トーンモバイルの新型スマホ「TONE e22」を解説! |
ここ数年、通信キャリアオリジナルのスマートフォン(スマホ)やタブレットといったものは非常に少なくなり、各通信キャリアで共通仕様の機種や、オープンマーケットと全く同じ仕様のスマホが主流となっています。
そのような中で、敢えてハードウェア的にもソフトウェア(サービス)的にも独自色を打ち出すユニークな通信キャリアがあります。トーンモバイルです。
トーンモバイルはNTTドコモから回線を借り受けて運営を行っている仮想移動体通信事業者(MVNO)ですが、販売する端末(スマホ)は常に独自開発であることが特徴で、オリジナリティあふれるデザインや独特なサービスを武器としています。
6月に発売された新型スマホ「TONE e22」もまたオリジナルスマホの1つです。5G SAやワイヤレス充電、トリプルカメラといったモダンな仕様に加え、ブロックチェーン技術を採用した最新のポイントシステムを試験導入するなど、近年稀に見る意欲的なスマホに仕上がっています。
5月に行われた製品発表会にて展示されていた実機の写真とともに、TONE e22の魅力を解説します。
■実売2万円前後の通信キャリアオリジナルスマホ
TONE e22はその名の通り、トーンモバイルでしか購入できない特殊なスマホです。同社が発売するスマホはこれまでもオリジナル端末にこだわり続けており、さらに価格が非常に安価であることも特徴の1つとなっています。
TONE e22は定価が29,800円となっており、さらに同社の提供するユーザー協力型実証実験プロジェクト「TONE Labo」への参加を確約することで19,800円での購入が可能です。
通信キャリアのショップや大手量販店では店舗(代理店)単位での割引や特別値引きなどによって1万円を大きく下回るような価格で販売されるスマホも特例的に存在しますが、通信キャリア自身が決定した価格という点ではかなりの廉価設定です。
非常に安価な端末となると気になるのは性能ですが、最新のモバイル通信規格である5G SAへ対応している点や、4800万画素の広角(標準)カメラ、800万画素の超広角カメラに加え、被写体への距離などを正確に測りxR技術にも活用される200万画素の深度センサーまで搭載された背面トリプルカメラなど、単なる「安かろう悪かろう」とは一線を画した構成です。
さらに、安価なスマホでは省かれやすいQi規格のワイヤレス充電や顔認証+指紋認証によるダブル生体認証にも対応しており、実用性やセキュリティにおいても十分な機能を有しています。
ディスプレイは6.67インチ/FHD+(2400×1080ドット)の液晶ディスプレイで十分な大きさ。上部中央にパンチホールタイプの1300万画素カメラを搭載した全画面デザインを採用しています。
バッテリーは4,000mAh、内蔵メモリーは6GB、内蔵ストレージは128GBとこちらも必要十分を確保。さらに外部ストレージとしてSDXC A1規格に対応した最大512GBまでのmicroSDカードも利用可能です。
SIMは物理カードのnanoSIMに加えて論理SIMであるeSIMにも対応している点は非常にモダンです。ただし他社の通信サービスでの契約および使用は保証対象外であるため、利用の際には注意が必要です。
コストダウンの主な点としてはチップセット(SoC)が挙げられます。
搭載されているSoCはMediaTek製の「MediaTek Dimensity 700」となっており、ミッドレンジ向けSoCの中でも下位クラスとなっており、省電力性に優れている一方で性能面では大きな期待はできません。
動画撮影やSNS利用、ウェブサイト閲覧、動画視聴、ストリーミング音楽聴取など、一般的な用途においてはまったく支障なく利用できますが、最新の3Dゲームや処理の重いアプリでは快適さが損なわれる場合もあります。
飽くまでも2万円のエントリー~ローエンドモデルとして考えるなら、価格相応以上の性能は有しているスマホと言えます。
デザイン面では本体カラーがZenWhiteの1色のみである点もコストダウンの1つでしょう。指紋が目立たず爽やかな印象で透明感のあるフロスト加工が施してあり、保護ケースなどに入れなくても使いやすいデザインです。
