スマホと睡眠不足や睡眠障害について考えてみた!

久しく話題になる作品が少なかったスマートフォン(スマホ)ゲーム界隈に、最近面白いものが登場してきました。「ポケモンスリープ」です。

筆者はポケモン関連作品をあまり遊んだことがないため今回もとくに触れていなかったのですが、「眠っている間にポケモン(の寝顔)を集める」という発想が非常に面白く、そしてスマホ業界で長らく問題視されている「睡眠不足や睡眠障害(睡眠リズム障害)への対策」として非常に効果的である点に注目しました。

とは言え、今回はポケモンスリープを紹介したいわけではありません。このようなアプリが登場した背景には、人々の睡眠不足や睡眠の質の低下があります。なぜ現代の人々は慢性的な睡眠不足に悩まされるようになったのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホと睡眠不足や睡眠障害との関係について考察します。

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スマホによる睡眠不足は何が問題?

■スマホを原因とする睡眠不足と睡眠障害のメカニズム
睡眠不足や睡眠障害の原因はさまざまにありますが、スマホを原因としたものは非常に問題点が多いと考えます。その大きな理由は「光刺激」にあります。

人間は基本的に昼行性動物であるため、日の出とともに起き、日が暮れて暗くなることで睡眠へと至ります。つまり光刺激の減少・減衰が睡眠のトリガーであり、光刺激を抑えることで睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の分泌量が増え、眠りに落ちます。

ところが、スマホを寝る前や布団(ベッド)の中で利用すると、目から非常に強い光刺激を受けることになります。スマホの画面の発光は想像以上に強く、その光刺激によって本来寝るべきタイミングでメラトニンの分泌が抑制されてしまい、これが生化学的な睡眠不足へとつながるのです。

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暗所でスマホだけ光らせて利用するのも、視覚への光刺激を強くする要因の1つになる


スマホによる睡眠不足は生化学的理由だけではありません。

NTTドコモのモバイル社会研究所が7月に公開した「起床後と就寝前のスマホの利用実態」についての調査によると、「就寝前に布団に入りながらスマホを使用する割合」は男女ともに若い世代ほど高く、30代以下の男性では75%以上、30代以下の女性では80%以上もの人が布団の中でスマホを利用していることが分かります。

その利用理由の内訳を見てみると、就寝前では「メール、メッセージのチェック」が28%、「ニュース、天気予報、交通状況の確認」が26%、「動画の視聴」が24%、「SNSのチェック」が24%となっており、その他の用途の2倍以上となっています。

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20代の女性はほぼ全員布団の中でスマホをいじっていると考えて良いほど


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メールやSNSなど、コミュニケーションに関する利用が非常に多い


この調査結果から分かることは、就寝前にコミュニケーション系のアプリなどを多用してしまうために人間関係や仕事のことなどでずっと思考している状態(興奮状態)になってしまい、脳が寝る準備に入れません。

目からは光刺激が大量に入り、脳は何かをずっと考え続けている状態に。これではなかなか眠ることもできず、たとえ眠ることができても睡眠の質が大きく低下します。また、睡眠の質の低下は「朝なかなか起きられない」、「どうしても二度寝してしまう」という症状(概日リズム睡眠障害や起立性調節障害)も引き起こします。

さらに、睡眠の質の低下は疲労回復効果の低下や疲労感の蓄積を生み、記憶力および認知力・思考力の低下や慢性的な倦怠感、さらに昼間の急な眠気にもつながります。最悪の場合、突然睡魔に襲われ意識を失うナルコレプシー(睡眠発作)を引き起こす可能性すらあります。

こういったスマホ由来の睡眠不足や睡眠障害は「スマホ依存症」の症状としても挙げられており、就寝時のスマホ利用が如何に危険であるのかが警告されてきました。

しかしながら、前述の通りほとんどの人々は布団の中でスマホをいじり、スマホ依存と睡眠不足の症状を日々悪化させ続けているのです。

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睡眠障害は学業や仕事に大きな支障をもたらす


■「就寝前はスマホをいじらない」という強い意志と習慣化が大切
では、スマホによる睡眠不足は解消できないのでしょうか。そこにゲーム的なアプローチで解決策を出してきたのがポケモンスリープでした。

ポケモンスリープは、就寝設定を行ったあとは「一切スマホをいじらずに」寝なければなりません。スマホを起動した瞬間に睡眠測定が終了し、その結果によって集められるポケモンの種類などが決まってくるため、よりゲームを充実させるには強制的に「スマホを触らない」という状態を作り出す必要があるのです。

そもそも、ポケモンスリープはゲームとしての側面よりもヘルスケア目的のスリープトラッカーとしての側面が強く前面に押し出されています。

一般的なスリープトラッカーは単に睡眠時に設定して起きたら止める、というだけのものであり、その間に「スマホを触ってはいけない」という強制力がないのが問題でしたが、そこにゲームという強制力をもたらしたことが革命的です。

逆説的に考えるならば、人はそこまで強制しないと就寝の際についついスマホをいじってしまうのです。それだけ精神的に依存しているという証拠です。

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就寝時にスマホをいじらない人であれば、通常のスリープトラッカーで十分だろう


普段「私はスマホ依存じゃない」と思っている人でも、就寝時のスマホの利用方法などを思い出してみてください。布団に入ってからスマホをいじっていないでしょうか。SNSを軽くチェックして寝るつもりが、ついつい20分も30分もSNSを眺めていたりはしないでしょうか。

スマホに限らず、一般に正しい睡眠方法として「就寝の2時間前には光刺激を抑える」というのがあります。例えば寝る直前までテレビで激しいアクション映画を見ていたりすることも睡眠の質を大きく低下させます。

もし就寝前のスマホの使い方で心当たりがあるような方がいましたら、ぜひこの機会にスマホの利用と睡眠不足について一度考えてみてください。少しでも睡眠不足などに悩まされているのなら、改善してみる価値は大いにあります。

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睡眠の質を向上させて、毎日を楽しく元気に


記事執筆:秋吉 健


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