スマホが売れなくなった理由について考えてみた!

先週、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクの大手移動体通信事業者(MNO)の2020年4~6月期決算発表が行われました。新型コロナウイルス感染症問題(コロナ禍)の影響が暗く影を落とす厳しい数字が並びましたが、その中でも各社の通信端末の売上および販売台数の陰りの大きさが目を引きました。

例えばKDDIの2020年4~6月期端末販売台数は150万台で、前年同期比では45万台の減少です。これほど大幅な販売台数の減少は筆者としても記憶になく、コロナ禍による営業自粛や消費者心理の冷え込みの厳しさをひしひしと感じます。

一方、先週はもう1つ通信業界で大きなニュースがありました。それはGoogleの新型スマートフォン(スマホ)「Pixel 4a」の発表です。日本でも8月20日からの販売を予定しており、価格はGoogleストアで42,900円(税込)。メインストリームを狙った廉価端末にあたる製品ですが、その性能と価格のバランスの良さから大きな注目を集めています。

コロナ禍によるスマホ販売の低迷と廉価端末。この時流にはどのような関連性があるのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホが売れなくなった背景や人々が廉価端末を求める理由などを考察します。

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Pixel 4aは売れるだろうか


■スマホが売れない真の理由
まずはスマホ(通信端末)が売れなくなった背景について理由を探ってみましょう。一言で「コロナ禍によるもの」と結論付けるのは若干乱暴に感じるところなのが、現在のスマホ業界と消費者の関係です。

直接的な理由としては、コロナ禍による外出自粛や収入の減少、販売店(ケータイショップ)の営業自粛などが挙げられますが、スマホの買い替えの鈍化はそれ以前からすでに始まっていたことでした。大きな理由として、スマホのコモディティ化があります。

スマホが人々にとって当たり前の道具となってから、もう10年近くが経ちます。iPhone 3Gの国内販売時にはソフトバンクショップの前に大行列を作るなど、社会現象とも言えるブームを引き起こしましたが、そういった熱狂的な「お祭り騒ぎ」が落ち着いてからも、すでに5年程度は経っているでしょうか。

スマホは私たちが普段日常の中で利用する分には十分な性能となり、また必要十分な性能の端末が安価に手に入るようにもなりました。性能や機能のダウンサイジングが進み、最新のハイエンド端末でなければ得られない体験価値というものがほとんど無くなったのです。

結果、人々は「今の端末で何の不満もない」という状況となり、壊れてもいないのにスマホを能動的に買い換えるという、ある種の「奇妙な文化」からの脱却を果たしたのです。

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最新の高級ハイエンドスマホに夢見る時代は終わった?


ハイエンドスマホの高額化や販売形態の変化(通信料金との完全分離販売)もまた、そういった流れを加速させました。

5年ほど前まではハイエンドスマホでも7~8万円台から購入できましたが、2017年のiPhone Xあたりから急速に高額化し、10万円超えどころか仕様によっては14~15万円も当たり前という時代となってしまいました。

ハイエンドスマホから人々が興味を失うには十分すぎる高額化です。いくら性能が良く機能も豊富でブランド力も高い製品であったとしても、無い袖は振れません。

そして生まれた流れが、「今使っている端末を壊れるまで使い倒す」、「安価な端末を便利に買い替えていく」という2つの選択肢でした。

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必要十分な性能と圧倒的な低価格を武器に、HUAWEIやOPPOといった中国系企業のスマホが日本で人気となり始めたのもこの頃だ


■販売ラインキングに見る購買の傾向
現在のスマホの販売台数ランキングなどを見ても、廉価端末の人気ぶりはよく見て取れます。

BCNが毎週行っている「スマートフォン週間売れ筋ランキング」では、上位のスマホは全てが比較的安価なエントリー~ミッドレンジスマホで、ブランド内の最上位機種やハイエンドスマホと呼ばれる機種は1機種もありません。

ハイエンドスマホに限って探すなら、7月27日~8月2日の集計では、なんと47位のソニー製「Xperia 1 II」まで1機種もランキングに入っていないのです(次点は50位のApple製「iPhone 11 Pro」)。

「スマホが売れない」という通信キャリアの叫びは、正しく言い換えるのであれば「ハイエンドスマホが売れない」という叫びなのかもしれません。

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ここまで明確にハイエンドスマホが売れないというのもある意味凄い


また、BCNによるランキングを見ても分かるように、人々は単に安価なスマホだけを求めているわけではありません。

安価なりにもブランド力のあるiPhoneシリーズやXperiaシリーズを選んだり、カメラ性能に定評のある中国メーカー製スマホを選んだりと、用途や趣向を反映させた選択が行われていることが分かります。

何も考えず、「ただ安ければ良い」という人も当然いますが、それは主流ではないということです。その象徴たる製品が「iPhone SE 2nd」(第2世代iPhone SE)であり、そしてまた今回発表されたPixel 4aでしょう。

第2世代iPhone SE発表当時、筆者はこの端末について「売れない理由がない」と断言しました。ハイエンドそのままの処理性能、必要十分な機能、圧倒的な低価格、マスクをしていても利用しやすい指紋認証方式(ホームボタン)、SIMロックフリー販売による購入チャネルの豊富さと、多くの面で魅力的な端末だったからです。

結果、市場の反応は予想通りとなりました。先週には仮想移動体通信事業者(MVNO)を運営するmineoが第2世代iPhone SEの取り扱いを開始しましたが、格安の通信料金が売りであるMNVOとの相性も抜群で、今後MVNO各社の主戦力となることは間違いありません。

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通信料金も含め、小中学生のエントリースマホとして最適だろう


■コロナ禍は「買わない理由」の最後のひと押しだった?
コロナ禍によって、人々の生活様式は大きく変化しました。それはスマホの利用シーンや購入理由にも大きな影響を及ぼしています。

「コロナのせいでスマホが売れなくなった」と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、人々がスマホを買い換えないための理由付けとしては、コロナ禍は恐らく最後のひと押し程度のものであったと筆者は考えます。

そもそも、自らの仕事と収入すらも安定しない状況の中で、敢えて壊れてもいないスマホを買い換えようという人はどのくらい居るでしょうか。中学生の息子に新しく買い与える、といった理由でもない限り出費を抑えたい製品カテゴリーでもあり、またそういった理由であれば高級スマホは購入しないでしょう。

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Pixel 4aのオフィシャル画像だが、こういった宣伝用画像ですら小池都知事の「密です」の言葉が頭をよぎるような、そんな時代になってしまった


2020年後半には、新型iPhone(iPhone 12シリーズ?)の発表なども控えています。大型のハイエンドから小型のミッドレンジまで幅広くラインナップしてくるとの噂もありますが、一時期のハイエンド&ハイブランド一辺倒な戦略から若干の変化が見られるのも、こういった世相と時流の変化によるものかもしれません。

皆さんの中に、このコロナ禍にあってスマホの買い替えを検討している人はいらっしゃるでしょうか。もしいらっしゃるのであれば、その理由に強い興味があります。そしてまた、どのようなスマホに買い換える予定なのかも知りたいところです。

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コロナ禍によって人々の生活が変わり、スマホもまた変わろうとしている


記事執筆:秋吉 健


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