USB電流&電圧チェッカーを使って徹底チェック

電気店に立ち並ぶスマートフォンやタブレットなど用のACアダプターやモバイルバッテリー。価格や性能はさまざまですが、性能の差を判断しようとすると仕様の「電圧」とか「電流」、「容量」以外に手がかりがないのが現状ではないでしょうか。

そこで、今回の連載「スマホのちょっと深いとこ」では、ACアダプターやモバイルバッテリーの「電源として機器に電力を供給する能力(どれだけ早く充電できるか)」を明らかにするべく、スマートフォンやタブレットに電力を供給したときの電圧や電流を実際に測定してみて考察しました。仕様として電圧や電流の値が大きなハイスペックな電源は、その期待に応えてくれるのでしょうか。

【電源の性能は「電流」に注目】

スマートフォンやタブレットへの電力供給で一般的になっているUSBにおいては(機器への充電目的で使われる場合)電圧は一定(5V)である一方、電流はスマートフォンで1A、タブレットでは2A程度を想定することが一般的です。そのため「電圧を一定に保ったままどれだけの電流を供給できるか」が、電流値が大きいほど、一般的には早く充電できることになり、電源の能力を測るポイントと言えます(*1)。

*1: 単位時間当たりに供給される電気エネルギー(電力)は電圧×電流で求められます。そのため電圧が一定ならば電流が大きいほうがより多くの電力を供給できます。

【今回の測定条件】

今回測定に使用する電圧電流計は上海問屋で販売されている「USB電流&電圧チェッカー DN-10140」です。電源(ACアダプターやモバイルバッテリー)と機器(スマートフォンやタブレット)の間に挟み込むことで、電力供給中の電圧と電流を表示します。値段が値段(1,299円)なので高精度な測定は期待できませんが、傾向を探るのには十分だと思われます。

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今回使用する電圧電流計は上海問屋で1,299円で購入
powersupply_002
電源と機器の間に挟み込んで使う
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電圧(写真=上)と電流(写真=下)を交互に表示

パッケージに記載されている電圧電流計のスペックは、以下の通りです。

測定項目 測定範囲 誤差
電圧 DC 3V - 7V 0.1V
電流 0 - 3.0A 2%

測定対象とする電源はACアダプター5種とモバイルバッテリー6種。電力を供給する機器はiOSおよびAndroidのタブレット・スマートフォンから1機種ずつ、計4機種(「iPad(第3世代)(以下、iPad 3)」および「Nexus 7(2012)」、「iPhone 5」、「GALAXY SII WiMAX ISW11SC」)を用意しました。機器の電池残量が少ない(10%以下)状態で電源から機器に電力を供給し、そのときの電圧と電流を測定します。

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今回測定するACアダプターとモバイルバッテリー。サイズも性能も様々

【測定結果1:ACアダプターの場合】

今回用意したACアダプターを以下に示します。大まかにいえば供給可能な最大電流が1Aのタイプと2Aのタイプがあります。

No. ACアダプター スペック
電圧 電流
1 iPhone付属充電器 5V 1A
2 iPad付属充電器 5.1V 2.1A
3 Nexus 7付属充電器 5V 2A
4 au 共通ACアダプタ 03 5V 1A
5 PLANEX 充電万能
PL-WUCHG03
5V 2A(2ポート合計)

これらを用いて給電を行った結果を以下に示します。電流については0.5~1Aの項目は黄色、1A超の項目は赤色で表示しています。

[タブレット]

No. ACアダプター 機器
iPad 3 Nexus 7(2012)
iOS 6.1.3 Android 4.3
電圧 電流 電圧 電流
1 iPhone付属充電器 5.04 0.95 5.06 0.45
2 iPad付属充電器 5.04 1.64 5.06 0.45
3 Nexus 7付属充電器 5.02 1.47 5.08 0.83
4 au 共通ACアダプタ 03 4.50 0.99 4.94 0.83
5 PLANEX 充電万能
PL-WUCHG03
5.10 1.71 5.12 0.45

[スマートフォン]

No. ACアダプター 機器
iPhone 5 ISW11SC
iOS 7.0.4 Android 4.0.4
電圧 電流 電圧 電流
1 iPhone付属充電器 5.04 0.99 5.04 0.92
2 iPad付属充電器 5.03 1.00 4.98 0.94
3 Nexus 7付属充電器 5.09 1.00 5.09 0.92
4 au 共通ACアダプタ 03 4.90 0.99 4.93 0.96
5 PLANEX 充電万能
PL-WUCHG03
5.07 0.99 5.11 0.91

iPad 3は、電源の性能を最大限活用する傾向があり、2Aタイプのほうが1Aタイプより明らかに電流が大きくなっています。一方、Nexus 7(2012)は純正の(Nexus 7付属)充電器とau 標準ACアダプタ03で0.8A程度が供給される一方、それ以外では(スペック上1A~2Aが供給可能であるにも関わらず)0.5A以下の電流しか供給されませんでした。

