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どこでもコピーについてシャープの開発陣にインタビューをした

シャープはソフトバンク向けの夏モデルとして「AQUOS PHONE Xx 106SH」(以下、106SH)を6日、「PANTONE 5 107SH」(以下、107SH)を14日に発売した。

今年2月に発売した「AQUOS PHONE 104SH」(以下、104SH)では、徹底的にユーザビリティを見直し、各機能においてこれまで発売してきたスマートフォンに比べ大幅に満足度が増したというが、どうしても満足度の上がらない機能があったという。

それが、「コピー&ペースト」(以下、コピペ)機能。テキストをコピーして貼り付ける操作のことだ。このコピペ機能は、iOSおよびAndroid問わず現在のスマートフォンにおいて非常に繊細な操作を要することとなっている。

同社はスマートフォンを開発するにあたり、このコピペ操作についてなんとか満足度を向上させることはできないかを考え、106SHと107SHに「どこでもコピー」という機能を搭載した。

直感的に操作することができ、どこでも簡単にテキストのコピーと貼り付けができるこのどこでもコピーについて、同社の開発担当である、通信システム事業本部 グローバル商品開発センター プロダクト企画部の澤近氏、同事業本部 パーソナル通信第二事業部 開発部の石川氏に開発までの経緯や細かな仕様などを聞いてみた。

■どこでもコピーってなに?
まず簡単にどこでもコピーについておさらいしよう。以前、本ブログでも紹介したが、ブラウザ画面やメール画面、ホームやドロワー(アプリ一覧)画面など、どの画面でもテキストコピーができる機能だ。

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仕組みは、画面をキャプチャ(スクリーンショット)し、OCRで文字認識をしてテキスト化する。コピーしたテキストは10件まで保存でき呼び出してペーストできる。

機能のON/OFFが設定でき、デフォルトではOFFとなっている。ONにした状態で、通知メニューのどこでもコピーをタップ、選択したい範囲を指で円を描いて囲むかタップしてすることで範囲の選択を行う。

通知メニューから操作を行うため、通知バーが表示されない、動画、ゲーム画面や、Android標準のギャラリーアプリなどでは利用することができないが、逆に通知バーが表示される全画面表示以外の画面では文字通りどこでもコピーができる。

詳しい操作方法などは以下の記事と動画を参照してほしい。
いとも簡単にテキストのコピー&ペーストができるシャープ製の画期的なアプリ「どこでもコピー」を試す【レポート】


S-MAX:シャープの「どこでもコピー」操作方法



■上がらないコピペ機能の満足度、いったいなぜ?
澤近氏によると「104SHを開発する際に“パフォーマンスの向上”と“使い勝手(UI:ユーザーインタフェース)の向上”という大きく2つのテーマを持って推進した」のだという。

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プロダクト企画部の澤近氏


UIについては、全てのアプリケーションの画面について見直しをかけており、例えば通知エリアや着信の画面、電話帳、など全て1から見直した。その結果、各機能における満足度は向上したのだという。

「キャリア(ソフトバンク)の方でも調査し、満足度はあがっているという結果になった。ただ唯一コピー&ペースト機能が満足度が上がらなかった。104SHでも対策はしていたが、満足度が上がるまでに至らなかった」(澤近氏)という。

そこで何が問題なのかを追跡調査して、たどり着いたのが「コピーする際の範囲選択がし難い」という点だった。

「106SHを開発するにあたりそのコピペ機能についてどうしようかといっていた時に石川が面白いアプリを提案してくれた。それが今回のどこでもコピーです。石川も細かい部分の改善レベルでは満足度が上がらないなということも感じていたようです。そもそも範囲選択をしやすくするために矢印を出してその矢印を移動させようかなどといったアイデアもあったが、選択や移動だけでない部分も提案してくれた」(澤近氏)


■どこでも同じ操作で文字認識したいというのを実現したかった
石川氏は「どこでも同じ操作で何でも文字認識できるというのを実現したかった。どのアプリ上でも文字認識できる機能の実現をしたかった訳です。あわせてAndroidで文字選択コピーがし難いというのもあったので、ユーザーが直感的にわかる操作でグルッと円を描いた範囲の文字を認識させるようにした」という。

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開発部の石川氏


「基本は、簡単に範囲選択→コピーボタンを押してコピーできる。貼り付けも10件までのコピー内容を蓄えるアプリを用意して、いずれか選択して貼り付けができる。そうした一連の操作を簡単に操作できるようにして、より使い勝手向上を目指して開発した」(石川氏)

