Twitterの各Streams APIの廃止について考えてみた!

以前に本コラムでSNS依存についての話を書いた際、筆者が無類のTwitter廃人であることを少し書きましたが、そんな筆者を悲しませる出来事が今年8月あたりにありそうです。

Twitterは16日、サードパーティーがTwitterクライアントアプリ(以下、アプリ)を開発する際に用いるAPI「Account Activity API」を公開したと発表しました。Account Activity APIはこれまでに用いられてきた「Site Streams API」や「User Streams API」を代替するものとして用意されます。

しかしながら、今まで無料で公開されてきた各Streams APIに対し、Account Activity APIではタイムラインのデータを自動取得する機能が削除された上で、15アカウントまで無料の「サンドボックス」、25~250のアカウントが339ドル~2,899ドルで利用できる「プレミアム」(アカウント数により価格が変動)、251アカウント以上を扱える「エンタープライズ」(価格は案件ごとの交渉)の3つの料金プランが用意される形となっています。

これに伴い、Site Streams APIおよびUser Streams APIは廃止となりますが、その廃止時期については当初6月16日を予定していたものの、変更までの猶予期間の必要性やサードパーティーおよび市場の混乱を避ける名目から4月の時点で延期がアナウンスされており、今回改めて8月16日の廃止が告知されました。

TwitterのAPI変更はユーザーにとってどのようなメリットやデメリットをもたらすのでしょうか。またその変更はTwitterの今後にどう影響してくるのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はTwitterのAPI変更についてさまざまに掘り下げてみたいと思います。

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API変更問題からTwitterの抱える“悩み”が見えてくる……?


■非常にニッチなサードパーティー製アプリ
みなさんはTwitterを閲覧する際にどのようなアプリを使っているでしょうか。今はスマートフォン(スマホ)でもパソコン(Windows PC)でも公式アプリが比較的使いやすくなり、得に何も考えずに公式アプリやWebブラウザー版(公式サイト)を使っている方がほとんどだと思われます。

Twitterによれば、これまでサードパーティー向けに公開していたストリーミングAPI(各Streams API)を利用しているのは「月間アクティブアプリの1%」だとしており、その影響は軽微であるとの認識を示しています。実際筆者もスマホ向けでは「Echofon」や「Janetter」、デスクトップ(パソコン)向けでは「ついっぷる」や「TweetDeck」、「ツイタマ」などさまざまに利用してきましたが、そういったアプリにこだわってまで利用しているユーザーは本当に一握りであろうことは容易に想像ができます。


TwitterによるAPI変更に関する公式ツイート


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Account Activity APIは利用アカウント数によって料金プランが細かく分けられる


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Twitter黎明期から高い評価を維持し続ける老舗アプリ「Echofon」


では、なぜそのような1%程度しかシェアがないサードパーティー製アプリに向けて公開されていた無料のAPIを有料化し、さらに15分間に15回しかタイムライン取得を認めないような「改悪」をする必要があったのでしょうか。

精査してみると、そこにはTwitterの苦しい台所事情が垣間見えてきます。

■黒字化に全力を注ぐTwitterの「決断」
Twitterはサービス開始以来急速にユーザーを増やし、SNS全盛時代を創り上げる立役者となりましたが、その収益性は惨憺たるもので、2013年に上場して以来万年赤字続きで、2017年10月~12月期にようやく黒字化を果たしました。

しかし黒字化とは言ってもその内実は収益が増加したからではなく、主な理由は開発費や販促費の大幅なカットによって経営をスリム化したことによるもので、かなり無茶な“シェイプアップ”による黒字達成だったのです。

それだけに同社にとって収益力向上の妨げになる要因はわずかであっても排除したいというのが本音であり、各Streams APIがその槍玉に上がったことは想像に難くありません。

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Twitterもダイエットをしなければ……


旧来の各Streams APIの問題点は2つあります。1つはサードパーティー製アプリに広告を任意に表示させることができない点です。

サードパーティー製アプリの場合、Twitterが提供している公式プロモーション広告などがタイムラインに流れない場合が多くあります。広告収入を主体としているTwitterにとってこれは死活問題です。これまでの各Streams APIではこれを制御する方法がなく、逆に言えば「広告が表示されない」ことがサードパーティー製アプリの人気の理由の1つにもなっていたほどです(そもそもこれらのAPIが公開された当時、Twitterはタイムラインへの広告表示を行っていなかった)。

しかし、新しいAccount Activity APIではTwitter側が任意に表示させたいコンテンツを配信することが可能となっており、公式アプリ同様に広告表示を行うことも可能となるのです。これであればサードパーティーにどれだけ利用されても利益を圧迫するリスクはかなり軽減されます。

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スマホ向けゲームの広告など、Twitterの収入源が断たれることは赤字転落に直結する


もう1つの問題点は「無料であったこと」です。APIが無料で何が悪いんだ、と思われるかもしれませんが、ユーザーのツイートやWebサイトの更新状況などをリアルタイムに取得し、さらに無限にタイムラインの取得リクエストを送信できるこれまでのAPIの場合、サーバーへの負担もそれなりに大きくなります。公式アプリであればAPIを利用する状況などを細かく制御できますが、サードパーティー向けの場合その制御が効きません。

