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前代未聞の不具合に大困惑した2日間! |
Apple(アップル)の新型スマートフォン(スマホ)「iPhone 11」シリーズが発売されて2週間ほどが経ちました。その間にiOS 13の不具合修正を主としたパッチアップデートが数回あり、筆者もその度にアップデートしていたのですが、先日のiOS 13.1.2へのアップデートの際、ふと奇妙なことに気がついたのです。
「あれ?楽曲のアートワークがバラバラだ……」
iPhoneの音楽ライブラリには5000曲ほど入れて持ち歩いているのですが、そのアートワーク(アルバムのジャケット画像)が楽曲名と一致していないのです。例えば、MAN WITH A MISSIONのアルバムにGLAYのアートワークが付いてしまっている、そんな状態が何曲もあったのです。
これが悪夢の2日間の始まりでした。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は筆者が遭遇した楽曲ライブラリの不具合とその解決に至るまでのお話です。しばらく筆者のすったもんだにお付き合いください。
■時代の変遷とともにあった音楽
筆者とiPhone、そしてiTunesは、もう10年以上の付き合いになります。かつてはソニーのウォークマンシリーズのヘビーユーザーでしたが、楽曲のデジタル化の流れの中でiPhone 3Gを買ったことがきっかけとなり、以来ずっと音楽はiTunesで管理しています。
iPhoneの音楽アプリで最初に感動したのが、アートワークのカバーフロー表示だったのを今でも鮮明に覚えています。音楽再生中などにiPhoneをランドスケープ表示(横画面表示)にすると自動的にカバーフロー表示となり、まるで中古レコードショップでケースに並べられた大量のレコードを1枚1枚めくりながらアルバムジャケットを眺めるかのように、iPhoneに入れた楽曲のアートワークを指でペラペラとめくりながら眺められるのがとても楽しかったのです。
この楽しさは、筆者がiPhoneに大量の音楽を入れて持ち歩く理由の1つでもありました。
その後、カバーフロー表示もiPhoneのUIが現在のフラットデザイン(の原型)へと大変革されたiOS 7で廃止され、21世紀のスタンダードとなるかと思われたダウンロード購入による販売形式も、サブスクリプションモデルによるストリーミング配信と楽曲のクラウド管理へと移行しつつあります。
iPhoneと音楽の歴史を振り返るだけでも多くの変遷がありますが、その間に致命的な問題をいくつも起こしてきたのもiTunesやiPhone(iOS)でした。
時にはアルバムデータが全てアーティストごとにバラバラにされてしまったり、アートワークが全て消えてしまったり。どういった不具合なのか仕様の変更なのかも分からないまま、「事故」が起こる度にライブラリデータを全て入れ直したり、楽曲1つ1つを手作業で修正したりしてきたのです。
今回の不具合は、そんな大トラブルに匹敵するものとしては4~5年ぶりということになるかもしれません。(※筆者はApple Musicを利用していないため、後述するApple Music関連の不具合には遭遇していない)
■原因究明と解決策探しに疲れ果てた2日間
トラブルの詳細はとても理解しがたいもので、楽曲(プレイリスト)のアートワークがほかの楽曲のものと差し替えられているだけでなく、プレイリストを開いたり閉じたりする度にアートワークがコロコロと入れ替わるのです。
百聞は一見にしかず。言葉で解説するよりも動画を見たほうが早いでしょう。まるで手品か何かのような動作に思わず笑ってしまいました。
iPhone 11 Pro(iOS 13.x)で発生したアートワークシャッフルバグ
画像リンク:https://youtu.be/hQ-xaEuyH_Q
状況の把握だけで半日以上を費やし、どうやらすべてのアルバムで起きているのではなく、プレイリストのみがシャッフル状態になっていることが分かりました。
その後はひたすらPCのiTunesと同期し直しては、修復できない状況の繰り返しです。iTunesへiPhoneを同期する際に音楽の同期を外し、iPhoneに入れていた楽曲データを全て削除してから同期し、再び楽曲データを同期し直すなどの手順も踏みましたが効果なし。何をやってもアートワークはシャッフルされます。
