イギリスの各キャリアは店舗内にGALAXY S4の専用コーナーを設置するほどの力の入れようだ

NTTドコモがこの春の新製品で導入した「ツートップ戦略」はソニーの「Xperia A SO-04E」、サムスンの「GALAXY S4 SC-04E」の2機種を大きく優遇し、春夏商戦の柱として消費者に大きくアピールするというこれまでにない販売戦略だ。

NTTドコモの加藤社長によれば両機種の7月末までの販売台数はXperia Aが110万台、GALAXY S4が55万台と両者合わせて165万台に達しており、消費者からの評判も高いとのこと。

だが一方では、ツートップ戦略以降もNTTドコモからのMNP流出は減少しておらず、ツートップに選ばれなかったスマホは逆に大幅な販売減になっている。大胆ともいえるツートップ戦略は今のところプラスマイナスではマイナス面が際立ってしまい、ドコモも秋冬の新製品は戦略を大きく変える必要に迫られそうだ。

とはいえ、ツートップに選ばれた2製品は海外でも高い評価を受けてている。このうちサムスンのGALAXY S4は世界各国ほぼすべての通信事業者がイチオシとして販売しており、どの国に行っても街中で多くの広告を見かけるほどだ。イギリスなどでは通信事業者の店舗内にGALAXY S4のみの専用販売ブースを設置。モックアップではなく実際に動作を確認できる実機を複数展示するほか、特徴的なフリップカバーなどのアクセサリも同時に展示している。

GALAXY S4は前機種のGALAXY SIIIからソフト面での進化も大きく、大幅に強化されたカメラ機能や新たに搭載されたヘルス機能なども店頭で実機を操作して体験することができる。このような実体験コーナーは消費者からの評判も良く、GALAXY S4の売り上げアップに大きく貢献している。

またヨーロッパに限らずアジアやアメリカの家電量販店にはサムスンのスマホ・タブレット・デジカメの専用ブースを構える店が増えている。そこでも主役として一番目立つ位置に展示されているのはGALAXY S4だ。単体機能のデモだけではなく、デジカメとの画像転送連携やタブレットとのメディアファイルの同期再生など、GALAXY S4を中心にしたスマホの新しい使い方のデモなども行われている。

130808_y02家電量販店やサムスンストアのディスプレイ。単体展示だけではなく他の機器や周辺機器との連携もデモされている


GALAXY S4はドコモではツートップの片方としてXperia Aと同等の扱いを受けているが、海外ではGALAXY S4を最上位のハイエンド製品として扱っている事業者が多く、ツートップのもう1製品としては他のハイエンド機種をアピールする事業者が多い。これは海外では事業者はあくまでも消費者から高い評判を受けるであろう端末を目玉商品として位置づけており、その下に複数のミッドレンジやエントリー製品を用意することで幅広い消費者ニーズに応えようとしているのだ。

130808_y04各国の事業者の広告でこの夏最も目立っているのはやはりGALAXY S4だ


これに対し日本では季節ごとに事業者が新製品を発売し、それを主力製品として販売する。そのため今回のドコモのツートップのもう1機種であるXperia Aは決してハイエンド機種ではないが、ドコモの販売戦略上は最重要機種となるのである。本来はより高機能で消費者からの評判も高いXperia Zも力を入れて販売すべきだろうが、ドコモはすでにXperia Zの販売は終了する方向であるという。

では海外ではGALAXY S4のほかにどのような製品がツートップ、あるいはスリートップとして選ばれているのだろうか?各国の通信事業者のWebページや広告などを見てみると、この春夏商戦はソニーのXperia ZとHTCのHTC OneをGALAXY S4と合わせてプロモーションしている事業者が多い。いずれも今年上半期大きな話題となっているスマホであり、消費者からの評判も高い製品だ。そして海外の各事業者はこれらツートップ製品をアピールしつつ、ミッドレンジやエントリー製品も豊富に揃えることで幅広い消費者ニーズに応えようとしている。

130808_y03台湾の事業者はツートップやスリートップならぬ「フォートップ」で最新モデルをアピール


一方、Xperia Aは海外ではXperia ZRとして販売されているモデルで、ツートップとして派手な広告展開はされていないものの、ハイエンド機種に手の出ない消費者向けに、お手ごろ感のあるミッドレンジ製品として一定の人気を保っている。

このようにドコモのツートップ製品は海外では日本とは異なる評価、販売方法がとられているが、どちらも消費者からの評判は高い。とはいえドコモのツートップ戦略がドコモ全体としては不調といえる結果を引き起こしているのは、ツートップ以外にも力を入れている海外事業者と、ツートップのみに注力してしまったドコモの販売戦略の差が現れているからかもしれない。果たしてドコモはこの秋冬にどのような戦略を取り、消費者からの評判を勝ち取ろうとするのだろうか?秋冬商戦は非常に興味深いものになりそうだ。

記事執筆:山根康宏


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