仮に大量のタイムラインリクエストを送信するアプリに利用されたり、今後大きなシェアを持つサードパーティー製アプリが出てきた時に制御する術がないことは非常に大きなリスクとなります。そのためAccount Activity APIではアカウント数によって細かく価格設定を行い、サーバー負担を減らすのと同時にTwitter側が監視・制御しやすい環境を整えたかったのだと思われます。

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サーバーの維持・管理コストは莫大だ


■そしてサードパーティーは消えていく
以上のことからサードパーティーが被る影響は甚大なものとなります。APIの有料化はもちろん大打撃ですし、それ以上にタイムラインの自動取得ができなくなり、取得リクエストすらも「15分間に15回まで」と制限されたことは何よりも大きな問題です。

タイムラインの自動取得に関しては、スマホ向けのサードパーティー製アプリなどでは電力消費の高さから利用していないものもあり、影響は比較的軽微だと思われますが、リクエスト送信回数の制限は間違いなく致命傷となります。

数字だけを見れば「なんだ、1分に1回はタイムラインを読み込めるじゃないか」と思われるかもしれませんが、最初の1分間に15回タイムラインを更新してしまったらその後14分間は更新されなくなってしまうのです。1分間にたった2回の更新でも7~8分間も更新できない時間が生じてしまいます。そんな不便なアプリをわざわざ使う人が居るでしょうか。少なくとも公式アプリではなく敢えてサードパーティー製にこだわって利用しているような人がそれを容認するとは思えません。

※2018年5月22日1時45分 追記・訂正※
Twitterでは任意によるタイムライン取得を15分間に900回行えるStandard APIが従来からあり、Account Activity API実装後もこのStandard APIに変更がなくこれまで通り利用できる場合は、そのまま利用する、もしくは各Strems APIからStandard APIへ切り替えるなどの変更を行えばタイムラインの自動取得以外の影響は最小限に抑えられるものと思われます。

ただし、Twitter側がAccount Activity APIを有料として既存APIからの切り替えを推奨している状況などから今後Standard APIに変更が加えられないという保障もなく、サードパーティー製アプリへの影響は不確定である点は併記致します。

今回執筆に際し、Account Activity APIでタイムラインの自動取得ができなくなる点をクリティカルな問題点として考えていたため、こちらについての内容を省いてしまい誤解を招く記事となりましたこと、訂正しお詫びいたします。


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複数のアカウントを使い分けている人ほどこの問題は深刻だろう


正直なところ、このAPI変更によってサードパーティー製アプリは死滅すると予想しています。有料アプリの場合APIの有料化についてはなんとか凌げたとしても(それでも単価数百円のアプリでは赤字になる可能性が高い)、タイムラインの取得制限が厳しいクライアントアプリにわざわざ課金するユーザーが今後増えるとは思えません。そして無料でアプリを公開しているサードパーティーに至っては何もメリットがなくなります。

筆者の場合、パソコンではWebブラウザであるFirefoxのアドオンとして「Twitside」というサイドバー型のTwitterクライアントを導入していますが、このアドオンの製作者もまたAPIの変更によって今後使用できなくなる可能性があることを示唆しています。恐らくこういった状況はすべてのサードパーティーで起きていることでしょう。

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「Twitside」製作者のブログに掲載された告知文(サイトはこちら


■健全経営と事業継続のために
仮にサードパーティー製アプリがなくなったとして、Twitterはどの程度のデメリットを被るでしょうか。筆者としてはほとんど影響がないと考えています。

前述したようにTwitter自ら「月間アクティブアプリの1%」と数字を挙げているように、サードパーティー製アプリの利用者は極少数派であり(Twitterアカウントは3億以上あるため実数はそれなりに多いと思われるが)、その1%を切り捨てるデメリットよりもAPIへの変更によるコスト削減や効率化によるメリットのほうが大きいと判断したからに他なりません。

一部では今回のAPI変更によってユーザーのTwitter離れが起こると予測しているメディアもあるようですが、その影響は限定的かつ一時的なものではないでしょうか。現状Twitterに代わるSNSツールがほぼ存在しない点は、Twitterの強気の決断を後押しする要因の1つだと言っても過言ではないはずです。

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なんだかんだ言ってもTwitterより手軽で便利な情報ツールはない


Twitterにプロモーション広告が導入された時も、Twitterが非時系列のピックアップ表示を開始した時も、結局人々は離れることはありませんでした。むしろ広告やピックアップ表示は導入後の評価が概ね高く、その結果がTwitterの黒字化につながっているとも言えます。

筆者のように「仕事中もタイムラインを常に画面の横で流しておきたい!」とか「複数のリストを常に監視していたい!」というような重症のTwitter廃人にしてみれば寂しいことこの上ありませんが、しかしTwitter自体が赤字垂れ流しでサービスを終了してしまっては本末転倒です。ここは潔く公式アプリに切り替えるしかなさそうです。

しかしスマホ向けはともかく、パソコン用の公式アプリはやはりTwitter廃人には機能が物足りないのです。せめてツイートを右クリックしたらWebブラウザー版で開くような操作やオプションメニューがあれば……と考えてしまいます。筆者もこの機会にTwitter廃人を卒業すべきなのかもしれません。

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Twitterがなくなるよりはマシ……そう考えておこう


記事執筆:秋吉 健


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