3Gサービス終了とフィーチャーフォンについて考えてみた! |
トップ画像は筆者が2008年の冬に、KDDI(au)の新製品発表会へ取材に赴いた際に撮影したものです。当時通信業界では3Gサービスと3Gケータイが隆盛を極め、同年7月にソフトバンクが発売したiPhone 3Gを横目に「ガラパゴスケータイ(ガラケー)の進化は止まらない」と大腕を振っていた時代です。
今回のコラムは、そんなガラケーとそのメーカーや通信キャリアを笑おうというお話ではありません。さまざまなバリエーションとギミックに凝り、四半期ごとに新しいモデルが発売され、携帯電話を語ることが楽しくて仕方がなかった3G時代がついに終わりを迎えるというお話です。
3Gサービスや3Gケータイとは何だったのでしょうか。そして現在利用されている携帯電話(フィーチャーフォン)は今後使えなくなってしまうのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は3Gサービスの終焉とフィーチャーフォンにまつわる疑問や注意点について解説します。
■3Gサービスを切り捨てるしかなかったKDDI
本連載コラムでも、4年前に3Gサービスの終了について執筆したことがあります。KDDIが2022年3月末をもって3Gサービスを終了すると告知したことを受けたもので、ついにその日がやってくることになります。
当時のコラムでは3Gサービスやフィーチャーフォン全体ではなく、主にKDDIの3G通信の歴史にフォーカスを当てて執筆しました。
NTTドコモがFOMAの展開でつまづく中、2Gサービスと互換性のある通信方式を採用したKDDIが順調なスタートダッシュを決め、さらにデザインケータイや若年層を取り込む「LISMO」のようなオンラインサービスと巧みなCM展開などによって、ユーザーを爆増させた時代でした。
【過去記事】秋吉 健のArcaic Singularity:「勝利」の時代が終わる。auの3G携帯電話サービス「CDMA 1x WIN」が2022年3月末に終了!通信の歴史を紐解き未来を考察する【コラム】
そんな隆盛から4G時代へと突入し、今度は3Gと4Gの通信方式(規格)の互換性の低さから苦戦を強いられたKDDIは、早々に3Gサービスに見切りをつけて4Gとさらに先の5Gへの投資を急ぎました。
こういった経緯があり、3Gサービスの終了はKDDIが一番早くなったのです。ちなみに、NTTドコモは2026年3月末、ソフトバンクは2024年1月末でのサービス終了を発表しています。
■「フィーチャーフォンが使えなくなる」のウソ・ホント
3Gサービス終了の話題でいつも挙がるのは「フィーチャーフォン(携帯電話)は使えなくなるの?」というものです。
結論から言えば、現在みなさんが使っているフィーチャーフォンの多くはそのまま利用可能です。ただし、仮に4G対応の機種であったとしても、使える機種と使えない機種があるという点に注意が必要です。
使えなくなる機種とは「VoLTE(ボルテ)」に対応していない機種です。
VoLTEとは、「Voice over Long Term Evolution」(Voice over LTE)の略称で、LTE(4G)通信を用いて音声通話を可能にする技術および規格のことを指します。
KDDIであれば「au VoLTE」がそれに該当します。
※LTEは厳密には4G世代ではないが(3.9G世代)、ここでは広義の解釈や通信キャリア各社のサービス状況に合わせ4Gと同義として扱う
VoLTEはKDDIだけではなくすべての通信キャリアが採用しており、スマホでの音声通話は基本的にVoLTEを利用していると考えて問題ありません(現在は音質の向上を目指した拡張規格である「VoLTE HD+」という規格に進化している)。
このVoLTEもしくはVoLTE HD+に対応したフィーチャーフォンであれば、今後も問題なく利用できるということになります。
各通信キャリアの公式サイトでVoLTE対応状況を見ることができるため、手持ちのフィーチャーフォンが対応しているかどうか気になる人は公式サイトで調べておくと良いでしょう。
もう1つ気になるのは「フィーチャーフォンがなくなってしまうのではないか」という点ですが、これについては非常に微妙だと言わざるを得ない状況です。
5~6年前までであれば、各社ともに「シニア層や法人向けのフィーチャーフォン需要はまだ多い」として継続的な開発を行っていましたが、現在はシニア層のスマホ利用率が大きく伸び、さらに法人向けにカメラ機能をオミットしたスマホのバリエーションモデルが発売されるなど、脱フィーチャーフォンの流れは加速しています。
いわゆる小中学生向けのキッズケータイのカテゴリーも子ども向けのスマホや安価な一般向けのスマホに置き換わり、もはやフィーチャーフォンはシニア向けか、ごく一部のニッチ層向けのシリーズのみが、数年おきに発売されるだけとなっているのが実情です。
NTTドコモなどはシニア層向けのスマホのラインナップを拡充し、より一層スマホへの乗り換えを推奨するようになっています。3Gサービスの終了は、そういった流れを更に加速させる1つの要因となるでしょう。
■正しい知識と情報を得た上で判断と選択をしよう
ここで気をつけていただきたいのは、主にキャリアショップによる「もうすぐ3Gサービスが終了するのでフィーチャーフォン(携帯電話)が使えなくなります」といった内容のアナウンスや案内です(通信キャリア自体はここまであからさまな表現は用いない)。
前述のように通信キャリアは3Gサービス終了を機にスマホへの乗り換えを勧めていますが、本コラムでも解説したようにフィーチャーフォンの多くは今後も問題なく使えます。
とくに、現在キャリアショップや家電量販店などで販売されているフィーチャーフォンであれば、間違いなく今後も利用できる機種ばかりです。
「3Gサービス終了でフィーチャーフォンが使えなくなるのでスマホに乗り換えを」といった言葉は不正確であり、現在フィーチャーフォンを利用している人が無理にスマホへ乗り換える理由にはなりません。
今後スマホにしたほうが良い理由はいくつもありますが、事実誤認を誘発したり優良誤認による勧誘や商品販売は決して認められるものではありません。
そういった売り込みなどを見かけた場合は、安易に乗せられないように注意が必要です。
KDDIによる3Gサービス終了の案内。フィーチャーフォンが使えなくなるかのように感じられるが、実はどこにもそのようなことは一切書いていない。利用可能なフィーチャーフォンがあることを敢えて伏せており、巧妙に騙されているような気分になる
こういった「3Gサービス終了に“かこつけた”スマホへの誘導」は、KDDIだけではなくNTTドコモやソフトバンクでも基本的に同じです。
ソフトバンクは2024年に、NTTドコモは2026年に3Gサービスの終了を予定していますが、期日が近づくほどにこういった勧誘と広告は増えていくでしょう。
繰り返しとなりますが、スマホに乗り換えてはいけないということではありません。むしろSNSの利用や各種サービスの利用が可能(容易)である点などスマホにしたほうが良い理由は多く、環境や状況が許すならば早めにスマホを利用し始めたほうが得策だと言えます。
しかしながら、そのメリットのために強引な誘導を行ったり、消費者を騙すようなやり方で買い替えを促して良いものではありません。
フィーチャーフォンで利用できるサービスだけで十分という人や、スマホの使い方を覚えるのは大変というシニア層まで無理矢理スマホに買い替えさせるのは正しくないと考えるところです。
そのためにも、まずは消費者が正しい知識と認識を持つことが大切です。もし誰かに「フィーチャーフォン(ケータイ)は使えなくなるの?」と聞かれたら、「VoLTE対応の機種だったら大丈夫だよ」と教えてあげて下さい。
記事執筆:秋吉 健
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広告とか宣伝に踊らされてる時があるのですね。使い続けたいです。