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北朝鮮・平壌順安国際空港の到着ロビー兼出発ロビー。税関を抜けてすぐの場所にkoryolinkのブースが設けられている |
謎に包まれた「朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)」の携帯電話事情を数回に渡って紹介している。北朝鮮では長らく外国人による携帯電話の持ち込みが禁止されていたが、2013年より外国人による携帯電話の持ち込みが解禁された。この時に、北朝鮮の携帯電話業界は大きな変化を迎えた。
そこで、前回は現在、移動体通信サービスを唯一行っている「CHEO Technology JV Company」(ブランド名としては「koryolink」)やこれまでの北朝鮮における移動体通信サービス歴史を紹介したが、今回は携帯電話の持ち込みの解禁に至った背景などを紹介する。
謎多き「北朝鮮」の最新携帯電話事情を紹介!外国人の携帯電話持ち込み解禁と同時にプリペイドSIMの販売を開始
謎に包まれた「朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)」の携帯電話事情を数回に渡って紹介している。北朝鮮では長らく外国人による携帯電話の持ち込みが禁止されていたが、2013年より外国人による携帯電話の持ち込みが解禁された。この時に、北朝鮮の携帯電話業界は大きな変化を迎えた。
そこで、前回は現在、移動体通信サービスを唯一行っている「CHEO Technology JV Company」(ブランド名としては「koryolink」)やこれまでの北朝鮮における移動体通信サービス歴史を紹介したが、今回は携帯電話の持ち込みの解禁に至った背景などを紹介する。
◯外国人による携帯電話の持ち込みを解禁
北朝鮮には旅行などさまざまな目的で外国人が訪問することは可能であるが、持ち込みが可能な製品は制限されている。一部のカメラや韓国製品など、北朝鮮に持ち込みが制限される製品は少なくなかったが、携帯電話も北朝鮮への持ち込みが制限されている製品のひとつであった。
しかし、2013年1月7日より観光などで訪問する一般の外国人に対して、携帯電話の持ち込みが解禁された。これまでは入国と出国が同じ場所であれば出国するまで携帯電話を税関に預けることになり、出国と入国が異なる場所であれば携帯電話を袋に密封して渡され、出国までそれの開封を禁じられた。
ところが、2013年1月7日を境に携帯電話の持ち込みが自由となった。実際に、筆者は2013年12月28日に北朝鮮に入国し、携帯電話の持ち込みが可能なことを確認した。7台の携帯電話を持って北朝鮮に向かったが、7台とも持ち込むことができた。
この時、税関では申告書に持ち込む携帯電話の台数を書いて携帯電話をすべて出すように指示されたが、申告内容に問題がなければスムーズに携帯電話の持ち込みが許された。持ち込んだ携帯電話には韓国製も含まれていたが、まったく問題にはならなかった。
◯外国人向けにSIMカードの販売を開始
北朝鮮は外国人に対して携帯電話の持ち込みを解禁したのと同時に、平壌順安国際空港(FNJ)でプリペイドSIMカードの販売を開始した。このプリペイドSIMカードでは北朝鮮国内から国際電話を使うことが可能となる。入国目的や国籍などによって異なるが、基本的にはデータ通信は使えず、音声通話のみ利用が許される。
koryolinkのプリペイドSIMカードはW-CDMA方式の2.1GHz帯(Band I)に対応したSIMロックフリーの携帯電話で使うことができる。SIMカードのサイズはminiSIMカードサイズ(2FF)のみ提供しているが、koryolinkのブースではSIMカードのプラスチック部分を切断するSIMカッターが用意されている。そのため、miniSIMカードサイズ以外の携帯電話で使う場合は、SIMカッターでSIMカードのプラスチック部分を切断してくれるので、microSIMカードサイズ(3FF)やnanoSIMカードサイズ(4FF)を採用した携帯電話でも問題なく使える。
