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海岸になびく東ティモールの国旗!携帯電話事業者3社のプリペイドSIMカードを試す |
21世紀初の独立国家「東ティモール民主共和国」(以下、東ティモール)。復興から発展をめざして歩み出しており、投資先として注目する外資企業も増加傾向にある。今回はそんな東ティモールのプリペイドSIMカード事情を紹介する。
東ティモールにおける携帯電話事業者はTimor TelecomおよびTelekomunikasi Indonesia International (TL)、Viettel Timor Lesteの3社である。Telekomunikasi Indonesia International (TL)はブランド名をTELKOMCEL、Viettel Timor Lesteはブランド名をTelemorとしており、両社は一般的にブランド名で知られることから、以下ではブランド名で表記する。
今回、筆者は東ティモールに実際に渡航し、これらの3社のプリペイドSIMカードを試してきた。日本ではあまり知られない同国だが、発展をめざして携帯電話も活用されつつあり、そんな実情をレポートしたい。
【トラブルがあったTimor Telecom】
プリペイドSIMカード代は1米ドル(約100円)で、ボーナスとして5分間の音声通話、10件のSMS、SNS用の10MBのデータ通信が含まれる。ボーナスの音声通話とSMSはTimor Telecom契約の回線宛に限定し、開通から7日間のみ有効である。また、SNS用の10MBのデータ通信はFacebook、Messenger、WhatsAppを利用可能だ。データ通信を利用する場合はデータパッケージの購入を推奨する。これは3社に共通して言えるが、データパッケージの購入前にはプリペイドSIMカードに少なくともデータパッケージの金額分は残高を維持しておく必要があり、残高が不足する場合は事前にチャージする必要がある。データパッケージの購入はSMS、USSDコード、電話、販売店の店頭で受け付ける。
Timor TelecomのプリペイドSIMカード購入時に身分証明書と滞在場所の提示が求められた。身分証明書はパスポート、滞在場所はホテルなどの宿泊施設で問題ない。SIMカードのサイズはminiSIM(2FF)サイズとmicroSIM(3FF)サイズのデュアルカットとなる。
筆者の訪問時はTimor Telecomのシステムに障害が発生してプリペイドSIMカードの新規開通が不可となり、プリペイドSIMカードを販売してくれなかった。販売店に通って4日目にようやくトラブルが解消し、無事にプリペイドSIMカードを購入できた。
【旅行者向けSIMを提供するTELKOMCEL】
一般的なプリペイドSIMカードのSIM Card Regulerは1米ドルで販売し、ボーナスとして5分間の音声通話、10件のSMS、1MBのデータ通信、1米ドル分の残高が含まれる。ボーナスの音声通話とSMSはTELKOMCEL契約の回線宛に限定し、有効期間は開通から7日間となる。SIM Card Regulerより安価なSIM Card Furakも用意しており、50東ティモール・センタボで販売する。ボーナスは有効期間が開通から7日間の10MBのデータ通信のみであるが、開通から3ヶ月間は1ヶ月あたり1米ドルの残高をエクストラ・ボーナスとして付与し、TELKOMCEL契約の回線宛に音声通話やSMSで利用できる。
なお、東ティモールの公用通貨は米ドルであるが、1米ドル未満は独自の東ティモール・センタボが使われる。1米ドル=100東ティモール・センタボである。
ボーナスのデータ通信容量が十分でなければ、データパッケージを購入するとよい。SMS、USSDコード、My TELKOMCELを通じたオンライン、販売店の店頭でデータパッケージの購入を受け付ける。TELKOMCELは旅行者向けのプリペイドSIMカードとしてSIM Card Touristも提供しており、プランは表1の通りである。
プラン | パッケージ代 | 初期残高 | データ通信 | 音声通話/SMS※1 |
1 | 5米ドル | 2米ドル | 320MB 3日間有効 | 無制限 1日間有効 |
2 | 10米ドル | 3米ドル | 760MB 7日間有効 | 無制限 1日間有効 |
3 | 30米ドル | 5米ドル | 2.5GB 30日間有効 | 無制限 2日間有効 |
SIM Card Touristはパッケージ代にプリペイドSIMカード代が含まれており、あらかじめ十分に利用できるだけのデータ通信容量も含まれる。チャージやデータパッケージを購入する手間が省けるため、プリペイドSIMカードの購入に慣れない旅行者でも手軽に利用できるだろう。プリペイドSIMカードの購入時に身分証明書などの提示は求められず、SIMカードのサイズはminiSIMサイズとmicroSIMサイズのデュアルカットである。
【最も買いやすいTelemor】
プリペイドSIMカード代は1米ドルであるが、電話番号の末尾3桁がゾロ目の良番号は5米ドルとなる。プリペイドSIMカードには50東ティモール・センタボ分の初期残高、1MBのデータ通信、さらにプロモーションで1.5米ドル分の残高も含まれていた。データ通信を多用する場合は、やはりデータパッケージの購入を推奨する。Telemorのデータパッケージは種類が多く、それだけ滞在日数や利用用途に応じて柔軟に選択できる。データパッケージの購入はSMS、USSDコード、Telemor App、販売店の店頭で受け付ける。このTelemor AppはAndroid向けに提供するアプリで、残高確認などの多様な機能を備え、Telemorの公式ウェブサイトやGoogle Playからインストール可能だ。
プリペイドSIMカードの購入時に身分証明書などの提示は必要なかった。SIMカードのサイズはminiSIMサイズのみと、miniSIMサイズとmicroSIMサイズのデュアルカットが用意されている。販売店によってはminiSIMサイズのみ取り扱う場合や、デュアルカットは良番号のみとする場合もある。
