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メタサーフェス技術で窓ガラスの電波レンズ化が世界初成功! |
NTTドコモとAGC(以下、AGC)は26日、第5世代移動通信方式のさらなる高度化(以下、5G evolution)と第6世代移動通信方式(6G)に向けてメタサーフェス技術によってミリ波帯(28GHz帯)の電波を屋外から屋内に効率的に誘導する「メタサーフェスレンズ」のプロトタイプを開発したと発表しています。
同社では2020年12月18日にドコモR&Dセンタにてメタサーフェスレンズを用いることで窓ガラスを通るミリ波を屋内の特定の場所に集め、屋内での受信電力を向上させる実証実験に世界で初めて成功したということです。
これまでNTTドコモとAGCはミリ波帯の柔軟なエリア構築に向けて透明で景観に影響を与えない透明メタサーフェス技術を検討してきましたが、今回開発したメタサーフェスレンズはNTTドコモのメタサーフェス設計技術とAGCのガラス電波透過構造設計技術・微細加工技術により実現したとのこと。
なお、この実証実験で使用したメタサーフェスレンズは、NTTドコモが2021年2月4日(木)から2月7日(日)までオンラインで開催するのイベント「docomo Open House 2021」で詳しく紹介されるということです。
5G evolutionや6Gでの利用が想定される高い周波数帯の電波は現在使用されているLTEや5GのSub6(6GHz以下の低周波数帯)帯の電波と比較し、直進性が高く、減衰しやすいという特徴があるため、屋外基地局アンテナから発信された電波は建物の窓ガラスに到達するまでに減衰し、さらに減衰した微弱な電波は広がることなく屋内に入り込むため、屋外基地局アンテナによる建物のエリア化は困難となっています。
そうした中で今回、NTTドコモとAGCが開発した28GHz帯向けメタサーフェスレンズはメタサーフェス基板上の小さな素子に複数の形状を持たせ、適切に配置することで窓ガラスを通るミリ波を屋内の特定の場所(以下、焦点)に集めることができるレンズで、窓ガラス全面を通る微弱な電波を焦点に集めることで電力を高めることができます。
そのため、焦点位置にリピーターやリフレクターなどのエリア改善ツールを置くことで屋外の基地局アンテナによる建物内のエリア化が実現できると考えられており、さらにフィルム形状なので屋内側から窓ガラスに貼り付けて屋外基地局アンテナからの電波を屋内に簡単に引き込むことが可能となっているということです。
またこのメタサーフェスレンズはLTEやSub6などの他の周波数帯に影響を与えないように設計されており、他の帯域と並行してミリ波のエリア改善が可能となるとしています。なお、今回使用したメタサーフェスレンズは以下の静的メタサーフェスレンズと動的メタサーフェスレンズとなっています。
<静的メタサーフェスレンズ>
窓ガラスを通るミリ波を1つの焦点に集めるメタサーフェスレンズで、焦点1箇所(焦点1)における受信電力を測定します。
<動的メタサーフェスレンズ>
焦点位置の制御機能を持つメタサーフェスレンズで、単焦点モード(メタサーフェスレンズと可動透明基板が離れた状態)では1つの焦点(焦点2)に、2焦点モード(メタサーフェス基板と可動透明基板が接した状態)では2つの焦点(焦点2および焦点3)にミリ波を集め、焦点2および焦点3における受信電力を測定します。
実証実験ではこれらのメタサーフェスレンズのプロトタイプに対して垂直に電波(28GHz帯)を入射して焦点近傍における受信電力を測定し、メタサーフェスレンズによって窓ガラスを通るミリ波を屋内の焦点に集めることで、屋内での受信電力が向上することを確認し、屋内で複数のリピーターやリフレクターを使うことや、将来は端末の移動に追従することも視野に焦点位置の制御機能も検証し、単焦点から2焦点へ切り替えられることを実証しました。
さらにAGCのガラス電波透過構造設計技術によって遮熱性を損なわずにミリ波が透過するように設計した遮熱機能を持ったガラスとメタサーフェスレンズとを組み合わせることにより、本来は電波を通さない遮熱ガラスでも屋内でのミリ波の受信電力を向上できることを実証しています。実証実験成果は以下のように静的メタサーフェスレンズによる焦点1における受信電力が通常の透過ガラスおよび遮熱ガラスに対して24dB以上向上することを確認しました。
焦点 | フロートガラス | フロートガラス+メタサーフェスレンズ |
焦点1における受信電力 | 0dB | 24dB |
焦点 | フロートガラス+遮熱(透明)金属膜 | フロートガラス+熱(透明)金属膜+電波透過構造 | フロートガラス+熱(透明)金属膜+電波透過構造+メタサーフェスレンズ |
焦点1における受信電力 | -29dB | 約0dB | 約24dB |
さらに動的メタサーフェスレンズにおいては単焦点モードの場合、主に焦点2で受信電力が向上していることを確認し、また2焦点モードでは焦点2および焦点3の両方において受信電力が向上することを確認したとのこと。なお、動的メタサーフェスレンズは従来、電波の透過/反射波方向を制御する際は同一の素子を均一に配列することでメタサーフェスを構成し、素子毎に異なる制御信号を与えることで実施していました。
今回検証した動的メタサーフェスレンズでは4種類の構造の異なる素子を適切に配置することで、全素子に同一の制御信号を与えたとしても焦点位置を切り替えられる(今回は単焦点⇔2焦点の切り替え)ことを実証し、制御が簡単にできることで、大きな面積のメタサーフェスレンズでも焦点を変えることを可能としたということです。
焦点 | 焦点2 | 焦点3 |
単焦点モード | 11dB | 0dB |
2焦点モード | 6dB | 6dB |
記事執筆:memn0ck
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