◯携帯電話の持ち込み解禁は外貨獲得に繋がる
長年、外国人による携帯電話の持ち込みを厳しく制限していたが、突如それを解禁したのには当然ながら理由がある。外国人に対して携帯電話の持ち込みを許可することで、プリペイドSIMカードの販売や観光客の誘致を促進することができる。
北朝鮮唯一の国際空港である平壌順安国際空港は航空機を利用して北朝鮮に入る渡航者はすべて使うことになる。そんな平壌順安国際空港でプリペイドSIMカードの販売を開始したことは、北朝鮮を訪問する外国人にプリペイドSIMカードを購入させようとする狙いがある。
平壌順安国際空港における税関のすぐ前にkoryolinkのブースが設置されており、それは北朝鮮に入国したら誰でも気が付くような場所である。目に付きやすい場所にkoryolinkのブースを設置することで、プリペイドSIMカードの販売を促進しているのだ。なお、平壌順安国際空港にあるkoryolinkのブースは外国人をターゲットとしているため、北朝鮮を訪問する外国人が少ない時期は営業しない。
北朝鮮では携帯電話の持ち込みを許可することで、観光客の増加も狙っている。スマートフォンを中心にカメラ機能を強化した携帯電話が続々と登場する中で、旅先の写真を携帯電話で撮ることは多いはずである。実際に、日本を訪問する外国人が記念写真を撮影する様子を見ていても、携帯電話で撮影しているケースは多い。旅先の写真を携帯電話で収めることが一般的となった今、北朝鮮当局はそれを汲み取って携帯電話を自由に持ち込めるようにしたと考えられる。
また、携帯電話以外の一部製品においても、外国人による持ち込みの規制を緩和している。これらは北朝鮮が国を挙げて観光事業を強化しており、携帯電話などの持ち込み規制を緩和することで、観光客の増加を狙っているわけだ。
結果的に外国人に対するプリペイドSIMカードの販売や北朝鮮を訪問する観光客の増加は、外貨の獲得に繋がるのである。観光客が増加することで、koryolinkのプリペイドSIMカードだけではなく、外国人が北朝鮮国内で外貨を消費する機会は増え、観光客の誘致は北朝鮮が外貨を獲得する大きな手段であり、外貨の獲得を加速するための施策が北朝鮮の携帯電話事情に大きな変化をもたらしたとも考えられる。
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北朝鮮・平壌順安国際空港の到着ロビー兼出発ロビー。税関を抜けてすぐの場所にkoryolinkのブースが設けられている |
謎に包まれた「朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)」の携帯電話事情を数回に渡って紹介している。北朝鮮では長らく外国人による携帯電話の持ち込みが禁止されていたが、2013年より外国人による携帯電話の持ち込みが解禁された。この時に、北朝鮮の携帯電話業界は大きな変化を迎えた。
そこで、前回は現在、移動体通信サービスを唯一行っている「CHEO Technology JV Company」(ブランド名としては「koryolink」)やこれまでの北朝鮮における移動体通信サービス歴史を紹介したが、今回は携帯電話の持ち込みの解禁に至った背景などを紹介する。
◯外国人による携帯電話の持ち込みを解禁
北朝鮮には旅行などさまざまな目的で外国人が訪問することは可能であるが、持ち込みが可能な製品は制限されている。一部のカメラや韓国製品など、北朝鮮に持ち込みが制限される製品は少なくなかったが、携帯電話も北朝鮮への持ち込みが制限されている製品のひとつであった。
しかし、2013年1月7日より観光などで訪問する一般の外国人に対して、携帯電話の持ち込みが解禁された。これまでは入国と出国が同じ場所であれば出国するまで携帯電話を税関に預けることになり、出国と入国が異なる場所であれば携帯電話を袋に密封して渡され、出国までそれの開封を禁じられた。
