ブラウザの使い勝手はスマートフォンの価値を大きく左右する |
MicrosoftのスマートフォンOS「Windows Phone 7」には、ブラウザとして同社製の「Internet Explorer」が搭載されています。Webサイト閲覧はスマートフォンの利用目的において非常に大きな割合を占めるだけに、Webブラウザがどの程度「使える」のかはWindows Phone 7端末を検討しているユーザーにとって大いに気になるところでしょう。そこでauスマートフォン「IS12T」を用いて、Windows Phone 7のブラウザの使い勝手をiPhone・Android端末と比較してみました。
勝負の前に:ブラウザ比較の前提条件
本記事のブラウザ比較では、以下の端末を使用しています。
・Windows Phone 7: IS12T (Windows Phone 7.5)
・iPhone: iPhone 4 (iOS 4.3.5)
・Android:Xperia arc (Android 2.3.3)
他と条件をそろえるため、AndroidブラウザのFlashプラグインは無効に設定します。またネットワークに依存したばらつきを抑止するため、各端末は同一のWi-Fiネットワーク(802.11n、上流はフレッツ光ネクスト ファミリー・ハイスピード)に接続した状態で評価を行います。電源はバッテリー駆動(外部電源を接続してない状態)です。
一回戦:Webページをどれだけ正確に表示できる?
基本的に最近のスマートフォンに搭載されたWebブラウザは、PC向けWebページをPCと同じレイアウトで表示する能力を備えています。Windows Phone 7のブラウザもPC向けの「Internet Explorer」を元にしているので、PC向けWebページの表示能力は十分に備えていると言っていいでしょう。
ただそれでもあえて、iPhoneやAndroidのブラウザとの能力差を探るため、「Acid3」と呼ばれるテストを実行してみました。Acid3はThe Web Standards Projectが提供するテストプログラムで、ブラウザのWeb標準への準拠度を100点満点で評価してくれます。
Acid3を各端末で実行した結果は以下の通りです。
・Windows Phone 7(IS12T): 95点
・iPhone(iPhone 4): 100点
・Android(Xperia arc): 97点
iPhoneのブラウザが一番点数が高く、ついでWindows Phone 7、Androidの順となりました。PC版のInternet Explorer 9も同様に95点なので、Windows Phone 7のブラウザはPC版と同一内容という情報はあながち間違っていないのだと思われます。Acid3は標準への準拠を厳密に評価した結果なので、点数が低いから即Webサイトの表示が崩れるということには必ずしもなりませんが、一つの参考値にはなるでしょう。
二回戦:JavaScriptをどれだけ高速に実行できる?
最近のWebサイトにおいては、ページの内容を動的に変更するためにプログラミング言語JavaScriptの重要性が一段と高まっています。特にFlashに対応しないスマートフォンブラウザでは、JavaScriptの性能は生命線と言ってもよいでしょう。そこでJavaScriptの実行性能を「SunSpider」を用いて評価してみます。SunSpiderはiPhoneやAndroidのブラウザのエンジン(中心となるソフトウェア部品)を作っているオープンソースプロジェクト「WebKit」が公開しているベンチマークです。今回は最新版となる0.9.1を実行しました。
SunSpiderを各端末で実行した結果は以下の通りです。msの数字が少ないほうが高速です。
・Windows Phone 7(IS12T): 9447.1ms + / - 3.0%
・iPhone(iPhone 4): 4296.4ms + / - 0.3%
・Android(Xperia arc): 5578.3ms + / - 1.3%
今度はiPhone、Android、Windows Phone 7の順番になりました。iPhoneとWindows Phone 7の間には2倍以上の差がついています。PC上でInternet Explorer 9とSafari、Chromeを同じようにベンチマークしてもこれほど大きな差は発生しないため、IS12Tのベンチマークが振るわなかったのはハードウェアの問題かもしれません。
三回戦:Webページをどれだけ速く読み込める?
ここまではベンチマークを通してWindows Phone 7のブラウザをiPhone・Androidと比較してきましたが、実利用するに当たって一番気になるのは実際のWebページの読み込み速度ではないでしょうか。特にスマートフォンでは、ネットワーク速度が十分速い場合でも、ダウンロードしたページを整形して画面表示するまでの時間が無視できないので、ブラウザによって体感的な速度に差が出てくることが予想されます。
そこで各端末で実在のWebページを読み込んで、ロード開始から終了までの時間を測定してみます。対象とするWebページは日本経済新聞(http://www.nikkei.com)を選択しました。キャッシュの影響を最小限に抑えるため、端末でキャッシュを削除した後で端末を再起動し、一旦別ページ(http://www.itmedia.co.jp)を表示させたあとで対象のページをロードし、ロード開始から終了(プログレスバーが消える)までの時間を測定します。以上の操作を3回繰り返し、平均値をとって測定結果とします。
以上の条件におけるWebページの読み込み時間は以下の通りです。
端末 | 読み込み時間(単位:秒) | |||
1回目 | 2回目 | 3回目 | 平均 | |
IS12T | 14.6 | 12.1 | 13.2 | 13.3 |
iPhone 4 | 12.4 | 11.6 | 9.9 | 11.3 |
Xperia arc | 10.6 | 7.6 | 7.5 | 8.5 |
この環境ではAndroidが一番速く、以下iPhone、Windows Phone 7の順となりました。Windows Phone 7最新版の内蔵ブラウザは高速性が喧伝されていますが、新規にページを読み込むという条件では他ブラウザに対して大きな優位性はないようです。逆に言えば他ブラウザ並みの速度は出ているともいえ、実用上十分なパフォーマンスを有していると考えていいでしょう。
番外編:メジャーサイトのWindows Phone 7での使い勝手は?
さて、ここまでWindows Phone 7のブラウザを評価してきましたが、実際にWindows Phone 7のブラウザを実運用しようとすると「スマートフォン向けページが表示されない」という事象が多く発生します。これはWebサイト側がWindows Phone 7のブラウザ(ユーザーエージェント)をスマートフォンと判定しないために起こります。PC向けWebサイトを支障なく表示できるとはいえ、画面の小さいスマートフォンに最適化されたページの方が便利に使えることも多く、この点でWindows Phone 7のブラウザはiPhone・Androidのそれに遅れをとっていると言わざるを得ません。
この事象はブラウザ自体の性能がどうこうという問題ではなく、Windows Phone 7のInternet Explorerという(スマートフォン向けとしては)マイナーなブラウザに対して、Webサイト側の対応が十分ではないということに本質的な問題があります。Webサイト側としてもWindows Phone 7からのアクセスがある程度見込める状態にならないとWindows Phone 7向けの対応はしづらいでしょう。その意味でこの事象が改善されるかどうかは、Windows Phone 7がスマートフォンとして認知され普及するかどうかにかかっていると言えます。
Webサイト側の対応については普及が先か対応が先かという面はありますが、単純に一ユーザーとしてはWindows Phone 7端末でiPhoneやAndroidと「同じようなWebページ」が見られることを熱望したいところです。
■関連リンク
・エスマックス(S-MAX)
・エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
・Acid3
・SunSpider
でも私はずっとIPHONEを使っているので
やっぱりIPHONEだけで十分ですよ
よく参考になりました
これからまた