タクシー需要はAIで効率化する?! |
NTTドコモは17日、都内にて「人工知能を活用したリアルタイム移動需要予測の実証実験」についての説明会を開催した。
この実証実験は2016年6月よりNTTドコモ、東京無線、富士通、富士通テンによって行われているもので、それぞれが持つビッグデータやノウハウを元に「AIタクシー」実証実験を行い、予測正解精度92.9%を達成したという。
このAIタクシーの仕組みをざっくりと言い表すとすれば「魚群探知機」のようなもので、ドライバーは自分の経験と車載端末に表示される需要予測をもとに営業ルートを決めるというもの。今回はこのAIタクシーの説明とその効果について紹介していく。
AIタクシー実証実験の背景として、運転手不足、コスト上昇、運行数減・営業地域減、利用者減少、収益悪化・賃金低下という交通事業の悪循環による地域交通の弱体化があるという。そこでNTTドコモは課題解決に向けてIoT(モノのインターネット)とAI(人口知能)を用いると示した。
東京無線はAIタクシー実現に向けて走行データや営業データなどを用いる。これによって期待するものを「CO2の削減効果」および「お客様の利便向上」、「ドライバーの労働環境改善」とまとめた。効率よく営業することで空車を減らし、ドライバーの労働環境および我々利用者がすぐにタクシーを捕まえられるよう利便性があがることを期待しているというわけだ。
AIタクシーの実証は30分後の高需要が見込めるエリアの表示があるのだが、その中でも興味深いのは期待効果2で示している「電車遅延等の非日常的状況への対応」だ。
AIタクシーの端末画面には単に人口密集地を示すだけではない。10分ごとの人の分布をもとに過去と今の人の増減、そして乗車データを元に需要の予測を行う。こうした需要に関してはドライバーの経験で補えるものだが、電車遅延やイベントなどによる急激な人の増加から前述した非日常的な需要を地図から俯瞰で知ることができる、これは路上では気付かない要素ではないだろうか。
このタクシー需要リアルタイム予測は、NTTドコモの500m単位のメッシュで示す「人工統計」データと東京無線の「タクシー運行データ」を人工知能技術で予測する。単純に人が多いからタクシー需要につながるというわけではないようだ。
こうして導き出された需要予測は10分ごとに更新される。また、画面操作を行うと地図上で30分後の予測データを参照することができる。赤いエリアの「38」などの数字は、38組の需要が見込めるエリアとして示している。
予測結果を導き出すには人口統計や運行データだけではなく、気象データ(現在、未来)や施設データそのほか様々な条件をもとに「多変量自己回帰」、「ディープラーニング」が用いられる。例えば同じ場所で人口統計が同じ条件であっても、雨が降っている、雪が降っている、暑い、寒いなど天候によって乗車率が変動する。こうした気象条件は過去の乗車データをもとに予測し精度を高め、そして最新のモデルケースから学習しさらに精度を高めていく。
今回のAIタクシーの実証実験では、過去データと比較すると売上げが上がったことが報告された。その効果は売上げだけではなく、地域やルートなどを把握している新人の教育ツールや、ドライバーの運行効率化、乗客が乗りたいタイミングで捕まえやすくなったという。
【AIタクシーのプレゼンと試乗体験を動画で紹介】
動画リンク:https://youtu.be/HAP34oMphrE
NTTドコモはAIタクシーを2017年度下期の商用化を目指す。AIタクシーによる営業によって、我々がタクシーをすぐに捕まえることができるようになるのは歓迎したい。
一方で、ドライバーが需要を俯瞰で観られるようになることで、需要が見込めないエリアはより過疎化するのではないかという懸念もある。我々、利用者がどのエリアに居るのかが把握できないことを考えると、タクシー送迎アプリなどの利用もまだまだ必要のなのかも知れない。
記事執筆:mi2_303
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