ネット上で同様の事例がないか調べてみたところ、Apple Music(iCloudミュージックライブラリ)サービスを利用していると既存の楽曲ファイルのアートワークがバラバラにシャッフルされたり楽曲そのものが別の楽曲と入れ替えられてしまう事例が大量に出てきたため、こちらも表示しない設定にしてから再度同期を試してみたものの、やはり効果がありません。
※ちなみにこの時、動画ファイルもアートワークがランダムに紐付けされる不具合を起こしていましたが、こちらは「iPhoneから動画ファイルを全削除 → 再同期」で修復できました。
結局iPhoneの復元作業まで行ったものの、それでも修復できず。24時間以上の格闘作業に身も心も疲れ果て、もはや万策尽きたかと不貞寝したあと、目が覚めてふと思い付きます。
「もしかしてプレイリストの同期が良くないのでは?」
iTunesとiPhone、両方のプレイリストを全削除して同期を行ったあと、iPhone上のみでプレイリストを作成してみると……無事シャッフルされることなく表示されました!ようやく解決の糸口が見えてきました。
やはり不眠不休の作業はよくありませんね、アイデアが出てこなくなります。行き詰まったら寝る。これに限ります。
その後、iTunes側にはiPhoneからプレイリストのみを個別にエクスポート&インポートすることで共有も完了。以前は50以上も作成していたプレイリストのすべてを復元(再現)することは時間的にできませんでしたが、それは必要な時に随時作ることにしましょう。
実はこの間、iPhoneの復元作業時にアプリの移行手続きを忘れてワンタイムパスワードのセキュリティトークンが利用できなくなったり、各アプリで再ダウンロードが必要になったりなど、諸々のトラブルもいくつかありましたが、それらも含めて大騒動の2日間となってしまいました。
筆者にとって幸いだったのは、時間の自由がある程度利く自営業者だったという点です。これがもし会社員であったなら、原因究明を行っている時間など全く取れずに泣き寝入りしていたかもしれません。
■音楽を「所有」する時代と「利用」する時代の狭間で
今回のバグの原因は一体何だったのでしょうか。筆者はApple Musicを利用しておらず、iCloudミュージックライブラリ上の楽曲データとの不整合による不具合とはあまり考えられません。考えられるとしたら、端末間データ移行に伴うiTunes上のデータとの不整合でしょうか。
筆者は前機種として利用していたiPhone XSからiPhone 11 Proへ移行する際、iTunesを介した復元作業を行わず、iOS 12.4.x以降で実装された、iPhone同士でのデータ移行機能を利用しました。その後、iOS 13.1などへのアップデートの前にiTunesと同期作業を行ったため、iPhone上の情報とiTunes上の情報とに不整合が起こった可能性があります。
筆者のような症状が起きた例をほかに見ていないため、非常に特殊な不具合であったのだろうと思いますが、大量のデータを端末に入れて持ち歩くことのリスクを久々に垣間見た気分でした。
現在はiCloudでのバックアップが簡易的とは言え非常に便利であるため、自前のPC上のiTunesへバックアップを行っている人は少ないかもしれません。またCDを自分でリッピングして取り込むといったこともすでに旧時代的であり、そういった楽曲管理をせずにすべてApple Musicなどで済ませている人も多いでしょう。
初めからすべてをクラウド上で管理し、それらを「所有」するのではなく「利用」することだけを考える使い方が、現在のモバイルシーンなのかもしれません。所有欲の強い筆者としてはサブスクリプションサービスやクラウドサービスに頼りすぎることに強い抵抗感がありますが、自分の使い方が特殊である点は自覚しています。
みなさんは音楽を「持ち歩きたい」タイプでしょうか。それともラジオのように「聞き流したい」タイプでしょうか。音楽を愛し音楽とともに生きていることを自認する筆者としては、どこまで時代に合わせるべきか悩む日々です。
記事執筆:秋吉 健
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