また、iPhone 5とISW11SCでは(2Aタイプの電源を含めて)すべて1A程度の電流となっています。電源側が2Aの電流に対応していても機器側が対応していなければ、電源側のスペックが最大限発揮されないことを意味します。

【測定結果2:モバイルバッテリーの場合】

モバイルバッテリーについても見ていきましょう。今回はリチウムイオン電池を用いた大容量タイプと、単3ニッケル水素電池を使うタイプを用意しました。

No. モバイルバッテリー スペック
電圧 電流 電池種類 容量
1 cheero Power Plus
DANBOARD version
5V 2.1A、1A
(各1ポート)
リチウムイオン
電池
10400mAh
2 NTTドコモ
ポケットチャージャー 02
5V 1.5A リチウムイオン
電池
5000mAh
3 SANYO
KCB-L2
5V 0.5A×2
(2ポート)
リチウムイオン
電池
5000mAh
4 東芝
TNHC-34AS MB
5V 1A 単3ニッケル
水素電池4本
-
5 バード電子
DC-Pod MHC-05
5V 1A 単3ニッケル
水素電池4本
-
6 リンケージ
LSI-02UBAW
5V 0.8A 単3ニッケル
水素4本
-

これらを用いて給電を行った結果を以下に示します。ACアダプターのときと同様に電流の大きさで色分けしています。

[タブレット]

No. モバイルバッテリー 機器
iPad 3 Nexus 7(2012)
iOS 6.1.3 Android 4.3
電圧 電流 電圧 電流
1 cheero Power Plus
DANBOARD version (2.1A)
4.97 1.50 5.09 0.45
cheero Power Plus
DANBOARD version (1A)
4.96 1.44 5.02 0.83
2 NTTドコモ
ポケットチャージャー 02
4.75 1.25 4.84 0.64
3 SANYO
KCB-L2
4.85 0.95 4.97 0.45
4 東芝
TNHC-34AS MB
4.52 0.98 4.87 0.83
5 バード電子
DC-Pod MHC-05
4.87 0.95 5.00 0.45
6 リンケージ
LSI-02UBAW
4.94 0.48 4.92 0.64

[スマートフォン]

No. モバイルバッテリー 機器
iPhone 5 ISW11SC
iOS 7.0.4 Android 4.0.4
電圧 電流 電圧 電流
1 cheero Power Plus
DANBOARD version (2.1A)
5.00 0.98 5.02 0.95
cheero Power Plus
DANBOARD version (1A)
5.01 0.99 5.01 0.96
2 NTTドコモ
ポケットチャージャー 02
4.77 0.98 4.80 0.96
3 SANYO
KCB-L2
4.90 0.99 4.94 0.94
4 東芝
TNHC-34AS MB
4.76 0.88 4.81 0.86
5 バード電子
DC-Pod MHC-05
4.96 0.99 4.96 0.96
6 リンケージ
LSI-02UBAW
4.89 0.49 4.76 0.86

※単3ニッケル水素電池は東芝 IMPULSE(THN-3A, min.2400mAh)を使用

全体的にはモバイルバッテリーのスペックを反映した結果となっていますが、Nexus 7(2012)においては以下のような事象が観測されました。ACアダプターを用いたときの結果を含め、Nexus 7(2012)は電源周りの相性がやや強い印象です。

・cheero Power Plusの「2.1A」より「1A」端子のほうが供給される電流が大きい
・他機器では1A程度の電流を供給しているKCB-L2、MHC-05は、Nexus 7(2012)においてだけ0.5A程度の電流となった

なお、iPad 3への給電においては、LSI-02UBAWの場合「充電していません」表示となりました。ただしこの状態においても、0.5A程度の電流が供給されていました。

iPhone 5とISW11SCについては、一部を除き1A程度の電流となりました。ACアダプターを用いたとき時と同じく、機器側が1Aまでしか受け入れられない状態であると考えられます。

【まとめ:機器との組み合わせによっては電源がオーバースペックになることも】

今回の測定により以下の事象が明らかとなりました。

・供給される電力は電源のスペックだけではなく、機器との組み合わせによって決まるものである
・機器によってはハイパワー電源のフルスペックを発揮できない場合がある

このため、例えば、より高速に充電できることを期待して、タブレット用のACアダプターをスマートフォンに使っても(給電に余裕が出るという安心感以外は)あまり意味がないことになります(*2)。このあたりは相性の要素も大きいため、望んだような充電パフォーマンスが得られない場合は別の機器を組み合わせてみるのもよいでしょう。

*2: もちろんスマートフォンがタブレット用ACアダプターの大電流に対応している場合は別です。

さらに、充電にこだわりたいあなたには、今回検証に使用したような電圧電流計を1つ持っておくことをおすすめします。それほど高価なものでもありませんし、充電関係のトラブルを調べるにはうってつけの一品でしょう。


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