VR HMD「HTC Vive」を試してきた!

スマートフォン(スマホ)がかなり浸透し、次の技術革新はなにかとばかりにウェアラブルやIoTなどのさまざまな製品が出てきていますが、その中でも今年にブレイクしそうなのがバーチャルリアリティー(VR)が楽しめるヘッドマウントディスプレイ(HMD)です。

そんなVR HMDをスマホメーカーでもあるHTCがValve(バルブ)との共同で開発している製品が「HTC Vive(エイチ・ティー・シー・バイブ)」です。海外では2月29日に予約が開始され、4月に発売予定となっています。

今回、日本でこのHTC Viveを実際に装着し、魅力をいち早く体験することができると聞き、先日筆者はHTC NIPPONへと足を運びました。そこで本記事では、HTC Viveを体験してみて受けた印象、加えて、当日聞くことができた日本向けの販売予定などの気になる今後の展開についてレポートしていきます。

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台湾から来日していたHTCのVR担当であるレイモンド氏(右)

その前にはじめにVR HMD、そして、HTC Viveについてそれぞれどういったものであるのかを簡単におさらいしておきます。

VRとはVirtual Reality(バーチャルリアリティー)の略で「仮想現実」のことを意味します。そして、VR HMDとは、頭にゴーグルのように装着することで、コンピューターグラフィックによって編み出された仮想の現実を「いかにもその世界にいるかのように」体感することができる機器となります。

他社製品として注目を浴びているものの例としてはOculus(オキュラス)社が開発するVR HMD「Oculus Rift(オキュラス・リフト)」などがあるほか、国内においては昨年末にサムスン電子が発売した「Gear VR」(ただしこちらは別途対応するスマホが手元に必要)といったあたりが割とよく知られているものといえるでしょう。

そして、そんな中今回、HTC NIPPONにて体験することができたのが、同社が現在開発をすすめるVR HMDのHTC Viveです。

HTC ViveはHTCがアメリカのゲーム制作会社であるValveとともに開発をすすめるVR HMDで、他社製品と比較しても最大の特長といえるのは「実際に動きながら使える」という点になります。

それでは、ここより実際に体験している様子も絡めて紹介していくことにします。今回、体験会場となっていたのはHTC NIPPON本社内の一室(室内)で、記事の一番上にある写真は筆者が実際にHTC Viveを装着した様子です。

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HTC Viveの本体となるHMD

HTC Viveは主にHMD、コントローラー、そして、レーザーユニットの3つから構成されています。HMDはゴーグルのようなデザインで、視界を完全に塞ぐ形で装着します。見た目として結構な大きさに見えるものの、装着性は快適でした。

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ヘッドホンやイヤホンは一般的な製品をそのまま使え、Bluetoothによる無線接続のものも使用可能

また、HTC Vive本体にはイヤホンジャックも搭載され、一般的に販売されているヘッドホンやイヤホンをそのまま使用することが可能です。特にHTC Viveのメインターゲット層のひとつとなるゲームユーザーはこういった音響機器にも強いこだわりを持っていることが多く、そういった人が持っているものをそのまま利用できるようにという考えでの設計になっています。

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HTC Vive本体から頭頂部を通る形で電源や映像、音声入力のケーブルが伸びています

HTC Vive本体への電源、映像および音声の入力は有線ケーブルを用いての接続となります。パソコン(PC)からHTC Vive本体へと先が接続され、ヘッドホンを利用する場合は、さらにHTC Vive本体からヘッドホンへ音声が出力される流れとなります。

動きまわって使う中で接続したケーブルに引っ張られるような感覚はわずかながらあったものの、HTC Vive本体の重さが変に気になることはありませんでした。

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HTC Vive本体やヘッドホンを装着すると本人には周囲の様子がまったくわからなくなります

実際にHTC Vive本体とヘッドホンを装着してみると、周囲の光や音が気になることはほぼありません。装着している本人には、この時点で完全に目の前に広がる3D空間だけがリアルに感じられるといった状態になります。

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HTC Viveを使用する際に設置するレーザーユニット

また、HTC Viveを使用する際に設置が必要なのが赤外線を用いたレーザーユニットで、利用する空間の2角(対角線上)に配置して空間情報を測定します。HMDとコントローラーにはそれぞれセンサーが内蔵されており、HTC Viveを動きながら使う際にはレーザーユニットとセンサー感で情報を遅延なく共有され、それをPC側で高速に処理します。

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今回は1対(2個)で使用しましたが、単体(1個)での使用も可能

このレーザーユニットの設置距離(対応距離)は最大で対角5mまで。また座って使用する際などは単体で使用することも可能です。

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コントローラーはスティック状のもの


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裏面にはトリガーも

操作に用いるコントローラーはスティック状のデザインで、表面には円形のタッチパッド、裏面にはトリガーが配置されています。

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まずはじめに基本的な操作方法の説明を受けます

そして、実際に体験がスタート。後ろのディスプレイに映像が表示されていますが、HTC Viveを装着している筆者にはこれが視界全体に広がる形で見えています。

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前方から泳いできたクジラを眺めます


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め上を通過していく際の動きを見ていても非常にリアルに感じられました

