NTTドコモは30日、時速90Km以上で高速走行する複数の実験用5G通信端末に対して複数の実験用5G基地局を連携させ、基地局を瞬時に切り替える実証実験を実施したと発表しています。実験では通信端末2台に対して通信の効率として1台当たり4ビット/秒・Hz超を達成したとのこと。

これにより、例えば、NTTドコモが5Gで商用サービスを提供している28GHz帯の400MHzの帯域幅を利用した場合は下り最大1.6Gbps相当となるミリ波を用いた安定した高速5G通信に成功し、高速移動中でも安定的かつ高速な5G通信の実現につながり、さらなる5Gの高度化が見込まれるということです。

なお、この実証実験は総務省からの委託を受けて実施した「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」における「5Gの普及・展開のための基盤技術に関する研究開発」の成果の一部が含まれており、研究開発の目標である通信効率を達成したとしています。

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実証実験は2021年2月20日(土)から3月6日(土)に茨城県東茨城郡城里町にある日本自動車研究所の自動車走行テストコースで行い、コースに5G基地局3局を約200m間隔で設置して通信端末を搭載した2台の測定用車両を時速90Kmから120Kmで並走させ、通信する5G基地局を高速移動環境でスムーズに切り替えながら複数の通信端末で安定した高速通信の実現性を検証したということです。

周波数帯および周波数幅は27.6GHz帯(帯域幅:100MHz)のミリ波を利用しており、ミリ波は高速・大容量の通信ができる性質を持つ一方で、電波が遠くに届きにくく、1つの基地局がカバーできるエリアが狭くなりやすい性質を持つため、特に高速移動環境では複数基地局の連携によるエリア構築が重要となり、電波を特定の方向に集中して放射する「ビームフォーミング機能」を用いることでミリ波を遠くまで届けることができますが、複数の通信端末に向けて電波を発射する際に互いのビームが干渉して速度が低下してしまう場合があります。

そのため、実証実験では基地局と通信端末との間の通信の状態を詳細に推定することで高速移動する通信端末を追従するように基地局の電波の向きを自動で制御する「デジタルビームフォーミング機能」を用い、従来のビームフォーミング機能をデジタル化することで複数の通信端末の同時通信を実現しながら高速移動に追従させて最適に通信できる基地局を瞬時に選択して切り替えることが可能になるとのこと。

さらに電波の反射物などがない環境では基地局と通信端末との間で直進する電波のみが届くため、通信経路が1つだけになって複数の信号を同時送信することは困難ですが、複数の信号を複数の基地局に分散させて送信する分散MIMOを実装して通信経路を増加させることで複数信号の同時送信を実現しています。

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その結果、3台の基地局を連携させて構築した約400mのエリアでの下りリンク通信にて上記のようになり、時速120Kmで移動する2台の通信端末に対してIMT-2020の要求条件である0.8ビット/秒・Hzを超える通信端末当たり約3ビット/秒・Hzの周波数利用効率をエリア内で安定的に実現しました。

さらに時速90Kmで移動する2台の通信端末に対して総務省受託研究開発の目標である通信端末当たり4ビット/秒・Hzの周波数利用効率をエリア内で安定的に実現したとのこと。同社では実験結果によって得られた知見をいかし、5Gのさらなる高度化による高速大容量通信の実現や6Gにおける新たな無線技術の研究開発を推進していくとしています。




記事執筆:memn0ck


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時速90km以上の高速で走行する複数の車両に搭載した通信端末でミリ波を用いて安定的な高速5G通信実験に成功-通信する5G基地局を瞬時に切り替え-(PDF形式:413KB)
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