筆者は東ティモールに到着後、TelenorのプリペイドSIMカードを最初に購入した。首都・ディリの中心部では営業時間が短い販売店も多いが、Telemorの販売店は営業時間が長く、ディリ中心部に到着した際はTelemorのみが営業していた。ディリ中心部に限れば、TelemorはTELKOMCELより店舗数が多くかつ休業日が少なく、またTimor Telecomより営業時間が長いことが多く、最もプリペイドSIMカードを買いやすい印象を受けた。
【プロモーションを活用】
東ティモールの携帯電話事業者は通常のデータパッケージ以外にプロモーションを実施して割安かつ大容量のデータ通信を提供することがあり、筆者の訪問時はTELKOMCELとTelemorがプロモーションを実施していた。Telemorは初日のデータ通信容量が無制限で、翌日からデータパッケージのデータ通信容量をカウントするプロモーションを提供しており、筆者はこのプロモーションを適用してみた。プロモーションの情報は公式ウェブサイトに掲載しない場合もあり、各社のFacebookページや街中の広告で宣伝することが多い。筆者は街中で発見したプロモーションの広告を撮影し、店頭でそれを見せて適用した。
【周波数とAPN】
各社とも3GとしてW-CDMA方式、2GとしてGSM方式を採用する。W-CDMA方式は2.1GHz帯(Band I)および900MHz帯(Band VIII)、850MHz帯(Band V)、GSM方式は1.8GHz帯および900MHz帯のいずれかを使用し、各社の通信方式と周波数およびAPN(アクセスポイント)は表2の通りである。携帯電話事業者 | 3G(W-CDMA方式) | 2G(GSM方式) | APN |
Timor Telecom | 2.1GHz帯、850MHz帯 | 900MHz帯 | internet |
TELKOMCEL | 2.1GHz帯、850MHz帯 | 900MHz帯 | internet |
Telemor | 2.1GHz帯、900MHz帯 | 1.8GHz帯、900MHz帯 | t-internet |
Timor Telecomの3Gはディリ中心部であれば2.1GHz帯をメインとして整備するが、ディリ中心部以外では850MHz帯のみで整備するエリアも少なくない。TELKOMCELの3Gは東ティモール全土において850MHz帯をメインで整備し、2.1GHz帯はディリでさえ限定的である。Telemorの3Gはディリであれば2.1GHz帯のエリアは十分に広いが、ディリ以外では900MHz帯のみのエリアも存在する。2Gではデータ通信を実用的に使うことが厳しく、3Gを使えるよう端末を準備しておくことが望ましい。
Timor TelecomとTELKOMCELは案内されたAPN以外でもデータ通信を利用できたが、案内通りに設定する方が無難だろう。また、各社ともテザリング機能も利用できた。
【SIM購入はTimor Plaza周辺がオススメ】
東ティモールへの入国はほとんどの場合、同国唯一の国際空港であるプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港(DIL)から入国することになるだろう。プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港にはTimor TelecomとTELKOMCELの販売店があり、プリペイドSIMカードを取り扱っているが、筆者の到着時はTimor Telecomにシステム障害が発生し、TELKOMCELは営業しておらず、プリペイドSIMカードを購入できなかった。そこで、筆者は東ティモール最大のショッピングモールであるTimor Plaza周辺で購入することを推奨したい。Timor Plazaはプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港から近く、ディリ中心部へ向かう途中に位置する。交通状況で多少の前後はあるが、プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港からタクシーで約5分、時間に余裕があれば徒歩でも行ける。
Timor PlazaにはTimor TelecomとTELKOMCELの販売店が入居し、Timor Plazaの東隣に位置するJITA PLAZAにはTelemorの販売店が入居する。ディリ中心部には15時に営業を終了するTimor Telecomの販売店や日曜日は営業しないTELKOMCELの販売店もあるが、Timor Plaza内の販売店は日曜日も含めて営業時間は長く、付近にはTelemorの販売店もあり、筆者がTimor Telecomで経験したようなトラブルに遭遇しても他の携帯電話事業者の販売店に駆け込める。
【東ティモールにおけるプリペイドSIMの注意点】
東ティモールでは路上でプリペイドSIMカードを売り歩く人々も少なくないが、路上で売り歩く人々は3~5米ドルと上乗せして販売しており、サポート面は期待できない。そのため、もしTimor Telecomのようにトラブルが発生しても、その場での解決は難しいだろう。携帯電話事業者の販売店ではチャージからデータパッケージの選択や購入までサポートを受けられるうえに、プリペイドSIMカードの購入時にデータパッケージも注文すれば一気に処理してくれるため、確実な手続きを期待できて手間も省ける販売店での購入を推奨する。また、端末にTimor TelecomのプリペイドSIMカードを挿入して電源を入れると、4桁のPINコードの入力が求められた。PINコードはプリペイドSIMカードの台紙に記載されており、その数字を入力すれば問題ない。残高確認のUSSDコードなども台紙に記載しているため、台紙は保管しておけば役立つこともある。なお、残高確認のUSSDコードはTimor Telecomが*#102#、TELKOMCELが*122#、Telemorが*121#である。
記事執筆:田村和輝
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