NTTドコモの東日本のネットワーク拠点となるネットワークオペレーションセンターを見学! |
水や電気とともに、今や私たちの生活に欠かせない"ライフライン"のひとつといって過言はないスマートフォン(スマホ)を含む「携帯電話」。この携帯電話を快適に使用できるように、NTTドコモなどの移動通信体事業者(MNO)では日頃からこの携帯電話のネットワーク管理・制御を行なっています。
そんなネットワーク管理のキー拠点として、NTTドコモが同社の品川ビルに構えるのが「ネットワークオペレーションセンター」です。NTTドコモでは2016年9月5日(月)にこのオペレーションセンターのメディア向け見学会を開催。筆者も実際に参加してきましたので、オペレーションルームや地下に設置された自家発電システムなど、普段はまず踏み入ることができないエリアも見せてもらうことができたので、今回はそれらと見学で紹介された災害対策について紹介していきます。
NTTドコモでは現在、北海道~東海エリア(東日本)までを管轄するネットワークオペレーションセンター、そして、関西~沖縄エリア(西日本)までを管轄する「西日本オペレーションセンター」の2拠点にて、日々のネットワーク管理・制御から災害時などの復旧支援までを担っています。
今回、訪問したネットワークオペレーションセンター(NTTドコモ品川ビル)は2003年3月に竣工し、同年8月よりネットワークオペレーションセンターとしての業務をスタート。
建物自体はビル風やテレビ電波障害を緩和するためのスーパーボイドと呼ばれる横穴、アンテナで周囲の景観を損なわないためのレドーム(電波を透過する布地)、372機の耐震ダンパー、防潮堤といった設備・技術を集約。震度7の大規模地震にも耐え、かつ水源の氾濫にも影響を受けず業務を行なうことができる設計になっています。
この建物内に設置されたオペレーションセンターの主な業務はネットワークとそれに関わる設備の監視・障害の解消・技術支援。それぞれ異なる分野を専門とする4つの担当の連携により、24時間365日体制で業務に当たっています
トラブル発生時には各チームで原因を確認の上、担当者の手元にある専用端末から遠隔で現場装置にアクセス。リセット・再起動や代替機への切り替えといった方法でトラブル解消を試みます。
また装置の破損・伝送路の故障といったハード面での対処が必要となるケースでは、現地保守部門と連携して復旧に。ソフト面で対処可能なものから設備の交換が必要となるハード面での故障まで、1日に発生する対応必要件数は200件前後にも及ぶとのこと。
その他、ユーザーから直接問い合わせや申告のあった不具合のうち、ネットワークに起因すると考えられるについても、ネットワークオペレーションセンターにて原因の究明・対処・回答を行なっています。
今回は実際に業務が行われているオペレーションルーム内にも入ることができました。ここには対面する両壁に60インチモニターがずらりと並びます。このモニターには管轄する北海道~東海エリアまでの基地局情報・交換局情報などがすべてリアルタイムで表示されています。
各基地局の状態はリスト上に羅列され、それぞれの状態はひと目で分かるよう、状態別に色分けが施されます。例えば青はトラフィック増加により障害が発生している輻輳発生中を、黄はネットワーク規制中を示す表示などとなっています。
またずらりと並ぶモニター群の中央には日本公共放送(NHK)、そして、ウェザーニュースによる日本地図と気象情報なども表示。基地局の状況と併せ、自然災害によって発生する各地での急激なトラフィック増もリアルタイムで監視されています。
自然災害以外にトラフィックが急激に増える要因のひとつとして挙げられるのが、各エリアで開催される花火大会やフェスなどのイベント。NTTドコモではこのようなイベントも全国規模で把握しており、当日に予想されるトラフィックへの事前対策、当日に実際に発生したトラフィックの検証、検証結果を元にした翌年度への準備といったことを定期的に実施しています。
なお、イベントの規模によっては、基地局の状態を示す画面が青色(ネットワークが混雑して障害が発生している輻輳状態を示す色)に染まるというケースもある模様。とはいえ、毎年の地道な基地局強化などの対策も実り、最近ではその傾向もだいぶ和らいできているそうです。
続いて、NTTドコモが取り組む災害対策について解説してもらったので紹介していきます。同社では日本電信電話(NTT)より受け継いだ災害対策3原則を元に災害対策を逐次検討・実施。
まずは震度7レベルの強い地震にも耐えられる設備を用意することでシステムの信頼性を高め、災害発生時でも迅速に復旧活動に移行できる状態を確保しています。
またこれをベースに緊急通報など優先度の高い接続を確保。ここまでを確実に押さえた後に、移動基地局車などを利用することで通信サービス自体の早期復旧に取り組む流れとなっています。
こういった方針の元に行われてきた対策の効果として東日本大震災を振り返ると、被災地の無線基地局は鉄塔でしっかりと組まれたものであれば、津波に晒されてもしっかりと形を維持しているものもあったとのこと。こういった点で、ハード面での対策については地道な取り組みの効果が感じられたといいます。
