ラオスの4G LTEサービスを試してきた!写真はビエンチャンに位置するLao Telecomの本社

ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)のLao Telecommunicationsは同国初の4G LTEサービスを導入した移動体通信事業者(携帯電話会社)で、2012年11月に首都のビエンチャンで開催された第9回アジア欧州会合(ASEM)に合わせて2012年10月より4G LTE(以下、LTE)サービスを提供している。その後、2015年5月下旬にUnitelブランドで展開するStar TelecomがLTEサービスを開始するまで、Lao Telecommunicationsはラオスで唯一のLTEサービスを提供する移動体通信事業者であった。

今回はラオス・ビエンチャンを訪問し、実際にLao TelecommunicationsのLTEサービスを試してきたので、そのレポートをお伝えする。なお、Lao Telecommunicationsの正式な社名はLao Telecommunications Company Limitedであるが、一般的には略してLao TelecomまたはLTCと呼ばれることが多いため、本記事では以下よりLao Telecomと表記する。

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Lao TelecomのSIMカード。一番右のSIMカードがM BroadbandのプリペイドSIMカードである。Net SIMともプリントされている

ラオスでは外国人でも簡単にプリペイドSIMカードを購入可能のため、Lao TelecomのプリペイドSIMカードも購入は容易である。しかしながら、LTEサービスを利用するためには、3つの点に注意したい。

◯データ通信専用のM Broadbandを選択
まず、1つ目の注意点はデータ通信専用のプリペイドSIMカードを選ぶ必要がある。Lao Telecomは音声通話に対応したSIMカードと、音声通話を利用できないデータ通信専用のSIMカードを取り扱っている。しかし、音声通話に対応したSIMカードではポストペイド(後払い)のみでLTEサービスを利用可能としており、プリペイド(先払い)ではデータ通信専用のSIMカードでのみLTEサービスを利用できる。

また、音声通話に対応したSIMカードとデータ通信専用のSIMカードは異なるサービスブランドが与えられており、前者は「M Phone」、後者は「M Broadband」となっている。これらはSIMカードのデザインも異なっており、M Broadbandとプリントされていればデータ通信専用のSIMカードである。データ通信専用のプリペイドSIMカードは”Net SIM”とも呼ばれており、「4G LTEを利用できるNet SIM」と注文すれば伝わりやすい。なお、実際に購入した旗艦店では英語で問題なかったが、個人経営などの小さな商店でもSIMカードを取り扱っている場合もあり、そういったところでは英語が通じないところもあった。

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M BroadbandのプリペイドSIMカードを開通すると「Welcome to M Phone Service.」と記載されたメッセージを受信するが、M PhoneをM Broadbandと読み替えて問題ない



◯LTE対応のデータパッケージを購入
2つ目の注意点は購入するデータパッケージである。SIMカードとは別にチャージ用カードを購入し、SIMカードにチャージしてからデータ通信を利用するためにデータパッケージを購入する必要がある。データパッケージにはLTEサービスに非対応のものが存在しているため、すべてのデータパッケージでLTEサービスを利用できるわけではない。パッケージコードが7~9および27と29のデータパッケージがLTEサービスに対応しているため、これらのいずれかのデータパッケージを購入できる金額分をチャージしておかなければならない。

そして、チャージ用カードには15桁のPIN番号が記載されている。使用するLao TelecomのSIMカードをスマートフォンに挿入し、ダイヤル画面で*121*PIN番号#と入力して発信するとチャージできる。チャージが完了すればデータパッケージを購入する。ダイヤル画面で「*131*パッケージコード#」と入力して発信するとデータパッケージを購入できる。なお、LTEサービスに対応したデータパッケージを購入後に「Thank you for your register 4G HSPA Data package」と記載されたメッセージを受信するが、LTEサービス対応のデータパッケージを間違いなく購入していればLTEサービスを利用できるため、4G HSPAは無視して差支えない。LTEサービス対応のデータパッケージは下記の表の通り。

パッケージコード有効期間データ通信容量料金
71ヶ月10000MB(約10GB)100,000ラオスキープ
(約1,500円)
81ヶ月無制限250,000ラオスキープ
(約3,800円)
91ヶ月50000MB(約50GB)500,000ラオスキープ
(約7,500円)
276ヶ月無制限1,425,000ラオスキープ
(約21,500円)
2912ヶ月無制限2,790,000ラオスキープ
(約42,000円)


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Lao Telecomのチャージ用カード。左が10,000ラオスキープ、右が100,000ラオスキープ


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メッセージには「4G HSPA Data package」と記載されているが、問題なくLTEサービスを利用できた



◯利用する端末に注意
3つ目の注意点は利用するスマートフォンなどの端末である。Lao TelecomのLTEサービスは周波数が1.8GHz帯(Band 3)で、帯域幅は15MHz幅を使用している。1.8GHz帯のFDD-LTE方式は世界のLTEサービスで最も多く採用されており、それだけ対応機種も多い。しかし、1.8GHz帯のFDD-LTE方式に対応した端末でも利用できない場合があった。