今回はゲームを中心に数種類のコンテンツを体験しましたが、まず驚いたのがグラフィック自体が非常にリアルということ。はじめは海の中に潜っているかのような映像で筆者の周りに魚やくじらが泳いでいる状態でしたが、クジラの尾びれの動きかななども非常にしなやかで違和感を感じません。

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実際にコントローラーを使って操作


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体験中にHTC Vive内で表示されていた映像の例

両手で持ったコントローラーの使い方に関してもコントローラー自体を動かす、上部のタッチパッドを操作する、下部のトリガーを引くといった操作がうまく取り込まれており、非常に直感的に操作が可能です。

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コントローラーを使って「SMAX」と文字を描いてみました


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描いた絵を覗き込むことも可能

続いて、空間中に自由に絵を描いて遊べるといったコンテンツでは、色や使う道具(筆など)を選び、それをコントローラーを大きく動かすことで描くことができます。動き回りながら使えるHTC Viveならではと思ったのは、描いた絵がきちんと空間的に座標を保持しており、違う角度から見ることもできるということ。描いたものを横から覗き込んでみても立体的な凹凸も含めてしっかりと感じることができます。

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ゾンビが襲ってくるシューティングゲームをプレイ


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シューティングゲームをプレイ中の筆者の様子。あまりのリアルさから自然と腰が引けているのがわかります

次はゾンビが襲ってくるシューティングゲームをプレイしてみました。コントローラーを拳銃に見立てて操作します。実際に体験している際も周囲を完全に忘れて楽しむことができましたが、体験終了後に改めてそのリアルさを感じさせられたのが上の写真。

ゲームプレイ中の様子ですが、腰が引けているのがわかります。違和感なく自分を取り囲む空間自体と(現実にはまず遭遇しないであろうという意味で)違和感のあるゾンビの出現により、リアルに戸惑いながらプレイしていたことが感じられます。

約30分ほどで体験は終了。HTC Viveを取り外した後も「VR酔い」と呼ばれる酔いは特に感じませんでした。こちらについては後で確認したところ、HTCとしても最も注力して開発したポイントとして挙げており、酔いの原因となる処理の遅れからくる感覚とのズレ、距離感のズレを重点的に減らすことで、VRを純粋に楽しむためのリアリティを追求しているとのこと。

その分、処理を行なうPC側には高めのスペックが求められますが、あえて厳し目の要件とすることで長期的に使える製品として設計されています。

また今回、体験したゲーム以外にも医療分野(CTスキャンした結果を3Dでモデリングし、VRを用いて中を直接確認する)で一部実際に利用を始めている部分も。また自動車メーカーのAudi(アウディ)と協力して、車のカスタマイズシミュレーション(ボディカラーやインテリアなどを3Dでモデリングし、VRで確認できる)ができる仕組みも考えているとのこと。

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当日体験後にサプライズで登場した玉野氏(右)

当日は最後にHTC NIPPON 代表取締役社長の玉野 浩氏もサプライズで登場。

HTC Viveに関しては海外における製品版の予約開始日(2016年2月29日)や出荷予定(2016年4月)がすでに発表済み。ということでズバリ、日本での発売予定を聞いてみたところ、このHTC Viveに関しては予約開始日や出荷日、製品名などはグローバルと完全に同じで考えている(つまり今月末から予約の受付が始まる!)との情報が。

はじめは直販サイト「HTC e-shop」での販売でスタートし、以降販売元はより広げていく構想であり、グローバル向け製品と日本国内向け製品での仕様や外観の違いは日本向けの技適マークがあるかないか、といった程度の差になるそう。

なお、ここまで紹介した写真では実際に体験した際に見える映像がイマイチわからないといった人もいるかと思いますが、これについても「実際に体験してもらわないと魅力がわからない部分がある」と課題認識がされており、今後日本国内も含め、ゲームメーカーなどと協業してイベントなどを積極的に実施していく予定とのこと。4月の発売前後に合わせて何か企画する構想があるそうです。

ちなみに最も気になる価格は、スペイン・バルセロナにて開催を数日後に控える携帯電話関連で世界最大規模の見本市である「Mobile World Congress 2016(MWC 2016)」にて発表するとのこと。とはいえ、あまりに高い価格設定では売れないといったことももちろん意識しており、他社製品などと比較しても無理のない内容にはしているとのこと。

過去に他社製のVR HMDも使用したことがある筆者ですが、今回体験終了後にかけてもらった「おかえりなさい」の一言がここまで自然に受け取れたのはこのHTC Viveならではといったところ。それくらい、動きながらリアルに楽しめること、そして何よりすごい没入感は魅力的といえるでしょう。

ゲームユーザーのみならず、多くの人にとって非常に興味深い製品になるであろうこのHTC Vive。価格の発表も含め、今後の動向もぜひチェックしたいところです。

記事執筆:そうすけ


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