スマホの端末保証や保険について考えてみた!

筆者が初めてモバイル機器向けの任意保険を取材したのは、2016年に開催されたゲーム展示会「東京ゲームショウ 2016」でした。

当時取材したさくら少額短期保険が提供する「モバイル保険」は、携帯電話(フィーチャーフォン)やスマートフォン(スマホ)だけではなく、ノートパソコン(PC)や携帯ゲーム機、さらにそれらの周辺機器(ヘッドホンなど)まで保険対象としたもので、同一契約で3台まで、年間最大10万円まで修理費用を補償するというものでした。

現在では他社からも数多くのモバイル機器向け保険やスマホ専用保険が登場し、スマホ市場の拡大と定着に合わせて着実にシェアと認知を広げています。スマホを落として壊してしまったり、紛失してしまったりと、毎日使う道具だけに不慮の事故や被害は常にリスクとして存在します。

もちろん、基本としてメーカー補償があるため任意保険への加入を強く勧めるものではありませんが、保険の種類や利用実態などはあらかじめ知っておくと今後の参考になるかもしれません。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はモバイル機器を対象とした保険の利便性やメリットなどを考察します。

as-183-002
スマホに保険は必要?不要?


■スマホの故障経験率と保証・保険利用の温度差
はじめに、スマホの故障や不具合の発生状況などを見てみましょう。

MMD研究所が2021年4月にMysuranceと共同で行った「格安スマホのiPhoneユーザーにおける端末保証と保険に関する調査」によると、スマホの故障および不具合を経験した人の割合は52.6%で、半数以上の人が過去に故障や不具合を経験していました。

その内訳を見てみると、フリーズや動作が遅くなるなどの「端末の再起動で復帰しそうなもの」も多く含まれていますが、「画面が割れた」、「経年劣化以外のバッテリーの不具合・故障が起きた」、「充電ができなくなった」など、事故や不意の故障に近いものがかなりあります。

as-183-003
画面の傷や塗装剥がれ程度であれば我慢もできるが、バッテリー関連の故障は危険度が高い上に結構な割合の人が経験していることに気が付かされる


これを踏まえた上で、通信キャリアやスマホメーカーが提供している端末保証や保険への加入率を見てみると、全体では23.8%の人しか加入していません。

バッテリー関連やタッチパネル関連など、通常利用において致命的な故障に遭遇している人の割合がかなり高めであると感じた一方で、端末保証や保険への加入率の低さが気になります。

端末保証に加入している人の満足度を見てみると、56.4%が「満足している」、「やや満足している」と答えている一方で、「どちらとも言えない」と、曖昧な答えの人が38.8%いるあたりに、実際の故障・不具合発生状況と保険加入の“温度差”の答えがあるように思われます。

この割合は、Appleが提供している端末保証「AppleCare+」でも、ほぼ変わらない数字となっています。

要は、起きてもいない事故のために保険に入ることへの理由付けが弱いのです。故障の際には「修理代高すぎる」とボヤくのが世の常ですが、かといって事前に保険に入ってまでは備えたいとは思わない人がかなりの割合でいるということです。

as-183-004
スマホユーザーの半数以上が故障や不具合を経験していながら、保証は2割程度の人しか入っていない


■軽視されがちな端末保証と保険
これは、スマホの故障や事故が人命に関わるような重大なものではないということが理由の1つとして挙げられるかもしれません。

例えば自動車の場合、その事故や故障は人命に直結します。それは自分の命だけではなく、同乗者や対向車、歩行者など、様々な人々を巻き込む重大な損害が容易に想像できます。そしてその事故や故障によって、莫大な額の経済的損失(医療費や慰謝料、損害賠償など)も十分に想定できるため、人は「クルマに乗るなら任意保険には入れ」と強く勧めるのです。

しかし、スマホの場合は比較の問題とは言え損害が軽微です。故障による修理や交換でもかかる費用は10万円以下がほとんどで、その被害も所有者のみに限定されることがほとんどです。バッテリー故障による発火などであれば周囲を巻き込んだ重大事故にもなりますが、そういった事例は世界規模で年に数件ある程度という非常に稀なケースです。

そう考えた場合、「どうせ自分しか困らないし壊れたら運が悪かったと思って数万円くらい出すさ」と諦めてしまう人が多いことも納得できます。

as-183-005
スマホは毎日使う道具。壊れることだってある


では、端末保証や保険は不要なものなのでしょうか。

少々古いデータになりますが、2017年にMM総研が行った「スマートフォンの修理サービス利用実態調査」によると、スマホの故障経験を持つ人の70.1%は修理をしたと回答しており、「新規の端末を購入」したという人の25.6%と比較しても圧倒的に多数派であることが分かります。

