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中国ではすでにメジャーメーカーの「OPPO」 |
Samsungの「GALAXYシリーズ」とAppleの「iPhone」がシェアを奪い合っているスマートフォンの市場。だがここ数年は上位10社のシェア合計数は徐々に落ちてきており、「その他メーカー」すなわち中小メーカーのスマートフォンがじわじわと販売数を伸ばしている状況だ。
米調査会社IDCの最新の調査結果を見ると、SamsungとAppleは前年同期比でシェアを微減。一方、Lenovoが4位に食い込んできているほか、ZTEも5位の座を確保するなど、中国勢の勢いと元気が目立っているが、さらにこれらを追いかけているメーカーの中でも頭角を現しているのはHuaweiやTCL、Yoolong/Coolpadなどの中国メーカーだ。
今や中国のメーカーは中国の国内向けに低価格な製品を投入しているだけではなく、ハイエンド製品の開発や国外展開を図るなど世界市場での存在感を高めている。
中でもハイエンドスマートフォンを中心とした製品展開を行っているメーカー「OPPO(Guangdong OPPO Mobile Telecommunications、中国名:広東欧珀移動通信)」は、この夏から海外市場への参入を本格的に始めており、いずれは先進国各国にも販路を広げる予定という。
すでに中国の国内では直営店のみならず家電量販店内でも専用ブースを構えて端末を販売しており、通信事業者でも同社の製品は取扱われている。また、タイなど東南アジアにも進出しているだけでなく、海外スマートフォン販売のオンラインショップとも提携しており、欧米やアジア、日本からも製品の購入が可能だ。今では世界中のスマートフォン愛好者の間では、よく知られるメーカーの一つにまでなっている。
中国製品のイメージと言うと、どうしても「安かろう、悪かろう」という印象が先行してしまうが、OPPOのハイエンドスマートフォンはスペックはもちろんのこと、独自UIなど操作性も優れており、さらには本体の質感も高いなど、大手メーカーと並べても遜色のない製品となっている。たとえばフラッグシップモデルである「OPPO Finde 5」は、海外の大型展示会のQualcommブースにSnapdragon S4チップセット搭載製品のデモとして展示されているなど、Qualcommも認める存在になっているのである。
OPPO Find 5の主なスペックは、1.5GHzクアッドコアCPU、5インチフルHD(1080×1920ドット)ディスプレイ、メイン1300万画素およびフロント190万画素カメラ、NFC、メモリ16GBまたは32GB。通信方式はW-CDMA対応版のほかに、中国国内にはCDMA2000版とTD-SCDMA版(中国独自の3G方式)の3モデルが投入されている。
ちなみにグローバル向けモデルはW-CDMA版となっている。本体サイズは141.8×68.8×8.86mm、重量は165g。OSは発売時Android 4.1(開発コード名:Jelly Bean)で、現在は4.2にバージョンアップされている。本体カラーはブラックとホワイト、そして中国国内では限定5000台でレッドも投入されるなどカラバリ展開も楽しみだ。
外見もスタイリッシュなOPPO Find 5だが、いきなり市場に出てきたわけではない。OPPOは元々はMP3プレーヤーなど音楽再生端末を手がけるAV機器メーカーだった。だがMP3プレーヤーがメモリ価格の下落で汎用品・消耗品化する中OPPOは製品デザインに注力、また、音源チップも高性能なものを搭載することで再生音質にも手を抜かず、その結果同社の製品は中国の若い世代から大きな支持を受けるようになった。
その後、中国の格安携帯電話製造ブームに乗じてフィーチャーフォンへ参入。とはいえ、携帯電話製造ノウハウが少ない同社の製品は当時ウォークマンケータイが人気だったSony Ericssonや、女性に人気の日本の折りたたみスタイルのデザインを真似たものが多く、携帯電話では他社との差別化に苦しみヒット商品は出せなかった。
だが、2008年にスマートフォン市場への参入を開始。2011年にはスライド式のQWERTYキーボードを備え、新しいスマートフォンブランド「Find」をひっさげてハイエンド市場に参入。広告にレオナルド・デュカプリオを使うという思い切った戦略で「OPPO=ハイエンドスマートフォン」のイメージを一気に広めることに成功した。ちなみに広告費用は500万人民元、7億円以上と言う中国スマートフォン市場でも最大のものだったという。
OPPO Findは、スライド形状ということもあり厚さ16.6mm、重量も200gとサイズは大きめであったものの、金属素材を利用した上質な本体と美しいデザインにより大きな話題となった。そしてそれ以降、少数精鋭で高スペックなFindシリーズを中心とした製品展開を進め、その集大成として2012年12月に発表されたのが現在のフラッグシップ製品、Find 5だ。
OPPOのスマートフォンは低価格品よりもミッドレンジ・ハイエンド品が多いことからブランドイメージも高い。またミッドレンジモデルでも、フロントに800万画素カメラを搭載し自分撮りの多い女性をターゲットにしたOPPO U2Sなど、特徴的な製品も開発している。なおカメラについては「N-lenz」シリーズと呼ばれる光学ズームレンズを搭載したモデルも開発中と言われており、カメラ機能に特化したSamsung、Sony、Nokiaなど大手メーカーの製品の強力なライバルにもなりそうだ。
OPPOは、次のフラッグシップモデルとして、Snapdragon 800搭載で2.3GHz駆動の「OPPO Find 7」も開発中と言われている。また、中国でLTEサービスの開始が近いことから、LTE対応製品も積極的に投入する考えとのこと。
このようにハイエンド、ハイスペックの製品が立て続けに出てくるようになれば、海外の消費者だけではなく通信事業者や量販店なども同社に対して興味を高めることは間違いない。すでに欧米各国では製品投入についてのテストなどが行われている模様だが、数年もすればOPPOの名前が世界中で知れ渡るようになる可能性は高い。もちろん日本市場への参入も十二分にありうるだろう。OPPOの今後の新製品は要注目だ。

記事執筆:山根康宏
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