画面をキャプチャする仕様上、見えていない部分、例えば長いWebサイトや受信メールなどにおいて一気にコピーすることができない。ただし、10件までのコピー内容を保存できるので、画面に見えてない部分もコピーしたい場合は、1画面ずつ移動してコピーしていくことが可能。コピーする際の文字数制限は特にないようで、「バッファーエリアはあるが、一画面に納まる分ならなんとかなる」(石川氏)とのこと。


■使い勝手の追求
スクリーンショット、OCR技術を使ってただコピーしやすくしただけではない。コピーしたテキストを保存して文字入力画面のキーボードから「アプリ連携」をタップして選択できるという貼り付ける際の使い勝手も考えられている。

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マッシュルームアプリとして呼び出せる「コピー履歴SH」


澤近氏は「従来型のケータイではコピー内容を10件から選択できるようになっていたが、Androidになってからは1件のみとなっていたので、それを今回のコピーしやすさと合わせて、どんどんコピーして、好きなところで貼り付けてもらうということにすれば使い勝手は上がるのではないかと思った」という。

開発において苦労した部分は、「やはり範囲選択がどうしてもうまくできなかった。範囲選択の方法も枠を付けたほうがいいんじゃないか?つまむようにしたらいいんじゃないか?など議論した。最終的には範囲を選択するということで“丸で囲む”というのが直感的で分かりやすいのではないかということで落ち着いた」(澤近氏)という。

実は、丸を描いて囲むほかにタッチした部分の行が選択できるようにもなっている。おおまかに範囲選択をして、貼り付ける際に編集するという使い勝手も考えられている。


■起動方法と全ての画面で実行するかどうかのバランス
開発において困難だったのは範囲の選択だけではなかった。コピーを起動させる方法も多くの議論を重ね開発中に変化していった部分だった。

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どこでもコピーの起動は通知エリアからおこなう


「コピーを起動させる方法も通知エリアに落ち着くまでさまざまな議論をした。どこでもコピーを起動させることで、画面を浮遊するようなアイコンを表示させ、それをタップするとコピーの起動ができるような方法も考えていた。起動方法については開発段階で変わっていったポイント」(澤近氏)と話す。

さらに、「我々としては、全ての画面でコピーできるようにしたいという想いがあった。ただ、そうするにはもう少し複雑な操作が必要になってきたり、それに伴なって画面推移も多くなって分かり難くなってしまう。やはり、ニーズとしてはブラウザや受信したメール本文になるので、動画やゲーム画面といった“全画面表示”ではコピーできないが、通知エリアから起動させる形にした。通知エリアが表示できれば、どの画面でも同じ操作でコピーできるというのは実現できた」(澤近氏)という。

加えて実装するタイミングもギリギリだったという。澤近氏は「この機能がモノになったのは106SHの開発の終盤になってから。“このタイミングなんだけど絶対に満足度が上がるから”とソフトバンクに相談したところ“是非入れてほしい”ということになったので開発にGOがでた」という。

そうした経緯もあって、現時点ではソフトバンク向けの夏モデルのみに搭載されている機能だが、同社独自の機能となるため、今後は他キャリア向けにも搭載される可能性はゼロではないようだ。


■現状の反応と今後について
現行のスマートフォンを利用しているユーザーならコピペ操作のし難さは誰もが感じたことはあるだろう。そうした背景もあり、どこでもコピーの反響はよく、社内でも評判が良いという。ただ、デフォルトではOFFになっているため、106SH/107SHを手にしたユーザーがこの機能の存在に気付かないケースも考えられる。

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ソフトバンク向けの夏モデル


澤近氏は「予想以上の反響があるのでデフォルトでONにしてもいいのかなという部分は今後考えていきたい」と話す。

まだまだ改善を施す部分はあるとのことで、「メーカーとしてはあくまで仕組みだけど、ユーザーとしては目の前にあるテキストをいかにコピーしやすいかということになるので今後も使い勝手を追求していきたい。次の進化は石川さんの頭にあるんではないかと思うので、今後また紹介できるようになれば、紹介したいと思います」と語ってくれた。


スマートフォンを初めて持つために検討中のユーザーにとってはあまりピンとこない話かもしれない。しかし、これが持ってみると早い人で数分~数時間のうちにはコピペ操作が従来型のケータイに比べて使い難いことを体験することになる。

機種選びで悩んだ際は、決め手ともなり得るこのどこでもコピー機能は店頭で是非一度試して欲しい。もちろんソフトバンクを検討していないユーザーにとってもどういうものなのか一度体験してほしい。

いずれ同社製のスマートフォンには標準搭載となり、他社も対抗するように似たような機能を実装しはじめ、標準のコピペ機能以外に、メーカー独自の便利なコピペ機能が当たり前のように実装されるかもしれない。そんな想いも抱かせてくれる、このどこでもコピーには大きな期待を持って今後も注目していきたい。



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