ただし一方で、東北地方に設置された無線基地局1万1000局ほどのうち、4900局ほどは震災の被害で一次サービスを停止する状況に。原因を調査する中で85%ほどが停電によるバッテリー枯渇、ついで12~13%ほどが地震による伝送路遮断と設備面での課題も見える結果に。
このような経験から以降は停電対策や伝送路対策をよりしっかり考えるという教訓を得て取り組んできたそうです。
そのひとつと言えるのが基地局が災害により機能できなくなった際にそのエリアを補う形で広範囲をサポートできる非常時専用の大ゾーン基地局設置です。
また都道府県庁や市区町村役場など、復旧にあたり重要となる拠点を中心として、基地局の無停電化、バッテリーの24時間化も実施。バッテリーに関しては、アクセスの難しい山間部などについては3日以上、最も長いところでは約1週間の間を予備電源で稼働できる体制も構築されています。
これらに加え、重要設備を東日本(ネットワークオペレーションセンター)から西日本や北日本に分散。そして基幹伝送路と呼ばれる、ネットワークの幹となる部分を従来の2ルートから3ルートへとさらに多重化。万が一伝送路の遮断が発生してしまった場合でも、それによるネットワーク障害の被害を最小限に抑え、復旧活動を進めることができる体制になっています。
こういった対策の成果が直近で確認できたとするのが熊本地震のときだったとのこと。
NTTドコモの熊本支店ビル建屋にもヒビが入るなど大きな被害を及ぼしたこの地震では、滑落した阿蘇大橋の下にもNTTドコモの基幹伝送路が配備されていました。しかしこれは前述の伝送路多重化により対応。
またその他の対策も功を奏し、地震による被害が最大82箇所の基地局に及んだものの、地震発生(4月14日)から4日後の4月18日には全避難所でネットワークを復旧。またさらにその2日後となる4月20日までには、地震前のサービスエリアで概ねネットワークの復旧を確認できたとのこと。
またオペレーションセンター(熊本地震時は関西オペレーションセンターで対応)では地震発生後の輻輳を回避すべく、主に県外からの着信を抑え、熊本エリア内の通信を優先して確保。熊本エリア内では安否確認を含め通常時の36倍もの通話によるトラフィックを観測したものの、設備強化の効果などもあり、エリア内では特に規制をかけずとも対応しきれたそうです。
津波による設備損壊がなかったことも要因のひとつとなりますが、東日本大震災の際には東北エリアの45%の基地局がサービスを停止したことに対し、熊本地震では熊本エリアのわずか4%のサービス停止に留めることができた点でも、積み重ねてきた対策の効果が確認できています。
またこういった復旧作業と併せて、避難所の支援も。一度に最大18台までの同時充電が可能な充電サービスや無料のWi-Fiサービスを提供。またグループ会社であるらでぃっしゅぼーやでは野菜ジュースやサプリメント、オークローンマーケティングでは寝具の配備といったネットワークとは異なる面でも被災者支援を実施しています。
なお、NTTドコモでは現在も各都道府県や市区町村が実施する防災訓練に参加する形で、年間400件ほどの訓練も実施。設備面以外でも、非常時に迅速に復旧作業に当たれるように日々努めているということです。
そして、今回最後に見学したのがネットワークオペレーションセンターの地下に配置された自家発電システムです。NTTドコモ品川ビルで使用する電力は電力会社とこの自家発電システムの2箇所から供給されています。
自家発電システムに関してはひとつのエネルギー源(ガスや軽油)から2つ以上のエネルギー(ここでは電気と蒸気)を取り出すコージェネレーションシステムとなっています。
このシステムは大きくエンジンとボイラーの2つの設備から構成されており、ガスを燃焼させエンジンを動かすことで電気を、またその排ガスを使ってボイラーで蒸気を発生させるしくみになっています。
エンジンの出力は4650kWとなっており、これは一般家庭1万1100世帯分の使用電力にも相当するとのこと。なお全国で日々消費される電力のうち、全体の1%ほどをNTTドコモを含むNTTグループで使用しているとのこと。改めて、グループとしての規模、そして日常の業務で必要となる電力規模の大きさがわかりますね。
この地下エリアには5機のエンジンが設置されており、通常時は1機、非常時は最大5機の同時起動体制になるとのこと。エンジンに供給される燃料は地中に埋設された計3機のタンクに内蔵されており、収納できる総容量は19万リットルほど。この量で約20~30時間のエンジンの連続運転が可能です。
土地柄これ以上のタンク容量を確保することは難しいとのことですが、その代わりに追加の燃料を供給する体制は万全。仮に20~30時間の運転を確保できれば、ほぼ間違いなく、燃料切れを起こす前に給油が可能だそうです。
今回ネットワークオペレーションセンターを見学する中で、日頃何気なく使っている携帯電話が、実際にはユーザーの見えないところでの様々な取り組みによって実現されているものということが強く感じられました。
NTTドコモ品川ビルはJR品川駅の直ぐ側の立地となっており、遠くからでも確認が可能。一見周囲に立つ他のビルと大きく違いは感じられないかもしれませんが、そのように自然に、ですがしっかりと私たちの生活を守っている存在となっています。
記事執筆:そうすけ
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