NTTドコモのドローンプラットフォーム「docomo sky」を解説! |
NTTドコモは同社の携帯電話ネットワークを利用した独自のドローンプラットフォームプロジェクト「docomo sky」( https://www.docomosky.jp )を2月21日に発表しました。
現在の日本におけるドローン規制は人間による操縦(レベル1)およびコンピューター制御による自動操縦(レベル2)のどちらも目視内飛行に限定されており、目視外の無人地帯での飛行(レベル3)や目視外の有人地帯での飛行(レベル4)について原則として認可されていません。
しかしながら、レベル3に相当する飛行は早ければ2018年内にも認可が降りる予定となっており、2020年のレベル4導入を目標として着実に技術開発や実証実験が行われている最中です。
今回はそういった方針に向けてNTTドコモによるドローンプロジェクトとして立ち上げられたdocomo skyの概要を発表会の模様とともに紹介しながら、今後の日本におけるドローンビジネスの行方などを解説します。
■NTTドコモが目指すドローンビジネス
NTTドコモが狙いとするドローンビジネスはB2Bソリューションビジネスです。同社が持つ携帯電話ネットワークを活用し、ドローンを遠隔操作して点検作業や監視業務に活用することが目的です。
発表会に登壇したNTTドコモ 代表取締役 副社長の中山 俊樹氏は「ドローンの運用はただ飛ばせばよいというものではない」と語り、「飛んでいるドローンが正しく認可されたものであるのか、またビジネスとして運用する際の決済はどうするのかなど、さまざまなプラットフォームが必要となる」と説明。続けて「我々はセルラー(携帯電話網)のノウハウを活用してドローンを運用することで、それらをパッケージ化したソリューションを提供する」と、docomo skyの強みを強調しています。
同社のドローン戦略は「中期戦略2020 beyond宣言」の「ワークスタイル革新」の中に盛り込まれており、具体的には配送(無人宅配)、災害(遭難者捜索)など大きく4つの取組みが示され、今回発表されたdocomo skyは「点検」を担うプロジェクトという位置付けです。
本プラットフォームの具体的な活用例(協業例)として挙げられたのは南国殖産が運営する太陽光発電施設の点検業務です。東京ドーム10個分(約45万平方メートル)と言われる広大な敷地に敷設されたソーラーパネルは人間の目視による点検では膨大な時間と手間がかかり、コスト的にも時間的にも多くの無駄が生じます。
これをドローンによる監視・点検に切り替えることでオペレーションを大幅に簡略化できる上、ソーラーパネルの異常を解析する時間は4分の1に、異常なソーラーパネルの検出数は3倍に向上するとしています。
発表会場には実際に運用に用いられるdocomo skyプラットフォームとその画像解析処理アプリなどがデモンストレーションされていました。
■電力線網をドローンの移動経路に活用
そしてもう1つ重要なのはドローンの移動および輸送経路です。当然ながらドローンは空を飛行して利用目的地へ向かいますが、山間部であったり移動可能時間が限られているなど、常にその目的地直近までドローンを運び入れられるとは限りません。
そこで同社では東京電力ホールディングスと提携し、東京電力ホールディングスが持つ電力線網(送電線網)をドローンの移動経路として活用する案の共同検討を開始すると発表しました。KDDIなどでも電力線網をドローンの移動経路として利用する案が検討されていますが、同社では「そこはビジネスというよりもインフラ。自治体とも連携してやっていきたい」と語り、ドローンを安全に移送するインフラ構築の先駆けとして考えている点を強調しています。
■ドローンが安全で便利に活用される未来のために
同社はdocomo skyの導入に合わせ、2018年4月よりパートナー企業とのドローンビジネス協創の促進を目的とした「ドコモ セルラードローン・オープンパートナーイニシアティブ」を発足すると発表しています。同社からはセルラードローンに関する運用情報や技術情報、docomo skyをパッケージ化したトライアルキットなどを提供し、パートナー企業からはセルラードローンの活用アイデアや実証実験を行うためのフィールドの提供などを受けることで、セルラードローンの活用方法を模索・実用化していくことが目的となります。
またドコモグループ全体でもドローン市場の活性化とセルラードローンの活用を踏まえた体制強化として、2018年4月1日より「ドローンビジネス促進室」の設置を発表しています。
NTTドコモがこういったドローンビジネスの基盤づくりを急ぐ背景には、ドローンビジネスにおけるアドバンテージを確保して早急にシェアを拡大したいという狙いがあるものと推察されます。
冒頭でもお伝えしたように日本におけるドローン規制はまだまだ厳しくその緩和に向けた実証実験が行われている最中ですが、その実証実験の中心となっているのは通信事業の分野でもライバルであるKDDIやソフトバンクといった企業です。これらの企業に先んじてビジネスモデルを確立させ、規制緩和と同時に事業化が図れればインフラとしてのアドバンテージを確保しやすくなります。
ドローンが今後ビジネスシーンにおいても大きな存在感を示し、その活用の幅が広がることが確実視されている現在、先手を打つように近い将来を見据えた事業戦略を展開することには何もデメリットはありません。
むしろ中山氏が質疑応答の場で「先日もドローンの落下事故があった。国交省も神経を尖らせている。どんなに便利でも安全でなければダメだという前提がある」と語ったように、ドローンビジネスを成長させる基盤としての安全をまず確保しなければそもそもビジネスとして成り立たないという懸念もあり、そのためのドコモ セルラードローン・オープンパートナーイニシアティブの発足であったり東京電力ホールディングスとの共同検討であると考えられます。
大型の個人用ドローンがブームとなった2015年から2016年にかけて一般人によるドローンの無差別な運用が数多くの事故を引き起こしたことをきっかけに、その運用には大幅な規制がかかりガイドラインの厳格化なども余儀なくされました。この状況が続くようではドローンビジネスが花咲くことはほぼありません。
同社の取り組みはこういった強い規制を取り払うための最善策とも言えます。ドローンが輸送や点検・監視業務に便利に活用される未来は、すぐそこまで来ているのです。
記事執筆:秋吉 健
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