結局、多くの人がスマホの故障の際に修理を行っており、それならば端末保証や保険に入るメリットも十分にあると考えるところです。

as-183-006
どうせ通信キャリアの修理サービスを使うのなら、端末保証へ加入しておくに越したことはない


例えば筆者のように、スマホを毎年買い替えている上に「故障したら買い換えれば良い」と割り切っており、しかも神経質と言われるほど傷1つない状態で使うことに執着しているようなスマホマニアであれば、手厚い端末保証や高額な保険の有用性はかなり薄くなります。

しかしながら、スマホはいつも2年以上使うという人や、しょっちゅう落として画面が傷だらけ、といった人であれば、端末保証や保険の利用を強く勧めたいところです。

as-183-007
筆者がゲームやTwitterで1年酷使したiPhone 11 Pro。スマホを傷1つない状態で丁寧に扱うことに関してはかなり偏執的であると自分でも感じる


■用途や支払い能力に応じた保証・保険の選択が重要
では、端末保証や保険にはどのようなものがあり、どの程度ランニングコストがかかるのでしょうか。

通信キャリアによる端末保証では、各社ともに月額300円台~1000円程度となっており、端末の機種や販売価格によって幅があります。決して安い金額ではありませんが、端末保証の場合データ復旧などのサービスも付帯することが多く、年間3,000円~1万円程度を高いと考えるかは保証内容や端末代金との兼ね合いを見る必要があります。

また、多くの端末補償サービスで利用者による自己負担額が設定されています。月額料金を支払うだけではなく、例えば全損時に最大5万円まで保証しつつ、自己負担額として修理費用の1割程度が別途必要になるなどです。

「結局追加費用がかかるなら高いのではないか」と感じるかもしれませんが、そもそもの修理負担額が大幅に軽減されることを考えると一長一短です。データのバックアップなどを日頃から自分で行いスマホも常に一括で購入している、といった人であれば、利用する価値は相対的に低くなるでしょう。

as-183-008
ソフトバンクの「あんしん保証パックプラス」より。スマホを割賦購入している場合など、簡単に買い換えられない人ほどこういった保証は付けておくほうが安心だ



保険会社による保険は、データ復旧や代替機種の貸与サポートといった細かなサポートサービスが少ない代わりに、月額200円~700円程度で年間10万円までや加入の間通算で20万円までなどの現金保証を受けられるものがほとんどです。

また、自己負担額も0円~3000円程度と比較的安く、中古の端末でも故障していなければ登録OKな場合がほとんどです。通信キャリアによる端末保証は高すぎると感じたり、中古端末でも保険を掛けておきたいと考える場合は、こういった保険会社のサービスを利用するのが便利です。

as-183-011
「モバイル保険」は月額700円と若干高めだが自己負担額がない点や複数台で利用(契約)できるのが特徴


最後にスマホメーカーが用意する端末保証ですが、最も身近で有名なAppleの「AppleCare+」を例に挙げるならば、iPhone向けの「AppleCare+ for iPhone」は月額1,250円と比較的高額で、しかも最長2年間までという期限付きです。

盗難や紛失までカバーしてくれる「AppleCare+盗難紛失プラン」もありますが、こちらは月額1,380円とさらに高額になります。

iPhoneやiPadといったApple製品は比較的高額な製品が多く、万が一のための保証に入っておきたいという人は多いと思いますが、ランニングコストで躊躇する人もいるでしょう。

そんな時は、通信キャリアや保険会社が提供している保証や保険と内容をしっかり比較検討し、自分の使い方や受けたいサポート内容、支払い能力などに見合ったサービスを選択することが大切です。

as-183-009
Mysuranceは自社の保険サービスとAppleCare+の比較表を作り、分かりやすくメリットを提示している


■二度と悲しい思いをしないために
一昔前であれば「携帯電話やスマホに保険なんて大げさな……」と笑い飛ばせたかもしれませんが、日々のSNS利用から電子マネー決済まで、その用途が広範かつ重要性を増している現在、無くせば死活問題とさえ思えるスマホに保険をかけるのも、然程おかしな話ではないと感じるほどです。

スマホを偏執的なまでに丁寧に扱うと豪語している筆者でさえ、不意にスマホを落として壊してしまうことがないとは言い切れません。その「万が一」への安心として、月額200~300円程度の保険に入っておくのは悪い選択肢ではないと考えるところです。

もしみなさんの中で、スマホの修理費用が高くて困った経験や、買ったばかりのスマホを落として傷だらけにしてしまった経験などがある人がいるなら、その時の悲しみを思い出しつつ端末保証や保険の必要性を改めて考えてみるのも良いかもしれません。

as-183-010
スマホは決して安い買い物ではないからこそ


記事執筆:秋吉 健


■関連リンク
エスマックス(S-MAX)
エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
S-MAX - Facebookページ
連載「秋吉 健のArcaic Singularity」記事一覧 - S-MAX