また背面に丸みをもたせた上で各エッジが面取りしてあるため、164.7mm×76.5mm×8.9mmと大きめの筐体ですが、持ちやすいデザインに仕上がっています。
■ポイントを「採掘」して貯めるユニークな「TONE Coin」
そして本体性能や機能以上に特徴的なのは、トーンモバイルが提供するユーザー協力型実証実験プロジェクト「TONE Labo」の存在です。TONE e22はTONE Laboへ参加せずとも利用可能ですが、このスマホを使うならぜひとも試してみたいサービスです。
TONE Laboとは、大きく3つのサービスから構成されています。
・TONE Care(トーンケア)
気軽に医師等に健康相談ができる、Preメタバース時代のオンライン健康サービス
・TONE Coin(トーンコイン)
充電中にプログラムを動かすだけでTONE Coinが貯まる新しいポイントシステム
・アンチフィルターバブル
安心してインターネットに接続できるアンチフィルターバブルの世界観の提供
トーンケアやアンチフィルターバブルといったサービスは他社でも類似サービスが散見されますが、非常にユニーク且つ意欲的なチャレンジなのがトーンコインです。
例えばNTTドコモであればdポイント、KDDIであればポンタポイントのように、通信キャリアはそれぞれに独自のポイントシステムを導入していますが、トーンモバイルではこのポイントシステムをブロックチェーン技術によって管理し、仮想通貨のように時価によるレート変動のあるポイントとして提供するものです。
具体的には、ポイント管理システムとしてEthereum互換の分散型プログラム実行環境「Solidity Runtime」を使用し、スマホを使っていない時間帯や充電中などにバックグラウンドでプログラム(アプリ)を動作させることでポイントが貯まっていく仕組みです。
一見すると仮想通貨のマイニングを彷彿とさせますが、トーンモバイルによれば「似て非なるもの」とのことで、ポイントはユーザー(利用者)の数やアプリの動作端末の台数などによって変動するとのことです。
店頭での買い物やスマホサービスでの決済にポイントが紐付けられるのではなく、能動的にポイントを「掘り出す」点が非常に面白い部分です。
ただし、7月28日現在このサービスはまだ正式運用されておらず、2022年近夏~秋頃を目途に、トーンモバイルの月額支払いなどに充当できるようになる予定とのことです。
また、トーンコインは現在TONE e22のみでの提供となっていますが、発表会の場では「今後状況を見て他機種にも展開したい」とも話していました。
■トーンモバイルの野心を感じさせるスマホ
トーンモバイルはTONE Laboに代表されるように、端末やサービスに対するアプローチが非常にユニークで野心的な印象すら感じるMVNOです。
現在はNTTドコモと提携し、全国のドコモショップなどでも取り扱われているため通信キャリアとしての認知も広がっており、これまで低年齢層の子どもやシニア中心だったユーザー層が徐々にハイティーンや20~30代にも広がっているとのことで、トーンコインのようなユニークなサービスもヒットする可能性があります。
TONE e22はそのような中で「次世代のトーンモバイル」を背負うために生まれたスマホと言っても過言ではありません。価格は十分に抑えつつもトレンドである大画面ディスプレイや多眼カメラを搭載し、5G SAやeSIMといった最新のモバイルインフラも利用可能な将来性もある設計です。
通信コスト(≒本体代金+ランニングコスト)をとにかく安く抑え、買い物などをせずともポイントを能動的に貯めてさらに通信コストを低く抑えられるというのが本機の強みです。
他の人とはちょっと違ったスマホが欲しい、ユニークなサービスをいち早く試してみたい。そんな方に向いている端末かもしれません。
【記事最後の記者名】
記事執筆:秋吉 健
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