auが量産型テレイグジスタンスロボットを使った旅行体験イベントを発表!

KDDIおよび沖縄セルラー電話は5月29日、都内にて「au発表会 2018 Summer」を開催し、Telexistence(以下、TX Inc.)が開発した量産型プロトタイプの遠隔操作ロボット「MODEL H」を使ったロボット旅行体験イベントを実施すると発表しました。

遠隔地の映像をただ遠隔操作で見るだけではなく、人間の動きをトレースし物に触れた感覚などもフィードバックするロボットの遠隔操作技術は社名にもなっているテレイグジスタンス(Telexistence)と呼びますが(技術解説はこちらの記事を参照)、本イベントはその量産型プロトタイプロボットを用いた新たな試みとなるものです。

テレイグジスタンスによる旅行体験は人々にどのような感動を与えてくれるのでしょうか。発表会に併設された実演会場の様子などとともにご紹介します。

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TX Inc. CEOの富岡 仁氏と量産型プロトタイプ「MODEL H」


■空間を超えるテレイグジスタンス技術
前述のようにテレイグジスタンスとはロボットの新しい遠隔操作技術を指す言葉で、まだ一般にはあまり浸透していない言葉です。従来の遠隔操作ロボットとの大きな違いは触覚などのフィードバックがある点で、ロボットが何かを手に持ったり人と握手をすると、その感触までもが遠隔操作している人間に伝わるのです。

KDDIは以前からこのテレイグジスタンス技術に注力しており、TX Inc.はKDDIが行っているコーポレート・ベンチャー・ファンド「KDDI Open Innovatiobn Fund」を通じて投資している企業の1つです。

KDDIがテレイグジスタンス技術に注力する背景には来たるべき「5G」通信技術の活用があります。テレイグジスタンスそのものは従来の通信方式でも利用可能ですが、より高速なレスポンスと高精細な映像送信が可能となれば、同技術はさらに実用性の高い技術となります。2020年の5Gサービス開始を視野に入れる同社にとって、今回のロボット旅行体験イベントはその前哨戦のような立ち位置となるのではないでしょうか。

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「空間を超えた旅行体験を」と語る壇上の富岡氏


今回旅行体験のポイントとして選定されたのは小笠原諸島です。東京都でありながら都心部から約1000Kmも離れた絶海の島々であり、小笠原本島への移動手段は客船しかなく、その所要時間は24時間にもなります。

地球の裏側であるブラジルへ行くのとほぼ変わらない移動時間を要するこの島の様子が遠隔地から手に取るように楽しめたら……それがこのロボット遠隔旅行体験の趣旨です。

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近くて遠い南の楽園、小笠原諸島


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どんな遠隔地であってもテレイグジスタンスであればその場にいるような体験ができる


■スムーズで静かなMODEL Hの動作
本イベントで用いられるロボットのMODEL Hは2つの目に当たるカメラと2本の腕、そして車輪による移動を可能としたもので、発表会場に併設された展示コーナーにて実演も行われました。

操縦にはVRゴーグルと専用グローブ、そしてそれらを制御する専用コンソールボックスが用いられ、操縦者が両手にはめたグローブを動かしたりVRゴーグルで周囲を見回すと隣に置かれたMODEL Hも同じように動きます。

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操縦者の動きを綺麗にトレースするMODEEL H


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MODEL Hに物を持たせれば操縦者に「物を掴んだ」という感触がフィードバックされる


操縦者の動きをトレースする様はロボットというよりもまさに人間のような有機的なもので、人の動きをよく再現できているという印象でした。動き自体にはまだかなりのブレがあるようで細かなものを手に取るといった操作は難しいように思われましたが、駆動音もあまり気にならず十分に実用的なレベルにあるようです。

MODEL Hの操縦をする際はVRゴーグルなどを収納するボックスを兼ねたコンソールボックスの前に座ります。このボックス自体がPCになっており正面の赤外線センサーで操縦者の動きをトレースします。

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コンソールボックスの内側。ディスプレイ左右にあるセンサーで操縦者手の動きなどを捉える


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用いられていたVRゴーグルはHTC製「HTC VIVE」


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MODEL Hの胸や肩にはauとTX Inc.のロゴが入っている


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MODEL Hはバッテリー駆動が可能なので、ある程度平坦な場所であれば自由に移動が可能


■次世代の旅行体験イベントはもうすぐ
MODEL Hを用いたロボット旅行体験イベントは今夏と今冬に計画されているものの、現在はまだ日程や詳細は発表されていません。その高度なトレース技術はまだまだ発展途上であり、イベント開始まで細かな調整を行うと説明員は語っていました。

空間を飛び越えるように遠隔の世界を体験できる夢のイベントの実現に期待したいところです。

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ロボットがあなたの目となり手となる日がすぐそこまで来ている




記事執筆:秋吉 健


■関連リンク
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テレイグジスタンス (R) 技術を活用した遠隔操作ロボットの量産型プロトタイプMODEL Hを開発 および、ロボット旅行体験イベントの実施 | 2018年 | KDDI株式会社