来年もスマホアプリ市場が賑わえばいいなあと |
2011年の終わり、皆様いかがお過ごしでしょうか。社会的にも様々なことが起こりすぎた1年でしたが、ことスマートフォン界隈に限定してもいろいろ動きがあった1年だったと感じています。
私は、このブログメディア「S-MAX(エスマックス)」などで記事を書かせていただいておりますが、本業はスマホアプリの開発者ということで、アプリ開発という観点から2011年のスマートフォン(のOS)を振り返ってみたいと思います。
Androidは2.3が主流に
まずスマートフォンOSの一方の雄であるAndroidでは、2010年12月に発表されたAndroid 2.3が、2011年に各社スマートフォンに全面的に採用されていきました。OSとしてはNFCやゲーム対応といった新機能はあるものの、全体に完成度を高めたという印象のほうが強いバージョンアップでした。
開発の観点から見れば「アプリのAndroid 2.3対応」という話になるのですが、2.2から2.3へは(一応)マイナーチェンジということで、細かいところの変更に影響されることはあったものの、全体的には大きな苦労はありませんでした。2011年のAndroidスマートフォンはほとんどが2.3であったことも含めて、開発者としては対応しやすかったのではと感じています。
なお2011年のAndroid OSとしてはタブレット用の3.xが2011年2月にリリースされていますが、こちらについては十分な経験がありませんので割愛させていただきます。
変更点の多かったiPhone / iPadの「iOS 5」
スマートフォンOSもう一方の雄であるiOS(iPhoneやiPadのOS)については、2011年10月に最新版の「iOS 5」がリリースされ、それまでの「iOS 4」系統からの世代交代が行われました。iCloudやiMessage、OSレベルでのTwitter対応、端末単体でのアクティベートなど新機能が多数導入されたほか、開発観点でもメモリの自動管理やユーザインタフェース定義方法の改良など変更箇所が多く、メジャーアップデートにふさわしい内容になっています。
OSが新しくなれば「アプリのiOS 5対応」が当然求められるわけですが、Android 2.3と異なりこちらはメジャーアップデート、変更箇所が多く大変苦労しました。iOS 5の新機能を使わないアプリはそのまま動作すると思いきや、従来から存在するAPIでも(ドキュメントに記載されていないような細かい)変更が行われた結果、OSの挙動変化にアプリ側が対応できない事象が多々ありました。そのような箇所を特定して一つ一つ修正していく作業は大変でしたが、この経験がすなわちノウハウということなのだと思います。
当面はiOS 5とiOS 4の両方(場合によってはiPhone OS 3.xも)を動作対象として開発していく必要があり、Androidで指摘されていたプラットフォームの分断によるデメリットがiOS端末でも出てきています。今まで以上に各OSでのテストをしっかり行なっていく必要がありそうです。
2012年のスマートフォンとタブレットを統べるAndroid 4.0
2011年のAndroidは2.3(と3.x)で安定していた印象ですが、2012年にはこの状況に変化が訪れます。スマートフォン系の2.3とタブレット系の3.xを統合したAndroidの最新バージョン4.0が第1号端末「GALAXY NEXUS」とともに既にリリースされており、2012年にはAndroid 4.0を搭載したスマートフォン・タブレットが多数登場する見込みです。
この新OS登場を受けて「アプリのAndroid 4.0対応」を行う必要があるわけですが、今回はメジャーアップデート、特にスマートフォン向けアプリにとっては一気にOSが2世代新しくなることになるわけで、iOS 5の時以上に苦労は多そうです。Android 4.0ではGALAXY NEXUSのようにハードウェアボタンがない端末と、従来通りハードウェアボタンがある端末が混在し、またAndroid 3.xから引き継がれた画面上部のActionBarや独立したメニューボタン(Action Item)など、ユーザインタフェースの変更点が多いため、アプリ側がそれらをどのように消化してユーザー体験を提供するかがポイントになります。
その一方でAndroid 3.xや2.xの端末をすぐに切り捨てることもできないでしょうから、Android 4.0(ハードウェボタンなし/あり)/3.x/2.xでそれぞれ最適なユーザインタフェースを提供する必要が生じます。各バージョンにどれだけ最適化できるか、アプリベンダーの実力が如実に現れそうな雰囲気です。
がんばれWindows Phone
スマートフォン(やタブレット)のOSはiOSとAndroidが双璧という状態が続いていますが、それ以外のプラットフォームにも動きがあった2011年でした。特にMicrosoftが起死回生を狙ったスマートフォンOS「Windows Phone 7」はそれなりに注目を集め、2011年8月にはアップデート版のWindows Phone 7.5を搭載したKDDIの「IS12T」が市場投入されました。
このIS12T、Windows Phone 7.5を搭載した世界初の端末ということで注目を集めましたが、iPhone/Androidの潮流に抗うほどの勢いを得られず、KDDIがiPhone 4Sを扱うことになってからは完全に影に隠れてしまった印象です。
とはいえ携帯電話端末大手のNokiaは完全にWindows Phoneにコミットしていますし、今後の展開によってはiPhone/Androidに続く第三極もなりうる可能性を秘めています。2012年にこのプラットフォームがどれだけ成長できるのか、個人的には期待しています。
2012年への展望:双璧プラスアルファへの展開に期待
以上、2011年の開発を振り返りながらスマートフォンOSを概観してきました。これらを踏まえて2012年のトレンドを勝手に予想してみます。
まず2012年もiOSとAndroidの双璧体制という大きな流れに変化はないでしょう。ただこの2プラットフォームが「鉄板」になってしまう状況はちょっと面白くないと感じていて、可能であればもう1個くらい勢力が出てきてくれれば、相互影響によるプラットフォームの革新がスピードアップするのかなと。現状最も有望なのはWindows Phoneでしょうが、2011年の時点ではまだ第三極にはなりきれていません。Windows Phoneが2012年に勢力を伸ばせるか、別のプラットフォームが名乗りをあげるのか、状況をウォッチしていきたいところです。
一つ確実に言えることは、どんな状況になっても、開発者はそれに適合するべくスキルのアップデートが必要になるということです。大変といえば大変ですが、常に新しいことを学んでいけるのは開発者の醍醐味と前向きに捉えて、2012年も皆様に良いアプリを届けられるよう精進したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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