィルタリングを施さない理由の第1位が「子どもを信用しているから」という、非常に曖昧な理由である点も大きな問題です。「うちの子に限って」とは、どんな保護者でも考えることなのかもしれません。しかし、スマホによる犯罪は、時に子どもの意思とは関係なく襲いかかります。万が一が起きてからでは遅いのです。

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スマホが普及するに連れ、「みんな犯罪に巻き込まれてないから大丈夫」といったような正常性バイアスによって、その必要性が軽視される傾向にあるのは大問題だ


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子どもを信頼することは大切だ。しかし信頼することと安全を確保することは別である


上記アンケート結果で2番目に多い理由となっている「適切に管理している」というのも、どこまで目が行き届いているのか疑問です。子どもたちは保護者の見ていない場所でもスマホを使い続けています。

それを裏付けるように、上の調査では「適切に管理している」と答えている一方で、別の調査では約6割もの保護者が「管理できていない」とも答えているのです。これは矛盾した調査結果ではありません。管理できていると自信を持って答えられる保護者が圧倒的に少ないことの証左です。

正しく管理できていないことを自覚しているのにフィルタリングサービスは利用していない。子どものスマホ利用について真剣に考えているならば到底あり得ないような状況が、現実に起こっているのです。

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保護者が適切に管理できていない道具を子どもに持たせて良いはずがない


■フィルタリングサービスへの根強い偏見
なぜこのような歪な状況が生まれてしまったのでしょうか。その背景には、保護者(大人)のネットリテラシーやスマホへの知識が十分に醸成されていない背景があるように思われます。

そもそも、子どもが持つスマホ(インターネットへ接続できる端末)へフィルタリングを行うことは、「青少年インターネット環境整備法」(正式名称「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)によって義務付けられています。つまり、子どもを信頼しているからと言ってフィルタリングをしなくて良いというものではないのです。

恐らく、そういった法律があることを知らなかったという人も多くいるでしょう。何故ならば「誰も教えてくれないから」です。キャリアショップや家電量販店のスマホ売り場でスマホを買う段階になれば、店員がフィルタリングの必要性や義務について若干教えてくれるかもしれませんが、保護者側にそれを真摯に聞く姿勢がなければすぐに忘れてしまいます。

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本法律は努力義務であり罰則はないが、その目的とするところを理解し適切に利用することが求められる(法律全文はこちら


また、フィルタリングサービスへの偏見やネガティブイメージが先行していることも、フィルタリングを避けたがる理由の1つかもしれません。

この法律が施行されたのは2008年で、まだiPhone型のスマホは日本に存在しなかった時代です。その後スマホの主流化と所持の低年齢化に合わせて2018年に法改正され、スマホやタブレットについてもフィルタリング機能の義務化が行われました。

2008年当時のフィーチャーフォン向けや、その後のスマホ黎明期に存在したフィルタリング機能は非常に稚拙で、一部のサイトのURLを弾くだけのブラックリストタイプであったり、機能が少なく単純なゾーニングツールでしかないなど、使い勝手の悪いフィルタリングが行われていました。

また、フィルタリングの設定も煩雑で分かりづらく、ネットリテラシーやデバイスへの習熟度が低い保護者に不評だったことも事実です。こういった時代の印象が残っているせいか、未だに「フィルタリングサービスは使いづらい」という印象が拭えないのです。

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内閣府統計資料より。フィルタリングについて「なんとなく知っていた」も含めれば9割以上の保護者が認知しているにも関わらず、その大半は正しく利用できていない(統計資料全文はこちら


しかし、現在のフィルタリングサービスは非常に高度化しており、スマホの一般利用への影響は小さく、利便性は大きく向上しています。

イオンモバイルの勉強会では同社が提供するフィルタリングサービス「イオンモバイル セキュリティPlus」の使いやすさや利便性の良さを重点的に解説していましたが、他社が提供するフィルタリングサービスも十分に使い勝手の良いものが揃っています。

移動体通信事業者(MNO)だけではなく、MVNOであってもフィルタリングサービスはほぼ必ず用意されており、いずれもスマホの使い方に慣れていないユーザーであっても簡単に使えるよう工夫されています。

●主要な通信キャリアが提供するフィルタリングサービス一覧

<MNO>
・NTTドコモ……あんしんフィルター for docomo など
・au……あんしんフィルター for au など
・ソフトバンク……あんしんフィルター など
・楽天モバイル……i-フィルター for マルチデバイス

<MVNO>
・IIJmio……i-フィルター for マルチデバイス
・mineo……安心フィルタリング
・OCNモバイルONE……マイセキュア
・イオンモバイル……イオンモバイル セキュリティPlus
・LINEモバイル……i-フィルター for マルチデバイス

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イオンモバイルは同社が提供するフィルタリングアプリの使いやすさを前面に押し出すことで、他社との差別化に繋げようとしている


■フィルタリングによって親子の正しいコミュニケーションを
以前は小・中学生向けとして、強力なフィルタリング機能やインターネットの利用制限が付いているキッズケータイなどが定着していた時期もありました。しかしその流れはスマホの登場やその普及とともに希薄化し、現在は小学生であっても大人と同じスマホを利用していることも珍しくありません。だからこそ、これまで以上に細心の注意を払ってフィルタリングを行っていく必要があります。

また、フィルタリングサービスはただの「壁」ではないことも覚えておいてほしい点です。多くのフィルタリングサービスやアプリには、緊急連絡機能や検索単語通知機能、SNSキーワード検出機能、位置情報取得機能などがあり、より能動的に犯罪や事故から子どもを守るための機能が多く付随しています。

単なる「監視ツール」ではなく、親子の密な連絡手段やコミュニケーションを取るための補助的な道具として存在していることを知っていただきたいのです。

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子どもへ一方的にスマホを買い与えて終わりにするのではなく、その正しい使い方を親子で一緒に考え、一緒にルールを作っていく姿勢が何よりも大切だ


前述したように、子どもが持つスマホへのフィルタリングは法で定められた努力義務です。努力義務なのだからやらなくても良い、ではなく、「努力義務だからこそ努力してほしい」のです。もっと真剣に子どもと向き合い、親子で真剣にスマホと向き合ってほしいのです。

イオンモバイルのスマホ勉強会の終わり際に、講師の方がこのようなことを話していました。

「スマホは、どの家庭でもいずれはお子さんが必ず持つものです。だからこそ、早くから正しい使い方や正しいコミュニケーションの取り方を学んで欲しいのです」

スマホの使い方やSNSでのコミュニケーションの取り方を学ぶべきは、子どもだけではないかもしれません。もうすぐ入学シーズンとなります。この時期だからこそ、親子で一緒にスマホの正しい使い方について話し合ってみてください。

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子どもの安全と安心のために、何ができるのかを真摯に考えよう


イオンモバイル


記事執筆:秋吉 健


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