今回、複数機種で試したところ、Samsung Electronics製スマートフォン「Galaxy S4 zoom」ではLao TelecomのSIMカードを挿入すると、設定画面のネットワークモードでLTE方式を含むモードを選択できなくなり、「i-mobile IQ X LUCUS」ではLTE方式を含むネットワークモードを選択することはできたものの、自動ではLTEのネットワークに接続できず、またLTE方式に固定してもLTEネットワークには接続できなかった。どうしてもLTEサービスを利用したい場合は、複数のメーカーの端末を持参するなど使えなかった場合に対策しておきたい。なお、筆者が試した機種ではGoogle Nexus 5やInFocus M510、OPPO Find 7、OPPO N3でLTEサービスを利用できた。

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Lao TelecomのLTEネットワークに接続している



◯SIMサイズやAPNは心配不要
ラオスの移動体通信事業者のSIMカードは種類によってminiSIMカード(2FF)サイズのみ用意されている場合がある。用意されたSIMカードのサイズがminiSIMカード(2FF)サイズのみであれば、microSIMカード(3FF)サイズまたはnanoSIM(カード4FF)サイズのSIMカードを採用した端末で使うためには、SIMカッターでSIMカードを切断しなければならない。切れ味の悪いSIMカッターで切断するとSIMカードの切断面がいびつになり、SIMカードスロットを破損させる場合がある。なぜこのようなことを書くかというと、筆者はこれが原因でスマートフォンのSIMカードスロットを壊してしまったことがある。

しかし、M BroadbandのプリペイドSIMカードはそのような心配は不要である。3 in 1と謳っているように、miniSIMカード(2FF)サイズ、microSIMカード(3FF)サイズ、nanoSIMカード(4FF)サイズの3種類に切り抜ける。

アクセスポイント(APN)は「ltcnet」と設定するように案内されている。しかし、任意のAPNを設定するだけで問題なく通信できた。APNの設定を聞きそびれた場合や忘れた場合でも、任意のAPNを設定しておけば問題ない。

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M BroadbandのプリペイドSIMカードは3種類のサイズに切り抜ける



◯Lao Telecom本社での購入がオススメ
ビエンチャンでは個人商店のような携帯電話販売店など、SIMカードを取り扱う販売店は多いが、Lao Telecomの本社に併設された旗艦店で購入することを推奨する。それは旗艦店では確実にM BroadbandのプリペイドSIMカードを取り扱っており、購入したいデータパッケージを伝えればチャージやデータパッケージの購入もカウンターで処理してくれるからだ。また上述通り、旗艦店であれば英語が通じるスタッフがいるという点も現地語が話せない場合には助かるはずだ。なお、プリペイドSIMカードの購入にパスポートなどの身分証明書を提示するは必要ない。

また、プリペイドSIMカードを定価で購入できるメリットもある。通常は支払総額がプリペイドSIMカード代とチャージ代となるが、プリペイドSIMカード代は旗艦店を含むLao Telecomの直営店以外では上乗せして販売されている場合が多い。定価は10,000ラオスキープであるが、Lao Telecomの直営店以外では30,000~50,000ラオスキープで売っているところをよく目にした。

ビエンチャンでは現地通貨のラオスキープ以外にタイバーツや米ドルも利用できることが多い。しかし、Lao Telecomの旗艦店では米ドルは使えず、ラオスキープとタイバーツが使えた。1000ラオスキープ=4バーツで計算されており、タイバーツで支払って釣り銭が発生する場合は、釣り銭がラオスキープとなった。

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Lao Telecomの本社に併設された旗艦店



◯実用的に使えるLTEサービス
Lao TelecomのLTEサービスは2015年8月中旬時点で提供エリアがビエンチャン都およびチャンパサック県、サバナケット県の一部に限定されている。ラオス全土で考えるとLTEサービスのエリアは非常に狭いが、ビエンチャンでは一部の屋内を除いておおよそLTEサービスを利用できた。通信速度は実測で上下ともに5~20Mbps程度は平均的に出ており、ストレスなく実用的に利用可能だった。データ通信の容量は最安のデータパッケージで10000MB(10GB)もあり、また無制限のデータパッケージも用意されているため、容量はあまり気にせず使えるはずである。そのため、スマートフォンのテザリング機能を利用して、パソコンでインターネットを使うこともできる。ビエンチャンで快適にモバイルデータ通信を使いたければ、Lao TelecomのLTEサービスはオススメできる選択肢である。ラオスのビエンチャンを訪問する際には是非活用して欲しい。

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Lao TelecomのLTEネットワークで通信速度を測定


記事執筆:田村和輝


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