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子どもたちとスマホルールについて考えてみた! |
筆者はこれまで、本連載コラムで10代の子どもたちのスマートフォン(スマホ)利用の実態について何度か執筆してきました。モバイル業界としても子どもとモバイル機器の関わり方は大きな関心事であり、また積極的にルール化やリテラシーの向上を図っていく必要のある分野です。
過去のコラムではフィルタリングサービスの重要性やスマホデビューの時期、さらに子どもとその保護者の両面からモバイルリテラシーについて考えるなど、さまざまなアプローチで「子どもとスマホ」を考察してきました。
スマホの普及から10年以上が経ち、子どもたちへのスマホ所持の浸透とルール化はどのように変わってきたのでしょうか。また子どもにスマホをもたせるタイミングはいつ頃が妥当なのでしょうか。
感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は子どもたちとスマホルールの変遷について考察します。
■スマホ利用年齢が下がる中、ルール適用も浸透し始めている
NTTドコモの企業内研究所である「モバイル社会研究所」が7月13日に公開した「親と子に関する調査」では、親子間で取り決められたスマホのルールについて2018年と2023年の調査結果が比較されています。
それによると、2018年と比較した場合に小学生では全体的にルールの設定自体や設定される項目が増加する傾向にあり、とくに歩行中や自転車走行中の利用を禁じるルールや、個人情報の取扱いに関するルール、さらに誹謗中傷を禁ずるなどの他人とのコミュニケーションルールを設定する家庭が増加しているのが分かります。
逆に中学生ではルールの緩和が目立ち、とくに利用場所や利用時間に関するルールの緩和と、LINEやメールの内容を親が確認するルールの緩和が顕著でした。
これらの増減が意味するところは、「スマホ所持年齢の低年齢化が加速している」ことと、「スマホ所持年齢の低下によってスマホの利用ルールが子どもにも徹底され始めた」ということです。
ニフティが2022年に公開した「『ケータイ・スマホ』に関するアンケート調査」によれば、自分専用のスマホを所持している小学生の割合は40%となっており、これは内閣府の調査結果ともほぼ合致します。
4割にも及ぶ小学生がスマホを持つ時代となり、各家庭でのスマホの扱い方や問題意識が地域で共有されるようになったことで、小学生のスマホ利用ルールの設定や適用が浸透し始めていることが伺えます。
また、小学生のうちからスマホの利用ルールが徹底されるようになったことで、中学生になる頃にはその使い方や危険性についての指導が行き届くようになり、中学生になってからはルールを緩和しても大丈夫な家庭が増えたと考えられます。
ここで気になるのはルールの遵守です。子どもたちのスマホ利用ルールの適用が増加していることは良いとしても、そのルールは正しく守られているのでしょうか。
モバイル社会研究所の調査「ルールとして「決められた時間だけ」を設定している」という項目では、小学生の場合ルールの設定自体が増加している一方で、ルールを守れない(破ってしまう)子どもも若干増加しています。
とは言え、この点に関してはルールを正しく守っている子どもも同等に増加しているため、ルール遵守の全体的な傾向としてはあまり変化はありません。純粋にルールを適用する過程が増えていることを歓迎したいところです。
中学生の場合、ルールの適用が全体的に減少する中、ルールを遵守している子どもたちの割合は変わらず、ルールを破ってしまう子どもたちの割合が減少しています。
これは小学生以上に歓迎できる状況です。スマホ所持年齢が低下し、早くからモバイルリテラシーが醸成された結果、中学生になる頃には利用のルールが緩和されても正しい使い方をする子どもが増加し始めているものと推察されます。
■スマホを買い与える前にルールについて話し合おう
それでは、子どもたちには小学生のうちにスマホを買い与え、早めにモバイルリテラシーの醸成に取り組んだほうが良いのでしょうか。
筆者は、それはまだ早計だと考えます。
どれだけ子どもたちのスマホ利用年齢が下がり普及が進んだとしても、そのすべての子どもたちがルールを遵守できるわけではありません。上記のようにルールの適用が増加しても、その分だけルールを守れない子どもたちも一定の割合で増えています。
重要なのは保護者が「自分の子どもがスマホを正しく使えるのか判断する」ことです。「近所の友達もみんなスマホを使い始めたし」とか「スマホを持ってないのがうちの子だけだから……」といった、周囲に合わせるようにしてスマホを買い与えることは何よりも危険です。
スマホを買い与える前に子どもとよく相談し、「スマホを持ったらやってはいけないことは?」、「スマホで友達とメッセージをやり取りする時に使ってはいけない言葉は?」など、スマホを持つ前からあらかじめルールを勉強させておくことも大切です。
他にも、モバイル社会研究所の調査で顕著だったルールとして、アプリへの課金やオンラインショッピングの禁止(ネット購入の禁止)などがありました。
例えばiPhone(iOS端末)の場合、基本的に13歳未満の子どもにはApple IDを発行できないため、保護者が所持するアカウントと紐付けされたファミリーアカウントとして作成されるため、必然的に課金などを子供だけでは行うことができないように設定されます。
しかしながら、そういったシステム的な制限に頼るばかりではなく、もし課金が必要な場合はどうすれば良いのか、どうしても買いたいアプリがある場合などは誰に相談すべきなのか、家庭内でルールを作っておくことが重要です。
プライバシー問題やコミュニケーションの問題、さらに課金や犯罪リスクなど、スマホ全盛時代に子どもを持つ家庭の悩みは尽きません。
ましてや小学生のうちから「○○くんはスマホ買ってもらったって!ボクも欲しい!」などと言われてしまえば、家族会議も待ったなしです。
友達も持っているから、などの理由ではなく、常に「うちの子にスマホを持たせても大丈夫だろうか」という視点でスマホ所持の時期を考えてください。そして、持たせて問題がないかどうかの判断は、子どもとの対話や相談が決め手であることを忘れないでください。
子どもであっても1人の人間です。子どもの主張を尊重しながらルールへの意識を高めていくこともまた、保護者の務めであると考えます。
記事執筆:秋吉 健
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