ところが、2013年1月7日を境に携帯電話の持ち込みが自由となった。実際に、筆者は2013年12月28日に北朝鮮に入国し、携帯電話の持ち込みが可能なことを確認した。7台の携帯電話を持って北朝鮮に向かったが、7台とも持ち込むことができた。
この時、税関では申告書に持ち込む携帯電話の台数を書いて携帯電話をすべて出すように指示されたが、申告内容に問題がなければスムーズに携帯電話の持ち込みが許された。持ち込んだ携帯電話には韓国製も含まれていたが、まったく問題にはならなかった。
◯外国人向けにSIMカードの販売を開始
北朝鮮は外国人に対して携帯電話の持ち込みを解禁したのと同時に、平壌順安国際空港(FNJ)でプリペイドSIMカードの販売を開始した。このプリペイドSIMカードでは北朝鮮国内から国際電話を使うことが可能となる。入国目的や国籍などによって異なるが、基本的にはデータ通信は使えず、音声通話のみ利用が許される。
koryolinkのプリペイドSIMカードはW-CDMA方式の2.1GHz帯(Band I)に対応したSIMロックフリーの携帯電話で使うことができる。SIMカードのサイズはminiSIMカードサイズ(2FF)のみ提供しているが、koryolinkのブースではSIMカードのプラスチック部分を切断するSIMカッターが用意されている。そのため、miniSIMカードサイズ以外の携帯電話で使う場合は、SIMカッターでSIMカードのプラスチック部分を切断してくれるので、microSIMカードサイズ(3FF)やnanoSIMカードサイズ(4FF)を採用した携帯電話でも問題なく使える。
◯携帯電話の持ち込み解禁は外貨獲得に繋がる
長年、外国人による携帯電話の持ち込みを厳しく制限していたが、突如それを解禁したのには当然ながら理由がある。外国人に対して携帯電話の持ち込みを許可することで、プリペイドSIMカードの販売や観光客の誘致を促進することができる。
北朝鮮唯一の国際空港である平壌順安国際空港は航空機を利用して北朝鮮に入る渡航者はすべて使うことになる。そんな平壌順安国際空港でプリペイドSIMカードの販売を開始したことは、北朝鮮を訪問する外国人にプリペイドSIMカードを購入させようとする狙いがある。
平壌順安国際空港における税関のすぐ前にkoryolinkのブースが設置されており、それは北朝鮮に入国したら誰でも気が付くような場所である。目に付きやすい場所にkoryolinkのブースを設置することで、プリペイドSIMカードの販売を促進しているのだ。なお、平壌順安国際空港にあるkoryolinkのブースは外国人をターゲットとしているため、北朝鮮を訪問する外国人が少ない時期は営業しない。
北朝鮮では携帯電話の持ち込みを許可することで、観光客の増加も狙っている。スマートフォンを中心にカメラ機能を強化した携帯電話が続々と登場する中で、旅先の写真を携帯電話で撮ることは多いはずである。実際に、日本を訪問する外国人が記念写真を撮影する様子を見ていても、携帯電話で撮影しているケースは多い。旅先の写真を携帯電話で収めることが一般的となった今、北朝鮮当局はそれを汲み取って携帯電話を自由に持ち込めるようにしたと考えられる。
また、携帯電話以外の一部製品においても、外国人による持ち込みの規制を緩和している。これらは北朝鮮が国を挙げて観光事業を強化しており、携帯電話などの持ち込み規制を緩和することで、観光客の増加を狙っているわけだ。
結果的に外国人に対するプリペイドSIMカードの販売や北朝鮮を訪問する観光客の増加は、外貨の獲得に繋がるのである。観光客が増加することで、koryolinkのプリペイドSIMカードだけではなく、外国人が北朝鮮国内で外貨を消費する機会は増え、観光客の誘致は北朝鮮が外貨を獲得する大きな手段であり、外貨の獲得を加速するための施策が北朝鮮の携帯電話事情に大きな変化をもたらしたとも考えられる。
記事執筆:田村和輝
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